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第6話
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それから私は、男性へとこれまでの経緯を語った。
自分が婚約者に不当な婚約破棄をされたこと。
その理由として、覚えもない浮気が挙げられたこと。
……そして、その浮気相手とされたのが男性であること。
そこまで告げて、私は居たたまれなさから思わず俯いた。
私と男性の関係はあくまで時々出会って話す程度しかない。
それ以上の迷惑を掛けたくない、その思いから私は敢えて男性の名前を聞かず、偽名を名乗った。
だが、その私の行動は全て無意味となった。
そう、全ては私自身のミスで。
「……本当に申し訳ありません。こんなことに無関係な貴方を巻き込んでしまって」
罪悪感に背を押されるまま、私は男性へと頭を下げる。
本来、貴族が平民に頭を下げる行為は決して進められるものではない。
それを理解しながらも、私は男性へと頭を下げずにはいられなかった。
「もし貴方が望まれるのでしたら……」
頭を下げたまま私は、さらに言葉を続けようとする。
今回の件で、男性は貴族同士の争いに巻き込まれることになる。
彼が望むのならば、自分の家で保護する、と告げるために。
「サリア様、頭を上げてください。このことで私は貴方様に謝られるようなことはありません」
しかし、その言葉を告げる前に、男性はきっぱりと私の謝罪を拒絶した。
それは、まるで私の想像していなかった反応だった。
貴族、その恐ろしさを平民であるはずの目の前の男性が分からないわけがない。
なのに、今の彼には貴族に対する恐れなど、一切見えなかったのだから。
その男性に驚き、だからこそ私の反応は一拍遅れる。
「サリア様は何も気にせず、休んでいてください。私は大丈夫、いえ、私が全て何とかしますから」
その虚を突くように、さらに男性はさらに言葉を続けた。
そして最後に笑うと、男性は歩き出そうとする。
「ま、待ってください!」
私がようやく声を出せたのはその時だった。
本気でこの場から去ろうとする男性を、私は何とか呼び止める。
最早私は、隠すことができないほど混乱していた。
何故、貴族に狙われていると聞いても、ここまで男性が冷静なのか、また本気で貴族をどうにか出来ると思えるのか。
全てが私には理解できない。
ただ、平民が貴族に喧嘩を売れば、その未来は分かりきっている。
そう考えた私は、何とか男性を止めるために声をあげる。
「せ、せめて、私に責任を取らせてください!貴方を巻き込んでしまった責任を」
その私の言葉に、この場から去ろうとした男性の足が止まった。
それを見て、私の胸に安堵が広がる。
どうやら、ようやく私の言葉を聞いてくれたと思い込んで。
「………あ」
けれど次の瞬間、こちらに振り返った男性の姿に、自分の判断が誤りであることに私は気づいた。
ぼさぼさの髪の毛に所々ほつれた衣服。
それは、明らかに平民のもので、けれども男性の青い目は、彼の格好に合わない高貴さが込められていた。
その目に苛立たしげな色を浮かべ、男性は口を開く。
「貴方には、謝ることも責任に思うことも必要はない。──貴方は何も悪くないのだから」
その男性の言葉に、私は言葉を返すことが出来なかった。
男性の言葉には、今まで聞いたことがないくらい強い口調だった。
なのに、その言葉にはそれ以上の気遣いが込められていて、それに気づいた時何故か私の目からは涙が溢れ出した。
「あ、あれ?」
私は何とか涙を拭おうとするが、涙が留まることはない。
そのことに焦燥を感じる私に、男性は優しく笑いかけた。
「後は私に任せて下さい」
最後に私に優しくハンカチを手渡し、男性はこの広場から去っていった……
自分が婚約者に不当な婚約破棄をされたこと。
その理由として、覚えもない浮気が挙げられたこと。
……そして、その浮気相手とされたのが男性であること。
そこまで告げて、私は居たたまれなさから思わず俯いた。
私と男性の関係はあくまで時々出会って話す程度しかない。
それ以上の迷惑を掛けたくない、その思いから私は敢えて男性の名前を聞かず、偽名を名乗った。
だが、その私の行動は全て無意味となった。
そう、全ては私自身のミスで。
「……本当に申し訳ありません。こんなことに無関係な貴方を巻き込んでしまって」
罪悪感に背を押されるまま、私は男性へと頭を下げる。
本来、貴族が平民に頭を下げる行為は決して進められるものではない。
それを理解しながらも、私は男性へと頭を下げずにはいられなかった。
「もし貴方が望まれるのでしたら……」
頭を下げたまま私は、さらに言葉を続けようとする。
今回の件で、男性は貴族同士の争いに巻き込まれることになる。
彼が望むのならば、自分の家で保護する、と告げるために。
「サリア様、頭を上げてください。このことで私は貴方様に謝られるようなことはありません」
しかし、その言葉を告げる前に、男性はきっぱりと私の謝罪を拒絶した。
それは、まるで私の想像していなかった反応だった。
貴族、その恐ろしさを平民であるはずの目の前の男性が分からないわけがない。
なのに、今の彼には貴族に対する恐れなど、一切見えなかったのだから。
その男性に驚き、だからこそ私の反応は一拍遅れる。
「サリア様は何も気にせず、休んでいてください。私は大丈夫、いえ、私が全て何とかしますから」
その虚を突くように、さらに男性はさらに言葉を続けた。
そして最後に笑うと、男性は歩き出そうとする。
「ま、待ってください!」
私がようやく声を出せたのはその時だった。
本気でこの場から去ろうとする男性を、私は何とか呼び止める。
最早私は、隠すことができないほど混乱していた。
何故、貴族に狙われていると聞いても、ここまで男性が冷静なのか、また本気で貴族をどうにか出来ると思えるのか。
全てが私には理解できない。
ただ、平民が貴族に喧嘩を売れば、その未来は分かりきっている。
そう考えた私は、何とか男性を止めるために声をあげる。
「せ、せめて、私に責任を取らせてください!貴方を巻き込んでしまった責任を」
その私の言葉に、この場から去ろうとした男性の足が止まった。
それを見て、私の胸に安堵が広がる。
どうやら、ようやく私の言葉を聞いてくれたと思い込んで。
「………あ」
けれど次の瞬間、こちらに振り返った男性の姿に、自分の判断が誤りであることに私は気づいた。
ぼさぼさの髪の毛に所々ほつれた衣服。
それは、明らかに平民のもので、けれども男性の青い目は、彼の格好に合わない高貴さが込められていた。
その目に苛立たしげな色を浮かべ、男性は口を開く。
「貴方には、謝ることも責任に思うことも必要はない。──貴方は何も悪くないのだから」
その男性の言葉に、私は言葉を返すことが出来なかった。
男性の言葉には、今まで聞いたことがないくらい強い口調だった。
なのに、その言葉にはそれ以上の気遣いが込められていて、それに気づいた時何故か私の目からは涙が溢れ出した。
「あ、あれ?」
私は何とか涙を拭おうとするが、涙が留まることはない。
そのことに焦燥を感じる私に、男性は優しく笑いかけた。
「後は私に任せて下さい」
最後に私に優しくハンカチを手渡し、男性はこの広場から去っていった……
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