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離縁の準備
第二十二話
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「ここよね……?」
部屋からでた私が向かったのは自分の書斎だった。
その前で私はもう一度見間違いがないか確認をする。
「やっぱりここがかかれている……」
そう私が目をおろすのは先ほどアルダムから渡された紙切れだった。
その内容を確認した私は改めて覚悟を決めて、扉を開く。
扉が開きその中が露わになる。
そこにいたのは一人の人影だった。
「……マリア?」
「っ!」
どれだけ切望したかも分からない信頼する腹心の姿。
それに私は少しの間反応がとれなかった。
一方のマリアはゆっくりと動き出していた。
「また、無茶をして……!」
次の瞬間、私をマリアは抱きしめていた。
その暖かい身体の感触に私は理解する。
……本当にマリアは戻ってきたのだと。
「もう少し、ライラ様なら時間を稼げたでしょう……! マキシムが脅しにガズリアの名前を使っているだけなことを知っていたでしょうに!」
その言葉を聞きながら、私はどうしようもなく泣きそうになる。
普段と違って、怒りながらマリアの声は泣きそうだった。
「ライラ様なら、マキシムが本当にガズリアに告げると決めても時間を稼げたはずです!」
そのマリアの言葉は事実だった。
マキシムは優柔不断だ。
ガズリアの名前を出した時点で本当にガズリアに話を通すどうかは分からない。
私が断っても、ガズリアに話を通していない可能性はあった。
「……それでも、マキシムは突然動く時があるわ」
「それくらい……! あれだけ助けられてきたアルダムがその程度許容できない訳……」
「それに私は決めていたもの」
そこで私はマリアを抱きしめる手に力を込める。
「──私はマリアを信じると」
「……っ!」
見ていないのに、マリアの顔が泣きそうにゆがんだのが私には理解できた。
「貴女はいつもそう言って……」
そういいながらマリアは私を抱きしめる腕に力を込める。
私も腕にさらに力を込めようとして。
「……ラ! ライラ、早く出てこい……!」
私達の逢瀬を邪魔する無粋なマキシムの声が響いたのはその時だった。
その声に、私もマリアの顔にも苦々しい表情が浮かぶ。
「こんな時に……。相変わらず空気の読めない男!」
そう吐き捨てた後、マリアは何かの書類を取り出した。
「ライラ様、説明は省きます。ただ、一つだけ」
その言葉に私は押し黙り続きの言葉を待つ。
「──公爵家がスリラリアの後ろ盾になることが正式に決まりました」
「っ! マリア……!」
それは、この数ヶ月私が何より待ち望んでいた報告だった。
「ありがと、なんて言えばいいのか……。貴女は私の最高の腹心よ!」
そういいながら私の目にわずかに涙が滲む。
しかし、その私と対照的にマリアの顔に浮かぶのは罪悪感だった。
「……いえ、私はこの契約を決める為に大変な越権行為を行いました。後でそのことを正式にライラ様に謝罪を……」
「許します」
──その言葉を告げる私にいっさいの躊躇もなかった。
部屋からでた私が向かったのは自分の書斎だった。
その前で私はもう一度見間違いがないか確認をする。
「やっぱりここがかかれている……」
そう私が目をおろすのは先ほどアルダムから渡された紙切れだった。
その内容を確認した私は改めて覚悟を決めて、扉を開く。
扉が開きその中が露わになる。
そこにいたのは一人の人影だった。
「……マリア?」
「っ!」
どれだけ切望したかも分からない信頼する腹心の姿。
それに私は少しの間反応がとれなかった。
一方のマリアはゆっくりと動き出していた。
「また、無茶をして……!」
次の瞬間、私をマリアは抱きしめていた。
その暖かい身体の感触に私は理解する。
……本当にマリアは戻ってきたのだと。
「もう少し、ライラ様なら時間を稼げたでしょう……! マキシムが脅しにガズリアの名前を使っているだけなことを知っていたでしょうに!」
その言葉を聞きながら、私はどうしようもなく泣きそうになる。
普段と違って、怒りながらマリアの声は泣きそうだった。
「ライラ様なら、マキシムが本当にガズリアに告げると決めても時間を稼げたはずです!」
そのマリアの言葉は事実だった。
マキシムは優柔不断だ。
ガズリアの名前を出した時点で本当にガズリアに話を通すどうかは分からない。
私が断っても、ガズリアに話を通していない可能性はあった。
「……それでも、マキシムは突然動く時があるわ」
「それくらい……! あれだけ助けられてきたアルダムがその程度許容できない訳……」
「それに私は決めていたもの」
そこで私はマリアを抱きしめる手に力を込める。
「──私はマリアを信じると」
「……っ!」
見ていないのに、マリアの顔が泣きそうにゆがんだのが私には理解できた。
「貴女はいつもそう言って……」
そういいながらマリアは私を抱きしめる腕に力を込める。
私も腕にさらに力を込めようとして。
「……ラ! ライラ、早く出てこい……!」
私達の逢瀬を邪魔する無粋なマキシムの声が響いたのはその時だった。
その声に、私もマリアの顔にも苦々しい表情が浮かぶ。
「こんな時に……。相変わらず空気の読めない男!」
そう吐き捨てた後、マリアは何かの書類を取り出した。
「ライラ様、説明は省きます。ただ、一つだけ」
その言葉に私は押し黙り続きの言葉を待つ。
「──公爵家がスリラリアの後ろ盾になることが正式に決まりました」
「っ! マリア……!」
それは、この数ヶ月私が何より待ち望んでいた報告だった。
「ありがと、なんて言えばいいのか……。貴女は私の最高の腹心よ!」
そういいながら私の目にわずかに涙が滲む。
しかし、その私と対照的にマリアの顔に浮かぶのは罪悪感だった。
「……いえ、私はこの契約を決める為に大変な越権行為を行いました。後でそのことを正式にライラ様に謝罪を……」
「許します」
──その言葉を告げる私にいっさいの躊躇もなかった。
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