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離縁の準備
第三十四話
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「……え?」
私の口から呆然とした声が漏れる。
自分でもわかる間抜けな声が。
幸いにもその声を出した意図を勘違いしてくれたのか、申し訳なさそうにマリアが口を開く。
「実はスリラリアの後ろ盾になるにはもう時間が足りておらず……」
「後ろ盾の口実のために、建前上ライラ嬢を私の妻に迎えるしかなかったのです」
マリアに続いて申し訳なさそうに補足するアルダム。
彼ら二人の説明によると、この結婚はスリラリアへの支援を納得させるだだけの契約結婚であるらしい。
……その言葉を聞きながら、私は内心羞恥にふるえざるを得なかった。
なにを勘違いしているのだと。
よく考えれば、告白する前に安心してほしい、など言うわけが無いのだ。
なにを考えれば、そんな勘違いができるのか。
あまりにも早とちりがすぎはしないか。
そんな考えに、私の頭を羞恥がよぎる。
「改めて謝罪を……。責任を与えて貰っていたのに、このような方法でしか解決できなかったのは私の能力不足です」
「いえ、マリア殿。謝罪するなら私の方です。ライラ嬢に信頼を頂いていたのに、この方法でしか解決……。ライラ嬢?」
「っ!」
マリアとアルダムからの心配そうな視線。
私が正気をとりもどしたのはそれに気付いた時だった。
「そ、そんな謝らないで! 私は怒ってはないわ!」
「ですが……」
「ですがもなにも、こんなに手回しをしてくれて怒れる訳が無いじゃない! 後、マリアも! 何度も何度も言ってるでしょう! 私は助けて貰ったし、無事に帰ってきてくれた貴女を誇りに思ってるって!」
「でも……。明らかにライラ様がおかしいので」
いつものからかう時とは違う、本気の心配。
それに私は思わず押し黙る。
……私も自覚があったが故に。
「やはり、私との結婚は負担だったでしょうか?」
不安げにそう告げるアルダム。
私の心に、ある覚悟が浮かんできたのはその時だった。
それはいつもの私なら考えもしなかっただろう選択し。
けれど今、少しだけ私は大胆になっていた。
「そうね、少し困ってるかも」
「……っ」
私の言葉に、アルダムの顔がゆがむ。
必死に気持ちを押し殺すような、そんな表情が。
そんなアルダムへと、私は真っ赤な顔で口を開いた。
「結婚する覚悟、私決めてたんだけどな。──私、身体を求められても断れないくらいにはアルダムに感謝してるけど?」
一世一代初めての誘惑。
マリアの足下どころか、爪にさえ届かないだろうクオリティーの口説き文句でしかない。
なのに次の瞬間、アルダムの顔は真っ赤に染まった。
◇◇◇
次回の更新は日曜日になります!
私の口から呆然とした声が漏れる。
自分でもわかる間抜けな声が。
幸いにもその声を出した意図を勘違いしてくれたのか、申し訳なさそうにマリアが口を開く。
「実はスリラリアの後ろ盾になるにはもう時間が足りておらず……」
「後ろ盾の口実のために、建前上ライラ嬢を私の妻に迎えるしかなかったのです」
マリアに続いて申し訳なさそうに補足するアルダム。
彼ら二人の説明によると、この結婚はスリラリアへの支援を納得させるだだけの契約結婚であるらしい。
……その言葉を聞きながら、私は内心羞恥にふるえざるを得なかった。
なにを勘違いしているのだと。
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なにを考えれば、そんな勘違いができるのか。
あまりにも早とちりがすぎはしないか。
そんな考えに、私の頭を羞恥がよぎる。
「改めて謝罪を……。責任を与えて貰っていたのに、このような方法でしか解決できなかったのは私の能力不足です」
「いえ、マリア殿。謝罪するなら私の方です。ライラ嬢に信頼を頂いていたのに、この方法でしか解決……。ライラ嬢?」
「っ!」
マリアとアルダムからの心配そうな視線。
私が正気をとりもどしたのはそれに気付いた時だった。
「そ、そんな謝らないで! 私は怒ってはないわ!」
「ですが……」
「ですがもなにも、こんなに手回しをしてくれて怒れる訳が無いじゃない! 後、マリアも! 何度も何度も言ってるでしょう! 私は助けて貰ったし、無事に帰ってきてくれた貴女を誇りに思ってるって!」
「でも……。明らかにライラ様がおかしいので」
いつものからかう時とは違う、本気の心配。
それに私は思わず押し黙る。
……私も自覚があったが故に。
「やはり、私との結婚は負担だったでしょうか?」
不安げにそう告げるアルダム。
私の心に、ある覚悟が浮かんできたのはその時だった。
それはいつもの私なら考えもしなかっただろう選択し。
けれど今、少しだけ私は大胆になっていた。
「そうね、少し困ってるかも」
「……っ」
私の言葉に、アルダムの顔がゆがむ。
必死に気持ちを押し殺すような、そんな表情が。
そんなアルダムへと、私は真っ赤な顔で口を開いた。
「結婚する覚悟、私決めてたんだけどな。──私、身体を求められても断れないくらいにはアルダムに感謝してるけど?」
一世一代初めての誘惑。
マリアの足下どころか、爪にさえ届かないだろうクオリティーの口説き文句でしかない。
なのに次の瞬間、アルダムの顔は真っ赤に染まった。
◇◇◇
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