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12.騎士団長
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王の突然の任命に私とメルは一切何が起こったのか分からず戸惑う。
しかしそんな私達の様子など関係なく、
「騎士団長直々のご要請だ。アンネ・ハートフル、お主を副騎士団長に任命する」
その王の一言で私は騎士となった。
「アンネ、あの時誰かの気配を感じました?」
「ううん、私は感じなかった。メルは?」
「アンネが分からないことなら、今の私では不可能ですよ……」
私が副騎士団長に任命されてから数分後、私達は先程私達を王のもとまで案内してくれた衛兵に連れられて騎士団長のもとへと向かっていた。
そしてその移動中私達は前の衛兵に聞こえないよう声を潜めて話し合っていた。
私は決してあの冒険者らしき男に襲われた、とは言っていたが、あの冒険者を私が撃退しましたとは言っていない。
さらに私の思惑通り、あの時駆けつけてきてくれた衛兵たちも自分たちが駆けつけたから冒険者は逃げていったのだと勘違いしていたはずだ。
なのに、何故か私があの冒険者と勝負し、そして勝ったことを何故か広まっていた。
だが、私がメルを人質に取られ、そしてその際で行うことになった決闘に関しては一切触れられていないのだ。
ーーーつまり、誰かが意図的に私に関する情報を歪めて流している。
確かにエリスが私をはめようとした、それは無駄な騒ぎを起こすだけで得をする者はいない。
しかし、だからと言って歪めるようなことは普通しない。
何故ならば、歪めると言うことは知られれば罰則を受けなければならないようになっているからだ。
もちろん一部例外はある。
例えば、賄賂で帳消しにすること。
しかし、普通他人の名誉の為に態々そんな手間をかける人間はいない。
だとすればもう一つの可能性、つまり、権力者が意図的に情報を改竄したと言うことになる。
そしてそれは1番厄介なパターンだった。
何故ならば、相当な実力者で権力を持つ人間。
ーーーそれは英雄である可能性が高いのだ。
「それは、正直厄介……」
「はい」
私は思わずその可能性を考え、独り言を漏らす。
すると、私と同じように考えていたのかメルは頷いた。
これで私達はこれからの行動をさらに慎重に進めなくてはならなくなる。
いや、慎重に進めたとしてももう殆ど意味は無くなっているかもしれないのだが。
「だが、まだ英雄と確証が上がったわけではない」
そこで私はポツリと漏らした。
それは酷く可能性の少ない過程。
何方かと言えば現実逃避と言うべきもの。
だが、どちらにせよ私達は誰が私の実力を知ったのか見極める必要がある。
「まぁ、アンネを副騎士団長にと懇願した騎士団長に直接聞き出すしか無いですかね」
私の考えを見越したようにメルが呟く。
「うん、それしか無い」
そして私はメルの言葉に頷いてそう答えた。
その時、衛兵が立ち止まった。
「着きましたよ」
私達はその衛兵の言葉に一度話を中断して顔を上げる。
するとそこにはどっしりとした大きな扉の部屋が佇んでいた。
「失礼します」
衛兵は私達が顔を上げたのを確かめると、そう声をかけて扉を開ける。
「っ!」
その時になって、私達はようやくあることに気づく。
確かに私は相当に強い。
そしてその私達に気付かれない人間は相当の手練れだろう。
それもメルのいう英雄のような。
だから私達は無意識に私のことを副騎士団長に押した騎士団長は私達を見張っていた人間でないと除外していた。
「やぁ、遅かったね」
ーーーつまり、騎士団長がその英雄と同じだけの実力を持つことを私達は失念していたのだ。
そしてそのことを明らかに異常な気配を放つ目の前の子供を見て私達は後悔し始めていた。
しかしそんな私達の様子など関係なく、
「騎士団長直々のご要請だ。アンネ・ハートフル、お主を副騎士団長に任命する」
その王の一言で私は騎士となった。
「アンネ、あの時誰かの気配を感じました?」
「ううん、私は感じなかった。メルは?」
「アンネが分からないことなら、今の私では不可能ですよ……」
私が副騎士団長に任命されてから数分後、私達は先程私達を王のもとまで案内してくれた衛兵に連れられて騎士団長のもとへと向かっていた。
そしてその移動中私達は前の衛兵に聞こえないよう声を潜めて話し合っていた。
私は決してあの冒険者らしき男に襲われた、とは言っていたが、あの冒険者を私が撃退しましたとは言っていない。
さらに私の思惑通り、あの時駆けつけてきてくれた衛兵たちも自分たちが駆けつけたから冒険者は逃げていったのだと勘違いしていたはずだ。
なのに、何故か私があの冒険者と勝負し、そして勝ったことを何故か広まっていた。
だが、私がメルを人質に取られ、そしてその際で行うことになった決闘に関しては一切触れられていないのだ。
ーーーつまり、誰かが意図的に私に関する情報を歪めて流している。
確かにエリスが私をはめようとした、それは無駄な騒ぎを起こすだけで得をする者はいない。
しかし、だからと言って歪めるようなことは普通しない。
何故ならば、歪めると言うことは知られれば罰則を受けなければならないようになっているからだ。
もちろん一部例外はある。
例えば、賄賂で帳消しにすること。
しかし、普通他人の名誉の為に態々そんな手間をかける人間はいない。
だとすればもう一つの可能性、つまり、権力者が意図的に情報を改竄したと言うことになる。
そしてそれは1番厄介なパターンだった。
何故ならば、相当な実力者で権力を持つ人間。
ーーーそれは英雄である可能性が高いのだ。
「それは、正直厄介……」
「はい」
私は思わずその可能性を考え、独り言を漏らす。
すると、私と同じように考えていたのかメルは頷いた。
これで私達はこれからの行動をさらに慎重に進めなくてはならなくなる。
いや、慎重に進めたとしてももう殆ど意味は無くなっているかもしれないのだが。
「だが、まだ英雄と確証が上がったわけではない」
そこで私はポツリと漏らした。
それは酷く可能性の少ない過程。
何方かと言えば現実逃避と言うべきもの。
だが、どちらにせよ私達は誰が私の実力を知ったのか見極める必要がある。
「まぁ、アンネを副騎士団長にと懇願した騎士団長に直接聞き出すしか無いですかね」
私の考えを見越したようにメルが呟く。
「うん、それしか無い」
そして私はメルの言葉に頷いてそう答えた。
その時、衛兵が立ち止まった。
「着きましたよ」
私達はその衛兵の言葉に一度話を中断して顔を上げる。
するとそこにはどっしりとした大きな扉の部屋が佇んでいた。
「失礼します」
衛兵は私達が顔を上げたのを確かめると、そう声をかけて扉を開ける。
「っ!」
その時になって、私達はようやくあることに気づく。
確かに私は相当に強い。
そしてその私達に気付かれない人間は相当の手練れだろう。
それもメルのいう英雄のような。
だから私達は無意識に私のことを副騎士団長に押した騎士団長は私達を見張っていた人間でないと除外していた。
「やぁ、遅かったね」
ーーーつまり、騎士団長がその英雄と同じだけの実力を持つことを私達は失念していたのだ。
そしてそのことを明らかに異常な気配を放つ目の前の子供を見て私達は後悔し始めていた。
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