33 / 40
離縁の準備
第三十二話
しおりを挟む
離縁宣言の後。
それは驚くほどにうまく事が運んでいた。
国王陛下と王妃殿下の署名が入った書類によって、私とマキシムの離縁はすぐに決まった。
また、スリラリアが私の領地になることも。
驚いたことにスリラリアとつきあいのあった貴族が離れていくことも無かったのだ。
……それどころ、増えたほどというのは私もさすがに驚くしかなかった。
何せ、私は初めての女領主だ。
本来なら、私を任命した国王陛下さえ、他の貴族に責められない事だと言える。
にもかかわらず、今でも私は豊穣の女神と社交界で呼び続けられている。
むしろ、夫の罪を果敢に糾弾したとして、私の名声はさらにあがっているほどだ。
それがどれだけ異常なのか、私がわからない訳が無かった。
その私の異常な厚遇の理由こそ、他でもないアルダムのおかげだった。
どうやら、アルダムは私から後ろ盾になってほしいと言われたときから、ずっと手回しを行ってきていたらしい。
それも同時進行で何十通りも。
それは私がマキシムと離縁する為よりも多い、そう言えばどれだけ異常か理解できるだろうか?
後でその事を知った私が目を回さずにいたのは奇跡に近い。
……一体この離縁の為に私がどれだけの時間をかけてきたことか。
そして次に私に離縁されたマキシムだが、彼に待っていたのは社交界における冷遇だった。
交流相手が増えたスリラリアと反対に、ドリュード伯爵家と交流を続ける貴族は大きく減ったらしい。
なんなら、スリラリアよりも少なくなったとか。
その面積、豊かさの差を考えれば異常としか言えない状態だった。
あまりの状態に、私も最初聞いた時には驚いたものなのだから。
というのも、本来ならマキシムは被害者になるはずだったのだから。
私はスリラリアの利益の一ミリさえもマキシムに還元するつもりはなかったが、責任まで押しつけるつもりはなかった。
公爵家の後ろ盾があるスリラリアに文句は言えないが、なんて可哀想なマキシム。
悪いのはすべてあの性悪なライラという女領主だ、というのが私の作っていた着地点。
けれど、ガズリアの噂がでた瞬間全ての話が変わった。
その話がでた初夜式の後、ドリュード伯爵家からは長年のつきあいの家さえも逃げていったらしい。
そんなドリュード伯爵家につきあう人間はもういなかった。
当たり前だ。
ガズリアというのは貴族にとって絶対につきあいたくない存在なのだから。
そんなガズリアとつきあいのあるマキシムは、今や貴族達にとって絶対につきあいたくない存在となっていた。
そんなマキシムを遠ざけるのに効果的なのが、私のほめ言葉らしい。
……聞いた話では、私のことを悪し様にいう貴族でさえ、マキシムがいると私をほめて逃げ出すらしい。
さながらマキシムは悪霊で、私の名前は魔除けということか。
それがここ一ヶ月あたりに起きた話だった。
スリラリア独立してからばたばたと忙しく、そんな噂話も私は小耳に挟む程度。
そんな私はようやく一段落をしたの期に、公爵家に訪れていた。
私の目の前にいるのは、どこか罰が悪そうなアルダム。
「それでは教えて頂きましょうか」
そんな彼に、私はあえて高圧的にほほえんでみせる。
……そうしないと顔が赤くなってしまいそうだったが故に。
「どうして私達は結婚したことになっているのでしょうか? ──愛しの旦那様」
それは驚くほどにうまく事が運んでいた。
国王陛下と王妃殿下の署名が入った書類によって、私とマキシムの離縁はすぐに決まった。
また、スリラリアが私の領地になることも。
驚いたことにスリラリアとつきあいのあった貴族が離れていくことも無かったのだ。
……それどころ、増えたほどというのは私もさすがに驚くしかなかった。
何せ、私は初めての女領主だ。
本来なら、私を任命した国王陛下さえ、他の貴族に責められない事だと言える。
にもかかわらず、今でも私は豊穣の女神と社交界で呼び続けられている。
むしろ、夫の罪を果敢に糾弾したとして、私の名声はさらにあがっているほどだ。
それがどれだけ異常なのか、私がわからない訳が無かった。
その私の異常な厚遇の理由こそ、他でもないアルダムのおかげだった。
どうやら、アルダムは私から後ろ盾になってほしいと言われたときから、ずっと手回しを行ってきていたらしい。
それも同時進行で何十通りも。
それは私がマキシムと離縁する為よりも多い、そう言えばどれだけ異常か理解できるだろうか?
