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一章
第10話 (アルセラーン目線)
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◇◇◇
崩れ落ちた屋敷と、カランが逃げ出していった方向を見てしきりに首を捻っているサーマリアの姿、それは非常に不審なものだった。
何せアストレッド家の屋敷の残骸を見るサーマリアの顔に浮かぶのは隠しきれない困惑。
そして、それはこの惨状を作り出したものが浮かべるものとしては違和感があるものだった。
何せこれだけの惨状を起こしながら、何故こんなことを自分がしたのか理解できない、そんな表情をサーマリアは浮かべていたのだから。
「………やはりか」
けれども、我、アルセラーンはそのサーマリアの態度に不信感を露にするどころか、あることを確信した。
ーーー そう、サーマリアはこれだけの惨状を作り出しながら、自分がカールマンに憎悪を抱いていることに気づいていないことを。
母親が無くなってからサーマリアが過ごした五年間、それは未だ十代の少女には余りにも酷な日々だった。
………そしてそんな状況でありながら、サーマリアは契約者であることも隠さなければならなかった。
そんな生活の中、サーマリアには自分の目標を達成することに執着することしか生き甲斐を見つけることができなかった。
………そしてそのうちにサーマリアはアストレッド家に対しての怒りや憎しみを感じなくなっていった。
サーマリアはただ自身の望みを達成することに執着することでその他の感情を抑制し始めたのだ。
………自分自身を周囲から守るために。
そしてそれからサーマリアはただ望みを果たすためだけに動くようになった。
そうどれ程ひどい目に遭おうが感情を露にすることなく。
だからサーマリアは今回も、アストレッド家を後にする方法にかんして、望みを達成しやすい穏やかな方法を選択した。
アストレッド家に報復する機会をあっさり放棄して。
ーーーけれども、サーマリアのアストレッド家に対する憎しみは消して消えたわけではなかった。
ただサーマリア自身が感じれない、いや感じようとしないだけ。
しかしその憎しみにサーマリアは気づかず報復の機会を放棄した。
ただただ、望みの達成のために。
けれど、感じられなくなっても無くなった訳ではなかった。
…………だからサーマリアは無意識のうちに報復の正当な理由を求め、カランに素顔を晒した。
それは全てサーマリアの無意識かで起きたこと。
我でさえ、契約精霊としてサーマリアと最も近い存分でなければ気づかなかった。
それほどまでにサーマリアの心は複雑で。
ーーー致命的な程に歪んでいた。
………そしてその歪みこそがサーマリアのこれまでの人生の過酷さを示していた。
そしてその過酷な人生の中、我はサーマリアの救いとなることはできなかった。
「……本当にあの坊主が居なければどうなっていたことか」
自嘲するように漏らしたその言葉、そこには隠しきれない後悔が込められていた。
そう、サーマリアを救えなかった後悔が。
けれども、壊れた屋敷の光景に我はもうサーマリアは傷つく必要が無くなることを理解する。
何せ、サーマリアの望みはもう少しで達成されるのだから。
長年、サーマリアが抱いてきた望みが。
「ふっ」
そしてその事を理解したとき、自然と我の口許には笑みが浮かんでいた。
ーーー殺意と歓喜が混ざったような笑みが。
「いくか」
「あ、うん!」
我の声に、先程まで何か悩むかのように顔を歪めていたサーマリアがわれにもどり笑う。
それからまるで聞くまでもないと言うように、行き先を我尋ねることなく歩き出した。
そてて我とサーマリアは示し会わせることもなく、同時にあると方向へと向かい歩き出した。
それはサーマリアをこの地獄に落とした原因となる存在がいる場所。
ーーーこのマーキリア王国の王族が住まう王宮へと。
◇◇◇
崩れ落ちた屋敷と、カランが逃げ出していった方向を見てしきりに首を捻っているサーマリアの姿、それは非常に不審なものだった。
何せアストレッド家の屋敷の残骸を見るサーマリアの顔に浮かぶのは隠しきれない困惑。
そして、それはこの惨状を作り出したものが浮かべるものとしては違和感があるものだった。
何せこれだけの惨状を起こしながら、何故こんなことを自分がしたのか理解できない、そんな表情をサーマリアは浮かべていたのだから。
「………やはりか」
けれども、我、アルセラーンはそのサーマリアの態度に不信感を露にするどころか、あることを確信した。
ーーー そう、サーマリアはこれだけの惨状を作り出しながら、自分がカールマンに憎悪を抱いていることに気づいていないことを。
母親が無くなってからサーマリアが過ごした五年間、それは未だ十代の少女には余りにも酷な日々だった。
………そしてそんな状況でありながら、サーマリアは契約者であることも隠さなければならなかった。
そんな生活の中、サーマリアには自分の目標を達成することに執着することしか生き甲斐を見つけることができなかった。
………そしてそのうちにサーマリアはアストレッド家に対しての怒りや憎しみを感じなくなっていった。
サーマリアはただ自身の望みを達成することに執着することでその他の感情を抑制し始めたのだ。
………自分自身を周囲から守るために。
そしてそれからサーマリアはただ望みを果たすためだけに動くようになった。
そうどれ程ひどい目に遭おうが感情を露にすることなく。
だからサーマリアは今回も、アストレッド家を後にする方法にかんして、望みを達成しやすい穏やかな方法を選択した。
アストレッド家に報復する機会をあっさり放棄して。
ーーーけれども、サーマリアのアストレッド家に対する憎しみは消して消えたわけではなかった。
ただサーマリア自身が感じれない、いや感じようとしないだけ。
しかしその憎しみにサーマリアは気づかず報復の機会を放棄した。
ただただ、望みの達成のために。
けれど、感じられなくなっても無くなった訳ではなかった。
…………だからサーマリアは無意識のうちに報復の正当な理由を求め、カランに素顔を晒した。
それは全てサーマリアの無意識かで起きたこと。
我でさえ、契約精霊としてサーマリアと最も近い存分でなければ気づかなかった。
それほどまでにサーマリアの心は複雑で。
ーーー致命的な程に歪んでいた。
………そしてその歪みこそがサーマリアのこれまでの人生の過酷さを示していた。
そしてその過酷な人生の中、我はサーマリアの救いとなることはできなかった。
「……本当にあの坊主が居なければどうなっていたことか」
自嘲するように漏らしたその言葉、そこには隠しきれない後悔が込められていた。
そう、サーマリアを救えなかった後悔が。
けれども、壊れた屋敷の光景に我はもうサーマリアは傷つく必要が無くなることを理解する。
何せ、サーマリアの望みはもう少しで達成されるのだから。
長年、サーマリアが抱いてきた望みが。
「ふっ」
そしてその事を理解したとき、自然と我の口許には笑みが浮かんでいた。
ーーー殺意と歓喜が混ざったような笑みが。
「いくか」
「あ、うん!」
我の声に、先程まで何か悩むかのように顔を歪めていたサーマリアがわれにもどり笑う。
それからまるで聞くまでもないと言うように、行き先を我尋ねることなく歩き出した。
そてて我とサーマリアは示し会わせることもなく、同時にあると方向へと向かい歩き出した。
それはサーマリアをこの地獄に落とした原因となる存在がいる場所。
ーーーこのマーキリア王国の王族が住まう王宮へと。
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******
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