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離縁の準備
第二十五話
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私の言葉に、会場の空気は凍り付いた。
マキシムが手配した音楽家達など、かわいそうな位うろたえていてる。
それも仕方ないだろう。
……何せ、言われた当人のマキシムさえ固まっているのだから。
けれど、そんな中一人だけ楽しげに笑っている人間がいた。
若き英才、公爵家当主アルダム。
彼だけは私をまっすぐと見つめながら、その目で語っていた。
──今までの全てをぶちまけろ、と。
またあの人は勝手な事を言う。
そう私は内心でつぶやく。
けれど、不思議とアルダムのその表情に私の心は冷静になっていく。
「な、何の冗談だ……?」
ようやくマキシムが口を開いたのはその時だった。
その表情はうろたえている事を微塵も隠せておらず、惨めきわまりない。
そんな彼に、私はあえてにっこりと笑って告げた。
「冗談ではありませんよ」
「ら、ライラ……!」
「──旦那様、私はずっと貴方が嫌いでした」
マキシムの表情に傷ついた表情が浮かんだのはその時だった。
しかし、それを見て私の胸に浮かぶのは呆れだった。
今更よくそんな顔をできるな、という。
「どう、して! 訳を……!」
「本当に必要ですか?」
「え?」
ぐつぐつと、腹の底で煮えたぎる怒り。
それを私は初めて解放した。
「結婚式では私をみすぼらしいと言って起きながら、実績を上げ少し見た目に気を使えば易々と手のひらを返すその態度。スリラリアを最初押しつけたときに、私を捨て馬にしようとしたのも隠せていませんわ」
「そんな、私は全部ライラの為だと……」
「だったらどうしてこんな式を行うんですか?」
「どうしてだ! お前も喜んでいただろう……!」
そう告げるマキシムに私は周囲の目も気にせず頭を押さえたくなる。
……最初、この人との関係を切望していた私はどうかしていたとしか思えない。
「何度私が無難に断ったと思います? そしてその度に脅してきた事を貴方は覚えていないのですか?」
「っ!」
私の言葉に信じられないと言いたげにマキシムは言葉を失う。
その姿は皮肉にも私の対応が完璧だったことを物語っていた。
ずっと内心を隠し、夫をたててきた私に、マキシムは最後まで疑いを持たなかったということなのだから。
内心歯ぎしりしながら、それでも耐えてきた甲斐があったというものだ。
そして、もうそうして内心を隠す必要もなかった。
「自分の都合ばかりで私を振り回す貴方に誘われる度、私がどれだけ気持ち悪かったか分かります? どれだけ貴方から逃げたいと思っていたか」
「嘘、だ。ライラがそんな事をいうはずが……」
そう言い始めるマキシムを私は見下す。
本来なら、私は別にここまで言うつもりはなかった。
ただ、単純にマキシムに別れを告げてスリラリアを私のものとすれば私は他に何も望まなかった。
何せ、彼は私の伴侶で一時は信頼を得たいと思った人間なのだから。
どれだけ軽視され、言いように使われてきたとしても最後の慈悲があった。
スリラリアを奪う程度で許してやろうという。
……そう、初夜式について脅されるまでは。
この一ヶ月で私は決めていた。
マキシムは徹底的に叩きのめすと
「ここで名言します。私、ライラはマキシム・ドリュードを憎んでいます」
マキシムが手配した音楽家達など、かわいそうな位うろたえていてる。
それも仕方ないだろう。
……何せ、言われた当人のマキシムさえ固まっているのだから。
けれど、そんな中一人だけ楽しげに笑っている人間がいた。
若き英才、公爵家当主アルダム。
彼だけは私をまっすぐと見つめながら、その目で語っていた。
──今までの全てをぶちまけろ、と。
またあの人は勝手な事を言う。
そう私は内心でつぶやく。
けれど、不思議とアルダムのその表情に私の心は冷静になっていく。
「な、何の冗談だ……?」
ようやくマキシムが口を開いたのはその時だった。
その表情はうろたえている事を微塵も隠せておらず、惨めきわまりない。
そんな彼に、私はあえてにっこりと笑って告げた。
「冗談ではありませんよ」
「ら、ライラ……!」
「──旦那様、私はずっと貴方が嫌いでした」
マキシムの表情に傷ついた表情が浮かんだのはその時だった。
しかし、それを見て私の胸に浮かぶのは呆れだった。
今更よくそんな顔をできるな、という。
「どう、して! 訳を……!」
「本当に必要ですか?」
「え?」
ぐつぐつと、腹の底で煮えたぎる怒り。
それを私は初めて解放した。
「結婚式では私をみすぼらしいと言って起きながら、実績を上げ少し見た目に気を使えば易々と手のひらを返すその態度。スリラリアを最初押しつけたときに、私を捨て馬にしようとしたのも隠せていませんわ」
「そんな、私は全部ライラの為だと……」
「だったらどうしてこんな式を行うんですか?」
「どうしてだ! お前も喜んでいただろう……!」
そう告げるマキシムに私は周囲の目も気にせず頭を押さえたくなる。
……最初、この人との関係を切望していた私はどうかしていたとしか思えない。
「何度私が無難に断ったと思います? そしてその度に脅してきた事を貴方は覚えていないのですか?」
「っ!」
私の言葉に信じられないと言いたげにマキシムは言葉を失う。
その姿は皮肉にも私の対応が完璧だったことを物語っていた。
ずっと内心を隠し、夫をたててきた私に、マキシムは最後まで疑いを持たなかったということなのだから。
内心歯ぎしりしながら、それでも耐えてきた甲斐があったというものだ。
そして、もうそうして内心を隠す必要もなかった。
「自分の都合ばかりで私を振り回す貴方に誘われる度、私がどれだけ気持ち悪かったか分かります? どれだけ貴方から逃げたいと思っていたか」
「嘘、だ。ライラがそんな事をいうはずが……」
そう言い始めるマキシムを私は見下す。
本来なら、私は別にここまで言うつもりはなかった。
ただ、単純にマキシムに別れを告げてスリラリアを私のものとすれば私は他に何も望まなかった。
何せ、彼は私の伴侶で一時は信頼を得たいと思った人間なのだから。
どれだけ軽視され、言いように使われてきたとしても最後の慈悲があった。
スリラリアを奪う程度で許してやろうという。
……そう、初夜式について脅されるまでは。
この一ヶ月で私は決めていた。
マキシムは徹底的に叩きのめすと
「ここで名言します。私、ライラはマキシム・ドリュードを憎んでいます」
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