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第40話

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 私が自身の身分を明かした後、大きな騒ぎが起きた会場では、直ぐに結婚式を中止する旨が告げられ、中にいた人間は強制的に追い出されることとなった。

 当たり前の話だが、次期当主であるマーリスのあまりにも大きな失態が明らかになった今、このまま結婚式など続けられるわけがなかったのだ。
 おそらく、このままマーリスとマルシェの婚約は自然消滅することになるだろう。

 本来であれば、騒ぎをこれ以上大きくしないように貴族達になんらかの条件をつけるのが最善ではあるが、最早そんな条件を出せるだけの余裕などアーステルト家にはない。
 だからこそ、何とか貴族達を会場から追い出すことが、最大限の出来ることだった。
 そして、それは私にとってとても有難いことだった。

 「ふう。覚悟はしていたけど、あそこまで血眼になって来られるなんてね……」

 見知ったアーステルト家の屋敷を歩きながら、先程の貴族達の剣幕を思い出した私は、そんな言葉を漏らしていた。
 会場から追い出される間際、私は《仮面の淑女》との関わりを持とうとする貴族達に囲まれることになった。
 会場から追い払われることがなければ、私は一体どれだけの間拘束されることになったか。
 それがこれから先も続くだろうことを考え、私は思わず嘆息を漏らしそうになる。

 「いえ、今はそんなことを考えている場合ではないわ」

 だがすぐに私は、今はそのことを考えるべきではないと、その考えを頭から振り払った。
 たしかに貴族達のことは、煩わしい未来。
 決して見て見ぬ振りをすることなんてできない。
 しかし、それは今気にしないといけないことでは無い。

 「後、もう少し」

 そう考えて、私は僅かに足を早めた。

 見知った屋敷の光景、それに私は少なくない胸の痛みを覚えながらも、それを押さえつけて目的地へと足を進める。

 それは、他の部屋と違い特別で綺麗な扉がつけられた部屋だった。
 その扉は、自分の部屋は特別にしたいと告げていた彼に上げたもので、込み上げてくるなにかを感じながら私は扉を開く。

 「さ、サラリア………」

 その中に居たのは、蒼白な顔をしたマーリスだった……
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