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7.直談判
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放課後、教室にクラスメイトはいなかった。
全員が実習室に魔術の訓練に行っているのだろう。
「子供かよ」
ーーーそしてただ1人教室に残っている俺は、傷をつけられた自分の机の前でそうポツリと漏らした。
そしてボロボロなのは机だけではない。
俺の制服、防刃性能を備えたこの学校の制服はある程度乾いてきたとはいえ、まだ濡れていて、さらに所々焦げてさえもいる。
朝の相楽の一言でクラスメイト達の態度は変わり、そして午後からの実習の事業で悪化した。
相楽が、訓練だと称して俺に放った魔法。
そしてその瞬間から、俺はこの場所で人間ですらなくなった。
精々、こちらを見下す程度だったクラスメイトからの視線は、もはや俺を人として、いや生物としてさえ認識していなかった。
「分かっていた、のにな」
ーーーそしてそうなることを俺は知っていた。
強大な力を持つ組織はその力ゆえに歪む。
それが彼らの組織の特徴。
そして俺はそうなった組織の恐ろしさを身を以て味わっているのだ。
そして、この学院がそんな組織だと示すような出来事は何度も俺の目の前で起こっていた。
洗脳に近い教育に、生徒を崇高しているこの学院の職員。
ここには人権など存在しない。
強大な力を手にし、壊れ歪んだ組織。
ここがその場所だと俺は分かっていた。
「知っていたのに……」
ーーーだが、希望を持ってしまった。
昨日の時点から、クラスメイトの俺を見る視線はかなりおかしかった。
そしてそのことを俺ははっきりと分かっていた。
なのに昨日の時点で退学を選ばなかったのは、
ただの未練か、
それともタイミング良くかかってきた社長の留守電に運命でも感じたからか、
両方なのか。
「今からでも遅くない」
だが、そんなこと俺には関係なかった。
もう、俺の目の前に残された選択肢はここを立ち去る、それだけなのだから。
「畜生……」
ーーー早くそうしないと、俺は身体を蝕むこの激情に身を任せてしまいそうなのだから。
俺の胸の中では様々な思いが交錯していた。
知っていた。自分がそんなに人付き合いが上手い方ではないことぐらい。
だから最初を失敗して、それでもクラスメイトたちに快く受け入れられた時に、おかしいと気付くべきだったのかもしれない。
確かに俺はただ、良かった、受け入れてくれた、そんなことしか考えずに間抜けな顔をして笑っていることしかしていなかった。
もしもその時、気づいて行動していれば、いや、最初佐藤さんを救った時にちゃんと俺は魔術など使えないそう言っていれば、普通の学校生活を送れていたのではないか?
「いや、そんなのはあり得ないか……
ーーーだが、こんな学園生活は間違えた代償にしては余りにも酷すぎるだろ!」
俺の胸に、屈辱に対する怒りが灯る。
水を掛けられたか、そしてそのことを蔑まれて笑われた時、そして
ー無能が、
「っ!」
相楽の言葉が頭に蘇る。
そしてさらに俺が魔術師でないと知った瞬間、保健室から追い出した養護教諭のことも思い出す。
さらに男性教諭に、食堂を追い出した職員に、そして俺を見下すように笑ってその様子を見つめていたこの学院の生徒。
「巫山戯るな!」
その全てに怒りが、自分の実力を見せられず馬鹿にされる悔しさが、そいつらを見返してやりたい自己顕示欲が頭を支配する。
実際、クラスメイト達と戦えば俺はあっさりと倒せるだろう。
それだけの実力を俺は持っている。
俺の頭の中に俺の実力を見て、驚き謝るクラスメイトの姿が浮かぶ。
「クソが……」
ーーーだがそれは全て妄想でしかなかった。
こんな組織で俺の能力を見せれるわけがない。
佐藤さんの目の前で悪魔というあの生物を殺したことでさえ、一歩間違えればこの学院に目をつけられていたかも知れないのだ。
そしてもうその危険は犯さない。
「行くか……」
俺はそう判断して、教室を後にする。
だが、俺の唇は屈辱で噛み締められていた。
「直ぐにここを後にできる」
そして、必死に感情を抑えようとつぶやいていた俺は気づくことはなかった。
「………」
ーーー俺が出て行った後の教室に、何処からともなく少女が姿を現したことを。
顔に悲壮な表情を浮かべ、俺がいた場所を見つめる少女が。
俺は出来る限りクラスメイトや、他の生徒に会わないよう人気の少ない場所を選んで職員室へと向かう。
「広すぎるだろ……」
そして案の定、迷った。
ついでにもう一度念押ししておくが、本当に俺は決して方向音痴ではない。
この学院がそれだけ広すぎるのだ。
「地図持ってきたらよかったか……」
俺は転校前制服とともに渡された地図を一度迷いながら持って来ようとしなかった自分の判断を悔やみつつ、それでも足を止めることなく職員室を探す。
「あ……」
そしてちょうどその途中で佐藤さんの姿を見つけた……
「まじか……」
まさかばったりと会うことになるとは思っておらず、俺は一瞬驚きで固まる。
だが直ぐに我に返って声をかけた。
「佐藤さん!」
「あ、はい」
急に声をかけられたことに佐藤さんは驚き、
「あ、なんだ東くんか……」
そして俺を見て、安堵の息を漏らす。
「誰か先生に呼ばれてるのかと思ったじゃない……」
佐藤さんはそう下を向いて何かをぶつぶつと漏らして、そのあと俺の方へと頬を膨らませながら振り向く。
「だから命の恩人であることには感謝しているけど、ちゃんとここでは先生って、」
「少しいいですか?」
そして何かを言い始めたが、俺は無視する。
退学の件について俺は人目のない部屋で話そうと、佐藤さんを引っ張りその場を後にする。
「ちょっと、急に……っ!どおしたのその格好!」
その時、佐藤さんはやっと俺の状態に気づいた。
制服は濡れて、そして丈夫なはずの制服が所々破れ焦げている。
それは明らかに異常事態で、そのことを悟った佐藤さんの顔が真剣なものへと変わる。
「後で話します」
「え?」
だが、俺はそれでも無視した。
正直まだ他の人に俺が魔術師でないことを知られるのはいい。
魔術を使わずに悪魔を殺した、なんてことを聞かれるのはごめんだが、それについては当日にきちんと口止めしているから佐藤さんもここでは話さないだろう。
「急がないと……」
だが、俺にはどうしても佐藤さんとは2人きりで話をつけたかった。
2人きりでなくなる、そんな状態は絶対に避けなければならない。
「待って、私は待ち合わせをしていて……」
「すいません。後にしてください」
「えぇ!で、出来るわけ無いでしょ!」
だから俺は佐藤さんの言葉を無視してさらに足を急がせる。
この学院は正直俺から見れば誰もかれもが信頼できない。
そして別に佐藤さんを信頼しているわけでない。
ーーーだが、多分彼女ならどうにでもなる。
俺はそう判断していた。
そして、絶対に手強い人間もこの学院にはいることを俺は知っている。
ー 急げ!
だから俺は早足で廊下の角を曲がろうとして、そして目の前に現れた人物に言葉を失う。
「なっ!」
「あら、私の方が先約なんだけど?」
ーーーそこにいたのは退学の話をする上で絶対に避けたかった人物、理事長だった。
全員が実習室に魔術の訓練に行っているのだろう。
「子供かよ」
ーーーそしてただ1人教室に残っている俺は、傷をつけられた自分の机の前でそうポツリと漏らした。
そしてボロボロなのは机だけではない。
俺の制服、防刃性能を備えたこの学校の制服はある程度乾いてきたとはいえ、まだ濡れていて、さらに所々焦げてさえもいる。
朝の相楽の一言でクラスメイト達の態度は変わり、そして午後からの実習の事業で悪化した。
相楽が、訓練だと称して俺に放った魔法。
そしてその瞬間から、俺はこの場所で人間ですらなくなった。
精々、こちらを見下す程度だったクラスメイトからの視線は、もはや俺を人として、いや生物としてさえ認識していなかった。
「分かっていた、のにな」
ーーーそしてそうなることを俺は知っていた。
強大な力を持つ組織はその力ゆえに歪む。
それが彼らの組織の特徴。
そして俺はそうなった組織の恐ろしさを身を以て味わっているのだ。
そして、この学院がそんな組織だと示すような出来事は何度も俺の目の前で起こっていた。
洗脳に近い教育に、生徒を崇高しているこの学院の職員。
ここには人権など存在しない。
強大な力を手にし、壊れ歪んだ組織。
ここがその場所だと俺は分かっていた。
「知っていたのに……」
ーーーだが、希望を持ってしまった。
昨日の時点から、クラスメイトの俺を見る視線はかなりおかしかった。
そしてそのことを俺ははっきりと分かっていた。
なのに昨日の時点で退学を選ばなかったのは、
ただの未練か、
それともタイミング良くかかってきた社長の留守電に運命でも感じたからか、
両方なのか。
「今からでも遅くない」
だが、そんなこと俺には関係なかった。
もう、俺の目の前に残された選択肢はここを立ち去る、それだけなのだから。
「畜生……」
ーーー早くそうしないと、俺は身体を蝕むこの激情に身を任せてしまいそうなのだから。
俺の胸の中では様々な思いが交錯していた。
知っていた。自分がそんなに人付き合いが上手い方ではないことぐらい。
だから最初を失敗して、それでもクラスメイトたちに快く受け入れられた時に、おかしいと気付くべきだったのかもしれない。
確かに俺はただ、良かった、受け入れてくれた、そんなことしか考えずに間抜けな顔をして笑っていることしかしていなかった。
もしもその時、気づいて行動していれば、いや、最初佐藤さんを救った時にちゃんと俺は魔術など使えないそう言っていれば、普通の学校生活を送れていたのではないか?
