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翌日、私達は馬車に乗り、バーベスト家を後にした。
やるべきことを終わらせた今、バーベスト家に残る意味が無く、私とマーレイアは早めにバーベスト家を去ることにしたのだ。
「……マーレイア、今からでもバーベスト家に戻れないかしら」
「無理です」
……けれども、マストーリ家が近づいてくるにつれて、私はどんどん弱気になりつつあった。
「……帰りたくないわ」
マーレイアが自分のことを、呆れた目で見つめてくるのが分かりつつもそう愚痴るのをやめられない。
愚痴る私の頭の中にあるのは、義兄の存在だった。
別に義兄が嫌いなわけでは無く、それどころか尊敬している。
けれども、バーベスト家に嫁ぐ前のとある一件で、私は帰ることに躊躇いを覚えていた。
……実は私は、バーベスト家に嫁ぐ嫁がないで、前日まで義兄と大喧嘩していたのだ。
バーベスト家の魔導金属、それは今からマストーリ家が営もうとしている事業には、必要不可欠なものだった。
だからこそ、私は個人的なツテでバーベスト家に接触し、婚約を取り付けたのだが、その直前で義兄にばれ、大喧嘩になってしまったのだ。
バーベスト家に嫁いでも、どうせ家に帰されるのがオチだと言われ、私もついカッとしてしまったのだ。
「うう……」
挙げ句の果てに、もう家には戻らないと吐き捨ててバーベスト家に嫁いで行った癖にこうして戻ってきている現状、馬車の中にいる時点から気まずさが抑えきれず、私は思わず呻き声をあげる。
「……無駄な意地を張るから」
「うぐっ!」
そんな私を見て、マーレイアが主人に口にするのはやや辛辣な言葉を吐くが、それが正論だけに私は文句を言うこともできない。
出来ればこのまま逃げ出したいところだが、もちろんそんな手段を取ることはできず、私は覚悟を決めることにした。
「……お兄様の仕事を手伝うことで、どうにか水に流して貰いましょう」
幸いなことに、私は魔導金属の鉱山の権利と、有能な商人との伝手という戦利品を持って帰ってくる。
それでどうにか機嫌を取るしかない。
そんな風に覚悟を決める私を他所に、馬車はマストーリ家領内に到着したのだった………
やるべきことを終わらせた今、バーベスト家に残る意味が無く、私とマーレイアは早めにバーベスト家を去ることにしたのだ。
「……マーレイア、今からでもバーベスト家に戻れないかしら」
「無理です」
……けれども、マストーリ家が近づいてくるにつれて、私はどんどん弱気になりつつあった。
「……帰りたくないわ」
マーレイアが自分のことを、呆れた目で見つめてくるのが分かりつつもそう愚痴るのをやめられない。
愚痴る私の頭の中にあるのは、義兄の存在だった。
別に義兄が嫌いなわけでは無く、それどころか尊敬している。
けれども、バーベスト家に嫁ぐ前のとある一件で、私は帰ることに躊躇いを覚えていた。
……実は私は、バーベスト家に嫁ぐ嫁がないで、前日まで義兄と大喧嘩していたのだ。
バーベスト家の魔導金属、それは今からマストーリ家が営もうとしている事業には、必要不可欠なものだった。
だからこそ、私は個人的なツテでバーベスト家に接触し、婚約を取り付けたのだが、その直前で義兄にばれ、大喧嘩になってしまったのだ。
バーベスト家に嫁いでも、どうせ家に帰されるのがオチだと言われ、私もついカッとしてしまったのだ。
「うう……」
挙げ句の果てに、もう家には戻らないと吐き捨ててバーベスト家に嫁いで行った癖にこうして戻ってきている現状、馬車の中にいる時点から気まずさが抑えきれず、私は思わず呻き声をあげる。
「……無駄な意地を張るから」
「うぐっ!」
そんな私を見て、マーレイアが主人に口にするのはやや辛辣な言葉を吐くが、それが正論だけに私は文句を言うこともできない。
出来ればこのまま逃げ出したいところだが、もちろんそんな手段を取ることはできず、私は覚悟を決めることにした。
「……お兄様の仕事を手伝うことで、どうにか水に流して貰いましょう」
幸いなことに、私は魔導金属の鉱山の権利と、有能な商人との伝手という戦利品を持って帰ってくる。
それでどうにか機嫌を取るしかない。
そんな風に覚悟を決める私を他所に、馬車はマストーリ家領内に到着したのだった………
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