19 / 30
第19話
しおりを挟む
「それは、王妃様がウルベール様に対して敵対する可能性があると言うことでしょうか?」
突然のウルベール様の王妃野行動を教えてくれと言う言葉、その言葉を私はそう認識して震える声を出しました。
つまりウルベール様が王妃様を私の協力者とした理由、それは王妃様がウルベール様と決して良い関係を結んでいないからだと私は考えたのです。
そしてその王妃様の動向を探るために私をスパイとして……
「いえ、違いますよ」
「そう、なのですか?」
しかしその私の思考はウルベール様の声に遮られることとなりました。
ですが、ウルベール様に否定されてもなお、私の中からその疑惑が消えることはありませんでした。
それ程私にとっては、動向を調べろなんて言う言葉が想定外だったのです。
仮にも王妃である相手にそんなことをいうなんて明らかに何かがあるとしか思えません。
「家族の動向を教えてほしい、それだけですよ」
「えっ?」
だが、その時私が抱いた不信感は次のウルベール様の言葉に吹き飛ぶことになりました。
え、家族?
ウルベール様と王妃様が?
「えぇぇぇぇえ!?」
そしてそのあまりにも突然に明かされた衝撃の事実に、ロミルと私の叫び声が合わさりました……
◇◆◇
「言ってませんでしか。妹です」
衝撃の事実に思わず声を上げて、叫んでしまった私とロミル。
その声はかなりの音量だったように感じまでいるのですが、ぽつりと付け加えたウルベール様の様子は今までと一切変わっていませんでした。
そしてその様子に私達も冷静さを取り戻しかけ……
「聞いてません!」
「シリア様の言う通りです。そして何故そんなになんでもないことのように言われるんですか……」
……ませんでした。
いや、それは当たり前のことです。
それが事実だとすればウルベール様はかなりの高位の貴族の出身であることになるのです。
私はお父様からウルベール様はかの戦争で成り上がったと聞かされていたので、なおさらウルベール様の出身は貴族か、または下級貴族だと思い込んでいました。
なのに本当は高位貴族であったとは……
確かに高位貴族であった時よりはあの戦争でウルベール様の地位も向上してはいるでしょうが、紛らわしくはないでしょうかお父様?
そう私は頭の中のお父様に対しても文句を言ってしまうほどには驚いていましたが、それでもウルベール様の反応は変わりませんでした。
「まぁ、そう言うことで王妃様の行動を報告願います」
というか、無視されました。
一瞬、私はそのウルベール様の態度にそれは無いだろうと怒りを覚えかけて……
「あれ?」
そしてどこかウルベール様が焦っているように感じて目を見開きました。
その私の感じた感覚、それは決してウルベール様の態度が明らかに変わっていたというわけではありませんでした。
それどころか、ウルベール様の態度には一切今までと変わった様子が見られなくて……
「では、お願いできますね」
……しかし、明らかに執拗に王妃様の行動を報告する件に関してウルベール様は言及してきました。
そのウルベール様の態度に私は疑問を覚えつつも、それでもことがことだけにあっさりと引き受けることができるわけがなく、断ろうと口を開きました。
「……しかし、そんなこと私には。王妃様は優秀だとウルベール様も仰っていたではないですか!だったらそんなに気にしないでも……」
「いえ、それは出来ない」
「えっ?」
ですが、その私の言葉はかつてなく強い口調のウルベール様の言葉で中断させられることになりました。
私、いえ、ロミルもかつて見たことないウルベール様のその強引な様子に思わず動揺を隠しきれませんでしたが、そのことをウルベール様が気づくことはありませんでした。
「彼女は確かに有能だ。だが、あまりにも捨て身すぎる……」
そしていつのまにかウルベール様は王妃様を親しく彼女と呼んでいました。
けれども、その時私の耳にはそれよりももっと気になった言葉がありました。
「捨て身……?」
「ええ」
途中、私が言葉を挟んだせいか、いつのまにかウルベール様の口調には少し冷静さが戻っていました。
けれども、ウルベール様の語調が和らいだと同義ではなく、さらにウルベール様は言葉を重ねました。
「そもそも、王妃の身で高位貴族と政権争いをしたことが異常でした。確かに彼女は自身の家を許せない、そう思うだけの理由がありました。それに最終的には不正をし、この国の腐敗に繋がっていた高位貴族を一新することはできました。けれども、彼女ならば時間はかかったかもしれないが、それでも確実にこの国をもっとうまく変えれた」
そう言葉を重ねるウルベール様の声には複雑すぎて読みきれない感情が込められていました。
それが何か、私には検討はつきませんでしたが、それを私が考える間も無くウルベール様は次の言葉を口にしました。
「シリア様は目にしましたか?あの王子の言葉に文句を言えず、不満があっても口を貝のように閉ざしている貴族の姿を」
「え、ええ」
それは私が目にした、貴族のあまりにも異常な姿でした。
貴族は王族に次ぐ権力を持っていて、なのにそのはずなのにあの広場では王子の目に留まることを恐れ、貴族はほとんど口を開こうとはしていませんでした。
確かにあの時の王子は馬鹿で、目をつけられたくないとそう思う気持ちはわかりますが、それでもあの時のあの状態は明らかに異常で……
「その原因は、王妃様です」
「えっ?」
そしてだからこそ私は、優秀だと聞かされていた王妃様の思わぬ失態に言葉を失うことになりました……
突然のウルベール様の王妃野行動を教えてくれと言う言葉、その言葉を私はそう認識して震える声を出しました。
つまりウルベール様が王妃様を私の協力者とした理由、それは王妃様がウルベール様と決して良い関係を結んでいないからだと私は考えたのです。
そしてその王妃様の動向を探るために私をスパイとして……
「いえ、違いますよ」
「そう、なのですか?」
しかしその私の思考はウルベール様の声に遮られることとなりました。
ですが、ウルベール様に否定されてもなお、私の中からその疑惑が消えることはありませんでした。
それ程私にとっては、動向を調べろなんて言う言葉が想定外だったのです。
仮にも王妃である相手にそんなことをいうなんて明らかに何かがあるとしか思えません。
「家族の動向を教えてほしい、それだけですよ」
「えっ?」
だが、その時私が抱いた不信感は次のウルベール様の言葉に吹き飛ぶことになりました。
え、家族?
