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第五話
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セリアの進行方向、そこにいるのは一人の聖女、アズリア先生だった。
アズリア先生は、私たち聖女見習いを教育した厳しい聖女で、セリナの顔には緊張が浮かんでいる。
それでも止まることなく、セリナはまっすぐに水晶の前にたった。
「後二人か」
そんなセリナを見て、アズリア先生はぼそりと呟く。
そのアズリア先生の言葉につられ、周囲を見渡した私は気づく。
……セリナの診査は、適正診査が終わった元聖女見習い達の格好の見せ物になっていることを。
その視線を感じるのだろう。
セリナは明らかに、平静とは言い難い様子だった。
「セリナ、手を出せ」
「……はい」
しかし、意を決した様子でアズリア先生の言葉に従って、水晶の上に手を乗せる。
ーー水晶が光り輝きだしたのは、その瞬間だった。
「っ!」
守護は青い光、癒しの時は黄色い光だった中、今見えるのは赤い光だった。
それも、イリーナの時にも劣らないような強い光。
その光景に、アズリア先生まで呆然と水晶を見つめている。
それから、光が消えて少しの間、誰も話すことはなかった。
「……セリナ、契約に強い才能あり」
そして、ようやくアズリア先生がそう告げた瞬間、大きな歓声が広がることになった。
何せ、契約の才能の持ち主なんて、例年一人いたら幸運と言われるレベル。
こんな強い契約の才能を持つ人間など、一体何年ぶりなのだろうか。
そんな中、私は全力で走り出した。
沸き立つ人々をかき分け、進むとその中に呆然とするイリーナがいた。
その姿に、私は胸を張って言いたくなる。
どうだ、私の友達はすごいだろうと。
しかし、そんな暇は今なかった。
私は人々をかき分け、水晶の元へと走る。
その近くで呆然と、立ち尽くすセリナの元へと。
次の瞬間、私はセリナへと力いっぱい抱きついた。
「おめでとう! セリナ!」
「……あり、あ!」
じわ、とセリナの大きな瞳から涙があふれ出したのはその時だった。
相も変わらない、セリナの姿に私は思わず笑ってしまいそうになる。
しかし、すぐに私は思い直す。
才能も関係なく、ずっとセリナは私にとって自慢の友達だったのだから。
満面の笑みの私を見てセリナの顔がさらにくしゃりと歪む。
「わ、私ずっとアリアに……」
「……感動のところ申し訳ないが、いいか?」
「わぁ!?」
「……え!」
ぐい、とアズリア先生が私達の間に顔を入れてきたのはその時だった。
完全に周囲のことを忘れていた私とアリアは、思わず二人で抱き合う。
そんな私達に対し、気まずそうにアズリア先生は口を開いた。
「本来友人同士の語らいに口を挟む趣味はないんだが、立場上そもいってられなくてな。話す前に、適正診査を終わらせていいか?」
「……あ」
私が、自分の適正診査を忘れていたことに気づいたのはその時だった。
思わず赤くなる私に、アズリア先生は苦笑して告げる。
「お前が最後だアリア。適正診査が終われば、好きなだけ語りあってもらってかまわんから、はじめるぞ」
「は、はい」
そう頷いて、私はセリナと場所を変わる。
私が異常に気づいたのは、そのときだった。
……そう、期待を込めて私を見つめる元聖女達の視線に。
その時になって、私は今更気づく。
セリナに向かっていた視線が、今度は私に向けられていることを。
そしてその視線には、セリナの後の私がどんな才能を持っているのかという、隠す気のない好奇心が滲んでいることを。
アズリア先生は、私たち聖女見習いを教育した厳しい聖女で、セリナの顔には緊張が浮かんでいる。
それでも止まることなく、セリナはまっすぐに水晶の前にたった。
「後二人か」
そんなセリナを見て、アズリア先生はぼそりと呟く。
そのアズリア先生の言葉につられ、周囲を見渡した私は気づく。
……セリナの診査は、適正診査が終わった元聖女見習い達の格好の見せ物になっていることを。
その視線を感じるのだろう。
セリナは明らかに、平静とは言い難い様子だった。
「セリナ、手を出せ」
「……はい」
しかし、意を決した様子でアズリア先生の言葉に従って、水晶の上に手を乗せる。
ーー水晶が光り輝きだしたのは、その瞬間だった。
「っ!」
守護は青い光、癒しの時は黄色い光だった中、今見えるのは赤い光だった。
それも、イリーナの時にも劣らないような強い光。
その光景に、アズリア先生まで呆然と水晶を見つめている。
それから、光が消えて少しの間、誰も話すことはなかった。
「……セリナ、契約に強い才能あり」
そして、ようやくアズリア先生がそう告げた瞬間、大きな歓声が広がることになった。
何せ、契約の才能の持ち主なんて、例年一人いたら幸運と言われるレベル。
こんな強い契約の才能を持つ人間など、一体何年ぶりなのだろうか。
そんな中、私は全力で走り出した。
沸き立つ人々をかき分け、進むとその中に呆然とするイリーナがいた。
その姿に、私は胸を張って言いたくなる。
どうだ、私の友達はすごいだろうと。
しかし、そんな暇は今なかった。
私は人々をかき分け、水晶の元へと走る。
その近くで呆然と、立ち尽くすセリナの元へと。
次の瞬間、私はセリナへと力いっぱい抱きついた。
「おめでとう! セリナ!」
「……あり、あ!」
じわ、とセリナの大きな瞳から涙があふれ出したのはその時だった。
相も変わらない、セリナの姿に私は思わず笑ってしまいそうになる。
しかし、すぐに私は思い直す。
才能も関係なく、ずっとセリナは私にとって自慢の友達だったのだから。
満面の笑みの私を見てセリナの顔がさらにくしゃりと歪む。
「わ、私ずっとアリアに……」
「……感動のところ申し訳ないが、いいか?」
「わぁ!?」
「……え!」
ぐい、とアズリア先生が私達の間に顔を入れてきたのはその時だった。
完全に周囲のことを忘れていた私とアリアは、思わず二人で抱き合う。
そんな私達に対し、気まずそうにアズリア先生は口を開いた。
「本来友人同士の語らいに口を挟む趣味はないんだが、立場上そもいってられなくてな。話す前に、適正診査を終わらせていいか?」
「……あ」
私が、自分の適正診査を忘れていたことに気づいたのはその時だった。
思わず赤くなる私に、アズリア先生は苦笑して告げる。
「お前が最後だアリア。適正診査が終われば、好きなだけ語りあってもらってかまわんから、はじめるぞ」
「は、はい」
そう頷いて、私はセリナと場所を変わる。
私が異常に気づいたのは、そのときだった。
……そう、期待を込めて私を見つめる元聖女達の視線に。
その時になって、私は今更気づく。
セリナに向かっていた視線が、今度は私に向けられていることを。
そしてその視線には、セリナの後の私がどんな才能を持っているのかという、隠す気のない好奇心が滲んでいることを。
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