「いや、そんなのはあり得ないか……
ーーーだが、こんな学園生活は間違えた代償にしては余りにも酷すぎるだろ!」
俺の胸に、屈辱に対する怒りが灯る。
水を掛けられたか、そしてそのことを蔑まれて笑われた時、そして
ー無能が、
「っ!」
相楽の言葉が頭に蘇る。
そしてさらに俺が魔術師でないと知った瞬間、保健室から追い出した養護教諭のことも思い出す。
さらに男性教諭に、食堂を追い出した職員に、そして俺を見下すように笑ってその様子を見つめていたこの学院の生徒。
「巫山戯るな!」
その全てに怒りが、自分の実力を見せられず馬鹿にされる悔しさが、そいつらを見返してやりたい自己顕示欲が頭を支配する。
実際、クラスメイト達と戦えば俺はあっさりと倒せるだろう。
それだけの実力を俺は持っている。
俺の頭の中に俺の実力を見て、驚き謝るクラスメイトの姿が浮かぶ。
「クソが……」
ーーーだがそれは全て妄想でしかなかった。
こんな組織で俺の能力を見せれるわけがない。
佐藤さんの目の前で悪魔というあの生物を殺したことでさえ、一歩間違えればこの学院に目をつけられていたかも知れないのだ。
そしてもうその危険は犯さない。
「行くか……」
俺はそう判断して、教室を後にする。
だが、俺の唇は屈辱で噛み締められていた。
「直ぐにここを後にできる」
そして、必死に感情を抑えようとつぶやいていた俺は気づくことはなかった。
「………」
ーーー俺が出て行った後の教室に、何処からともなく少女が姿を現したことを。
顔に悲壮な表情を浮かべ、俺がいた場所を見つめる少女が。
俺は出来る限りクラスメイトや、他の生徒に会わないよう人気の少ない場所を選んで職員室へと向かう。
「広すぎるだろ……」
そして案の定、迷った。
ついでにもう一度念押ししておくが、本当に俺は決して方向音痴ではない。
この学院がそれだけ広すぎるのだ。
「地図持ってきたらよかったか……」
俺は転校前制服とともに渡された地図を一度迷いながら持って来ようとしなかった自分の判断を悔やみつつ、それでも足を止めることなく職員室を探す。
「あ……」
そしてちょうどその途中で佐藤さんの姿を見つけた……
「まじか……」
まさかばったりと会うことになるとは思っておらず、俺は一瞬驚きで固まる。
だが直ぐに我に返って声をかけた。
「佐藤さん!」
「あ、はい」
急に声をかけられたことに佐藤さんは驚き、
「あ、なんだ東くんか……」
そして俺を見て、安堵の息を漏らす。
「誰か先生に呼ばれてるのかと思ったじゃない……」
佐藤さんはそう下を向いて何かをぶつぶつと漏らして、そのあと俺の方へと頬を膨らませながら振り向く。
「だから命の恩人であることには感謝しているけど、ちゃんとここでは先生って、」
「少しいいですか?」
そして何かを言い始めたが、俺は無視する。
退学の件について俺は人目のない部屋で話そうと、佐藤さんを引っ張りその場を後にする。
「ちょっと、急に……っ!どおしたのその格好!」
その時、佐藤さんはやっと俺の状態に気づいた。
制服は濡れて、そして丈夫なはずの制服が所々破れ焦げている。
それは明らかに異常事態で、そのことを悟った佐藤さんの顔が真剣なものへと変わる。
「後で話します」
「え?」
だが、俺はそれでも無視した。
正直まだ他の人に俺が魔術師でないことを知られるのはいい。
魔術を使わずに悪魔を殺した、なんてことを聞かれるのはごめんだが、それについては当日にきちんと口止めしているから佐藤さんもここでは話さないだろう。
「急がないと……」
だが、俺にはどうしても佐藤さんとは2人きりで話をつけたかった。
2人きりでなくなる、そんな状態は絶対に避けなければならない。
「待って、私は待ち合わせをしていて……」
「すいません。後にしてください」
「えぇ!で、出来るわけ無いでしょ!」
だから俺は佐藤さんの言葉を無視してさらに足を急がせる。
この学院は正直俺から見れば誰もかれもが信頼できない。
そして別に佐藤さんを信頼しているわけでない。
ーーーだが、多分彼女ならどうにでもなる。
俺はそう判断していた。
そして、絶対に手強い人間もこの学院にはいることを俺は知っている。
ー 急げ!
だから俺は早足で廊下の角を曲がろうとして、そして目の前に現れた人物に言葉を失う。
「なっ!」
「あら、私の方が先約なんだけど?」
ーーーそこにいたのは退学の話をする上で絶対に避けたかった人物、理事長だった。
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