後でその事を知った私が目を回さずにいたのは奇跡に近い。
……一体この離縁の為に私がどれだけの時間をかけてきたことか。
そして次に私に離縁されたマキシムだが、彼に待っていたのは社交界における冷遇だった。
交流相手が増えたスリラリアと反対に、ドリュード伯爵家と交流を続ける貴族は大きく減ったらしい。
なんなら、スリラリアよりも少なくなったとか。
その面積、豊かさの差を考えれば異常としか言えない状態だった。
あまりの状態に、私も最初聞いた時には驚いたものなのだから。
というのも、本来ならマキシムは被害者になるはずだったのだから。
私はスリラリアの利益の一ミリさえもマキシムに還元するつもりはなかったが、責任まで押しつけるつもりはなかった。
公爵家の後ろ盾があるスリラリアに文句は言えないが、なんて可哀想なマキシム。
悪いのはすべてあの性悪なライラという女領主だ、というのが私の作っていた着地点。
けれど、ガズリアの噂がでた瞬間全ての話が変わった。
その話がでた初夜式の後、ドリュード伯爵家からは長年のつきあいの家さえも逃げていったらしい。
そんなドリュード伯爵家につきあう人間はもういなかった。
当たり前だ。
ガズリアというのは貴族にとって絶対につきあいたくない存在なのだから。
そんなガズリアとつきあいのあるマキシムは、今や貴族達にとって絶対につきあいたくない存在となっていた。
そんなマキシムを遠ざけるのに効果的なのが、私のほめ言葉らしい。
……聞いた話では、私のことを悪し様にいう貴族でさえ、マキシムがいると私をほめて逃げ出すらしい。
さながらマキシムは悪霊で、私の名前は魔除けということか。
それがここ一ヶ月あたりに起きた話だった。
スリラリア独立してからばたばたと忙しく、そんな噂話も私は小耳に挟む程度。
そんな私はようやく一段落をしたの期に、公爵家に訪れていた。
私の目の前にいるのは、どこか罰が悪そうなアルダム。
「それでは教えて頂きましょうか」
そんな彼に、私はあえて高圧的にほほえんでみせる。
……そうしないと顔が赤くなってしまいそうだったが故に。
「どうして私達は結婚したことになっているのでしょうか? ──愛しの旦那様」
291
お気に入りに追加
1,069
あなたにおすすめの小説
愛なんてどこにもないと知っている
紫楼
恋愛
私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。
相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。
白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。
結局は追い出されて、家に帰された。
両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。
一年もしないうちに再婚を命じられた。
彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。
私は何も期待できないことを知っている。
彼は私を愛さない。
主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。
作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。
誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。
他サイトにも載せています。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
貴方を捨てるのにこれ以上の理由が必要ですか?
蓮実 アラタ
恋愛
「リズが俺の子を身ごもった」
ある日、夫であるレンヴォルトにそう告げられたリディス。
リズは彼女の一番の親友で、その親友と夫が関係を持っていたことも十分ショックだったが、レンヴォルトはさらに衝撃的な言葉を放つ。
「できれば子どもを産ませて、引き取りたい」
結婚して五年、二人の間に子どもは生まれておらず、伯爵家当主であるレンヴォルトにはいずれ後継者が必要だった。
愛していた相手から裏切り同然の仕打ちを受けたリディスはこの瞬間からレンヴォルトとの離縁を決意。
これからは自分の幸せのために生きると決意した。
そんなリディスの元に隣国からの使者が訪れる。
「迎えに来たよ、リディス」
交わされた幼い日の約束を果たしに来たという幼馴染のユルドは隣国で騎士になっていた。
裏切られ傷ついたリディスが幼馴染の騎士に溺愛されていくまでのお話。
※完結まで書いた短編集消化のための投稿。
小説家になろう様にも掲載しています。アルファポリス先行。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる