37 / 40
離縁の準備
最終話
しおりを挟む
部屋から出てしばらく。
私は部屋の前から動けなかった。
「……ライラ様、どういうことですの」
そんな私にたいし、呆れたようにそう告げるマリアの声に私は無言で首を振る。
「い、一生分がんばったのよ!」
「ライラ様が諜報員に向かないことだけはよく理解できました……」
そんな私の様子に、マリアが深々とため息をもらす。
それに対し、私はただふるえることしかできない。
……わかっているのだ。
自分が今、どうしようもなくチキンだった事に関しては。
「いえ、まずは謝罪ですわね……」
そんな私に、マリアが声音を変えた。
「私は今回、アルダムが後ろ盾のするに当たって一つ条件を付けました。今回の件が契約結婚であるという条件を」
……申し訳なさそうな響きがそこに入ったのは、その時だった。
「もしかして、余計なまねだったでしょうか?」
「なにも聞かないで頂戴……」
私のかすれた返答に、罪悪感と呆れを浮かべるという器用なまねをマリアは行ってみせる。
……そこ表情がなおさら、私の罪悪感を刺激する。
「それにしても、ライラ様はあのフードの殿方に気持ちを寄せていたのではないのですか?」
その言葉に、私は無言で口を閉じる。
私もきちんと理解していた。
……そのマリアの言葉をうやむやにしようとしたことが今回の事態を引き起こした理由だと。
確かに私はあの人に感謝をしている。
いつか恩返しをしたい、そうとも思っている。
しかし、別にその人に思いを寄せているなどのことはなかった。
なぜなら、私は別の人間に思いを寄せているのだから。
「いやでも、あの反応はなにも思っていないという訳ではないのでしょう……?」
いつものようにからかっている訳ではないと思いながら、私は必死に黙秘を続ける。
それが良くないと言うのは理解している。
……それでも恥ずかしすぎだろう。
あのフードの人の話を聞いて照れていたのは、ただその人の話し方が思い人ににているからだけ。
ないと知りながら、思い人に助けて貰ったのかもしれない、なんて妄想をしていただけだと言うのは。
「か、勘違いじゃない……?」
「そんな下手に隠しながらだまそうとするのやめてほしいのですけど……」
その言葉に私は必死にマリアから目をそらす。
……どうにか、話を早く逸らさないと、そう思いながら。
そうしてわちゃわちゃと話を続ける私達に、初夜式でも暗い雰囲気はもうなかった……。
私は部屋の前から動けなかった。
「……ライラ様、どういうことですの」
そんな私にたいし、呆れたようにそう告げるマリアの声に私は無言で首を振る。
「い、一生分がんばったのよ!」
「ライラ様が諜報員に向かないことだけはよく理解できました……」
そんな私の様子に、マリアが深々とため息をもらす。
それに対し、私はただふるえることしかできない。
……わかっているのだ。
自分が今、どうしようもなくチキンだった事に関しては。
「いえ、まずは謝罪ですわね……」
そんな私に、マリアが声音を変えた。
「私は今回、アルダムが後ろ盾のするに当たって一つ条件を付けました。今回の件が契約結婚であるという条件を」
……申し訳なさそうな響きがそこに入ったのは、その時だった。
「もしかして、余計なまねだったでしょうか?」
「なにも聞かないで頂戴……」
私のかすれた返答に、罪悪感と呆れを浮かべるという器用なまねをマリアは行ってみせる。
……そこ表情がなおさら、私の罪悪感を刺激する。
「それにしても、ライラ様はあのフードの殿方に気持ちを寄せていたのではないのですか?」
その言葉に、私は無言で口を閉じる。
私もきちんと理解していた。
……そのマリアの言葉をうやむやにしようとしたことが今回の事態を引き起こした理由だと。
確かに私はあの人に感謝をしている。
いつか恩返しをしたい、そうとも思っている。
しかし、別にその人に思いを寄せているなどのことはなかった。
なぜなら、私は別の人間に思いを寄せているのだから。
「いやでも、あの反応はなにも思っていないという訳ではないのでしょう……?」
いつものようにからかっている訳ではないと思いながら、私は必死に黙秘を続ける。
それが良くないと言うのは理解している。
……それでも恥ずかしすぎだろう。
あのフードの人の話を聞いて照れていたのは、ただその人の話し方が思い人ににているからだけ。
ないと知りながら、思い人に助けて貰ったのかもしれない、なんて妄想をしていただけだと言うのは。
「か、勘違いじゃない……?」
「そんな下手に隠しながらだまそうとするのやめてほしいのですけど……」
その言葉に私は必死にマリアから目をそらす。
……どうにか、話を早く逸らさないと、そう思いながら。
そうしてわちゃわちゃと話を続ける私達に、初夜式でも暗い雰囲気はもうなかった……。
229
お気に入りに追加
1,053
あなたにおすすめの小説

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……


愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから
咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。
そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。
しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる