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4.激怒
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部屋を出てから、私とメルは宮中のあらゆる所を巡った。
そしてそれは酷く楽しい時間だった。
今まで憂鬱な思い出しかなかった様々な場所。
しかし、メルと一緒に歩いているというそれだけのことでどんな場所でも自然に笑うことが出来た。
「あれ?こんなにも変わっているんですか!」
メルのことに関してはあまり私もよくは知らない。
そもそもメルと呼んでくれた言われただけで、メルの本名さえも知らないのだ。
だが、メルは王宮に来たことがあったらしく、事あるごとにそう騒いでいた。
ただ、王宮が修理されたのは10年前で、それもそこまで大幅なものではなかったはずで、メルの反応は余りにも大袈裟に感じたが、私は直ぐにそんなことなんか忘れてメルと騒ぎあった。
途中、見慣れない子供がいることに気づいた衛兵が現れた。
少々焦ったものの、何とか弟と私が必死で言い募ると納得してくれた。
そして問題と呼べるような物が起こったのはそれだけで、私達は楽しく過ごしていた。
「あれ?」
ーーー今までは。
それはほんの少しの間だった。
私が用を足すために、メルと離れたほんの少しの時間。
それは時間にして、五分も立っていない程度。
だが、私がお手洗いから出てくると、扉の前で待っていてくれたはずのメルの姿は消えていた。
「用事でもあったのかな?」
私はそう、極めてなんでもないように呟く。
だが何故か酷く嫌な予感がして、私は落ち着かなくなる。
「えっと、」
「へ?」
そしてその時だった。
突然肩を叩かれた私が振り返ると其処には何処か気まずげな顔をした、先刻メルのことを弟だと申告した衛兵さんが立っていた。
私は急に肩を叩かれたことに驚くが、取り敢えずメルが何処にいるのか見ていないか聞こうとして、
「これを……」
「え、はい」
そう、衛兵さんに折りたたまれた紙を渡された。
私は全く心当たりのないその紙に疑問を持ちながら、開く。
ー 第三鍛錬場で待つ。
すると、そこに書かれていたのはそんな酷く簡潔な文だった。
私はその文の意味がわからず戸惑う。
「これを渡せと、エリス様が……」
「っ!」
ーーーだが、衛兵の次の言葉に私は絶句した。
突然姿を消したメル。
そしてエリスから送られてきたこの謎の手紙。
その二つが私の頭の中で繋がり、私は最悪の可能性に気づく。
「メルっ!」
次の瞬間私は走り出していた。
ー 第三鍛錬場。
それは四つある王宮の鍛錬城のうち一つ。
だが、他の鍛錬場が連日騎士や、衛兵で賑わうのに対し、第三鍛錬場はとある事件によりボロボロになっており今は殆ど使う者はいない。
そして何故私がエリスにそんな場所に呼び出されたのかは分からない。
だが、私はそこにメルが居るという予感がして走る。
何故そう思ったのか、私にも分からない曖昧な予感。
「ぅぁっ、」
「メル!」
ーーーしかし、その予感は的中した。
第三鍛錬場の真ん中で、端正な顔は痛みで歪み、彼方此方に血が滲んだ状態でメルは縛られていた。
私がメルと別れてから10分も経ったかどうか。
だが、その間にメルはぼろぼろな姿へと変わっていた。
「あら、早かったわね」
そして私を呼んだ張本人のエリスは、その直ぐ後ろ、大柄な男を従えた状態で立っていた。
「すいません……アンネ」
メルは傷だらけの顔を上げて、そう顔を歪めて謝る。
「どう、して……」
そしてその傷だらけのメルの姿に私は思わずそう口走っていた。
少し前までの酷く心踊った王宮の散策の記憶はまだ頭の中に色濃く残っている。
だからこそ、私は目の前のメルが傷ついた状態が理解できなかった。
「どうして、ですかって?物分かりの悪い愚か者の台詞ね!」
エリスは私の言葉を自分への言葉だと勘違いしたのか、そう口を開いた。
「貴女は分かっているの?私はもう少しで彼の方の愛人としてさえ居られなくなってしまうところだったのよ!貴女が、森の中なんかで迷うせいで!」
エリスは苛立ちを紛らわす為に、自慢の金髪の毛先を指で弄る。
しかし直ぐに辞めて、私を苛立ちのこもった視線で睨む。
エリスの災難は正当性も何もない自業自得、そうとしか言えないものだった。
そして、私に対するエリスの怒りは逆恨み以外の何物でもない。
だが、それはいつものことだった。
この逆恨みなど比にならない理不尽で今までどれだけ虐められてきたことか。
「っ!」
ーーーだが、今回あっさりと私は怒りを爆発させた。
今までもこれよりも酷いことがあった。
出来る限り実力を隠さなければならない。
私はそう自分を抑えようと試みる。
しかし、私の怒りは全く抑えることができなかった。
今まで感じたことがない怒り。
それがメルを傷つけられたことにより、私の胸の内で暴れ狂っていた。
「何を、お望みですか?」
ーーー全てを潰してやる。
私は全く感情の浮かばない笑みで、エリスへと笑いかけた……
そしてそれは酷く楽しい時間だった。
今まで憂鬱な思い出しかなかった様々な場所。
しかし、メルと一緒に歩いているというそれだけのことでどんな場所でも自然に笑うことが出来た。
「あれ?こんなにも変わっているんですか!」
メルのことに関してはあまり私もよくは知らない。
そもそもメルと呼んでくれた言われただけで、メルの本名さえも知らないのだ。
だが、メルは王宮に来たことがあったらしく、事あるごとにそう騒いでいた。
ただ、王宮が修理されたのは10年前で、それもそこまで大幅なものではなかったはずで、メルの反応は余りにも大袈裟に感じたが、私は直ぐにそんなことなんか忘れてメルと騒ぎあった。
途中、見慣れない子供がいることに気づいた衛兵が現れた。
少々焦ったものの、何とか弟と私が必死で言い募ると納得してくれた。
そして問題と呼べるような物が起こったのはそれだけで、私達は楽しく過ごしていた。
「あれ?」
ーーー今までは。
それはほんの少しの間だった。
私が用を足すために、メルと離れたほんの少しの時間。
それは時間にして、五分も立っていない程度。
だが、私がお手洗いから出てくると、扉の前で待っていてくれたはずのメルの姿は消えていた。
「用事でもあったのかな?」
私はそう、極めてなんでもないように呟く。
だが何故か酷く嫌な予感がして、私は落ち着かなくなる。
「えっと、」
「へ?」
そしてその時だった。
突然肩を叩かれた私が振り返ると其処には何処か気まずげな顔をした、先刻メルのことを弟だと申告した衛兵さんが立っていた。
私は急に肩を叩かれたことに驚くが、取り敢えずメルが何処にいるのか見ていないか聞こうとして、
「これを……」
「え、はい」
そう、衛兵さんに折りたたまれた紙を渡された。
私は全く心当たりのないその紙に疑問を持ちながら、開く。
ー 第三鍛錬場で待つ。
すると、そこに書かれていたのはそんな酷く簡潔な文だった。
私はその文の意味がわからず戸惑う。
「これを渡せと、エリス様が……」
「っ!」
ーーーだが、衛兵の次の言葉に私は絶句した。
突然姿を消したメル。
そしてエリスから送られてきたこの謎の手紙。
その二つが私の頭の中で繋がり、私は最悪の可能性に気づく。
「メルっ!」
次の瞬間私は走り出していた。
ー 第三鍛錬場。
それは四つある王宮の鍛錬城のうち一つ。
だが、他の鍛錬場が連日騎士や、衛兵で賑わうのに対し、第三鍛錬場はとある事件によりボロボロになっており今は殆ど使う者はいない。
そして何故私がエリスにそんな場所に呼び出されたのかは分からない。
だが、私はそこにメルが居るという予感がして走る。
何故そう思ったのか、私にも分からない曖昧な予感。
「ぅぁっ、」
「メル!」
ーーーしかし、その予感は的中した。
第三鍛錬場の真ん中で、端正な顔は痛みで歪み、彼方此方に血が滲んだ状態でメルは縛られていた。
私がメルと別れてから10分も経ったかどうか。
だが、その間にメルはぼろぼろな姿へと変わっていた。
「あら、早かったわね」
そして私を呼んだ張本人のエリスは、その直ぐ後ろ、大柄な男を従えた状態で立っていた。
「すいません……アンネ」
メルは傷だらけの顔を上げて、そう顔を歪めて謝る。
「どう、して……」
そしてその傷だらけのメルの姿に私は思わずそう口走っていた。
少し前までの酷く心踊った王宮の散策の記憶はまだ頭の中に色濃く残っている。
だからこそ、私は目の前のメルが傷ついた状態が理解できなかった。
「どうして、ですかって?物分かりの悪い愚か者の台詞ね!」
エリスは私の言葉を自分への言葉だと勘違いしたのか、そう口を開いた。
「貴女は分かっているの?私はもう少しで彼の方の愛人としてさえ居られなくなってしまうところだったのよ!貴女が、森の中なんかで迷うせいで!」
エリスは苛立ちを紛らわす為に、自慢の金髪の毛先を指で弄る。
しかし直ぐに辞めて、私を苛立ちのこもった視線で睨む。
エリスの災難は正当性も何もない自業自得、そうとしか言えないものだった。
そして、私に対するエリスの怒りは逆恨み以外の何物でもない。
だが、それはいつものことだった。
この逆恨みなど比にならない理不尽で今までどれだけ虐められてきたことか。
「っ!」
ーーーだが、今回あっさりと私は怒りを爆発させた。
今までもこれよりも酷いことがあった。
出来る限り実力を隠さなければならない。
私はそう自分を抑えようと試みる。
しかし、私の怒りは全く抑えることができなかった。
今まで感じたことがない怒り。
それがメルを傷つけられたことにより、私の胸の内で暴れ狂っていた。
「何を、お望みですか?」
ーーー全てを潰してやる。
私は全く感情の浮かばない笑みで、エリスへと笑いかけた……
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