ウルベール様と王妃様が?
「えぇぇぇぇえ!?」
そしてそのあまりにも突然に明かされた衝撃の事実に、ロミルと私の叫び声が合わさりました……
◇◆◇
「言ってませんでしか。妹です」
衝撃の事実に思わず声を上げて、叫んでしまった私とロミル。
その声はかなりの音量だったように感じまでいるのですが、ぽつりと付け加えたウルベール様の様子は今までと一切変わっていませんでした。
そしてその様子に私達も冷静さを取り戻しかけ……
「聞いてません!」
「シリア様の言う通りです。そして何故そんなになんでもないことのように言われるんですか……」
……ませんでした。
いや、それは当たり前のことです。
それが事実だとすればウルベール様はかなりの高位の貴族の出身であることになるのです。
私はお父様からウルベール様はかの戦争で成り上がったと聞かされていたので、なおさらウルベール様の出身は貴族か、または下級貴族だと思い込んでいました。
なのに本当は高位貴族であったとは……
確かに高位貴族であった時よりはあの戦争でウルベール様の地位も向上してはいるでしょうが、紛らわしくはないでしょうかお父様?
そう私は頭の中のお父様に対しても文句を言ってしまうほどには驚いていましたが、それでもウルベール様の反応は変わりませんでした。
「まぁ、そう言うことで王妃様の行動を報告願います」
というか、無視されました。
一瞬、私はそのウルベール様の態度にそれは無いだろうと怒りを覚えかけて……
「あれ?」
そしてどこかウルベール様が焦っているように感じて目を見開きました。
その私の感じた感覚、それは決してウルベール様の態度が明らかに変わっていたというわけではありませんでした。
それどころか、ウルベール様の態度には一切今までと変わった様子が見られなくて……
「では、お願いできますね」
……しかし、明らかに執拗に王妃様の行動を報告する件に関してウルベール様は言及してきました。
そのウルベール様の態度に私は疑問を覚えつつも、それでもことがことだけにあっさりと引き受けることができるわけがなく、断ろうと口を開きました。
「……しかし、そんなこと私には。王妃様は優秀だとウルベール様も仰っていたではないですか!だったらそんなに気にしないでも……」
「いえ、それは出来ない」
「えっ?」
ですが、その私の言葉はかつてなく強い口調のウルベール様の言葉で中断させられることになりました。
私、いえ、ロミルもかつて見たことないウルベール様のその強引な様子に思わず動揺を隠しきれませんでしたが、そのことをウルベール様が気づくことはありませんでした。
「彼女は確かに有能だ。だが、あまりにも捨て身すぎる……」
そしていつのまにかウルベール様は王妃様を親しく彼女と呼んでいました。
けれども、その時私の耳にはそれよりももっと気になった言葉がありました。
「捨て身……?」
「ええ」
途中、私が言葉を挟んだせいか、いつのまにかウルベール様の口調には少し冷静さが戻っていました。
けれども、ウルベール様の語調が和らいだと同義ではなく、さらにウルベール様は言葉を重ねました。
「そもそも、王妃の身で高位貴族と政権争いをしたことが異常でした。確かに彼女は自身の家を許せない、そう思うだけの理由がありました。それに最終的には不正をし、この国の腐敗に繋がっていた高位貴族を一新することはできました。けれども、彼女ならば時間はかかったかもしれないが、それでも確実にこの国をもっとうまく変えれた」
そう言葉を重ねるウルベール様の声には複雑すぎて読みきれない感情が込められていました。
それが何か、私には検討はつきませんでしたが、それを私が考える間も無くウルベール様は次の言葉を口にしました。
「シリア様は目にしましたか?あの王子の言葉に文句を言えず、不満があっても口を貝のように閉ざしている貴族の姿を」
「え、ええ」
それは私が目にした、貴族のあまりにも異常な姿でした。
貴族は王族に次ぐ権力を持っていて、なのにそのはずなのにあの広場では王子の目に留まることを恐れ、貴族はほとんど口を開こうとはしていませんでした。
確かにあの時の王子は馬鹿で、目をつけられたくないとそう思う気持ちはわかりますが、それでもあの時のあの状態は明らかに異常で……
「その原因は、王妃様です」
「えっ?」
そしてだからこそ私は、優秀だと聞かされていた王妃様の思わぬ失態に言葉を失うことになりました……
0
お気に入りに追加
2,103
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる