39 / 40
離縁の準備
番外編 思い (アルダム視点)
しおりを挟む
「……危なかったな」
そんな言葉が私、アルダムの口から漏れたのは一人になった自室の中だった。
目を閉じればすぐにあの時のライラの姿を思い出すことができる。
──私、身体を求められても断れないくらいにはアルダムに感謝してるんだけど?
真っ赤に上気した顔。
それでライラに告げられた言葉。
それは今や、私の頭に鮮明にやきついていた。
あのとき、マリアがいなければ自分がどんな行動をとったか、私にも判断ができなかった。
「ただの感謝の言葉だと、わかっているのにな」
そう言い聞かせながら、私は思わずにはいられない。
だとしても、あれはずるくないか、と。
こちらがどれだけ報われない片思いを続けてきたか、あの才女は知らないだろう。
あり得ない位聡明なはずの彼女はなぜか、人の好意に疎いのだから。
それでも、と私は思わずにはいられない。
あれはもう少しで勘違いするところだったと。
ただの感謝だと知っている今なら、わかる。
それは愚かな願望で、勘違いでしかない。
とはいえ、そんな願望による勘違いをしてしまうことも許して欲しかった。
「何年も報われないと思っていた思いがようやく実りそうなんだぞ……!」
ライラは気づいてもいない。
私に離縁について相談してきた時、私がどれだけ感謝していかを。
なぜなら、私はライラに救われたあのときから、ずっとライラに感謝をし、好意を抱いてきたのだから。
目を閉じればすぐに私は思い出せる。
ガズリアから必死に逃げながら、獣の森と戦い続けてきた日を。
今はガズリアは失職した無能で残虐な当主だったと言われている。
……そうでないことを、ずっと戦ってきた私が一番理解していた。
何度も殺されそうな思いをしながら、必死に私はあらがってきた。
それでも、限界はありあのままであれば私は死んでいただろう。
ガズリアは私の何倍も手練れで、何より力を持っていた。
その状況を変えてくれた人間こそ、ライラだった。
「……貴女は知らないでしょうね」
そう言いながら、私の頭によぎるのは豊穣の女神と聞いた時に、ライラが浮かべた照れた表情。
「──私にとって、貴女は本当の女神だということを」
実のところ、私はいつライラに好意を寄せていたのか知らないのだ。
なぜなら、私は気付いた頃にはライラのことをどうしようもなく愛してしまっていたのだから。
◇◇◇
私の他作品「パーティーから追放されたその治癒師、実は最強につき」、本日26時からアニメ放送になります。
よろしければ拝見して頂けると幸いです!
そんな言葉が私、アルダムの口から漏れたのは一人になった自室の中だった。
目を閉じればすぐにあの時のライラの姿を思い出すことができる。
──私、身体を求められても断れないくらいにはアルダムに感謝してるんだけど?
真っ赤に上気した顔。
それでライラに告げられた言葉。
それは今や、私の頭に鮮明にやきついていた。
あのとき、マリアがいなければ自分がどんな行動をとったか、私にも判断ができなかった。
「ただの感謝の言葉だと、わかっているのにな」
そう言い聞かせながら、私は思わずにはいられない。
だとしても、あれはずるくないか、と。
こちらがどれだけ報われない片思いを続けてきたか、あの才女は知らないだろう。
あり得ない位聡明なはずの彼女はなぜか、人の好意に疎いのだから。
それでも、と私は思わずにはいられない。
あれはもう少しで勘違いするところだったと。
ただの感謝だと知っている今なら、わかる。
それは愚かな願望で、勘違いでしかない。
とはいえ、そんな願望による勘違いをしてしまうことも許して欲しかった。
「何年も報われないと思っていた思いがようやく実りそうなんだぞ……!」
ライラは気づいてもいない。
私に離縁について相談してきた時、私がどれだけ感謝していかを。
なぜなら、私はライラに救われたあのときから、ずっとライラに感謝をし、好意を抱いてきたのだから。
目を閉じればすぐに私は思い出せる。
ガズリアから必死に逃げながら、獣の森と戦い続けてきた日を。
今はガズリアは失職した無能で残虐な当主だったと言われている。
……そうでないことを、ずっと戦ってきた私が一番理解していた。
何度も殺されそうな思いをしながら、必死に私はあらがってきた。
それでも、限界はありあのままであれば私は死んでいただろう。
ガズリアは私の何倍も手練れで、何より力を持っていた。
その状況を変えてくれた人間こそ、ライラだった。
「……貴女は知らないでしょうね」
そう言いながら、私の頭によぎるのは豊穣の女神と聞いた時に、ライラが浮かべた照れた表情。
「──私にとって、貴女は本当の女神だということを」
実のところ、私はいつライラに好意を寄せていたのか知らないのだ。
なぜなら、私は気付いた頃にはライラのことをどうしようもなく愛してしまっていたのだから。
◇◇◇
私の他作品「パーティーから追放されたその治癒師、実は最強につき」、本日26時からアニメ放送になります。
よろしければ拝見して頂けると幸いです!
194
お気に入りに追加
1,053
あなたにおすすめの小説

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……


愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから
咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。
そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。
しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる