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「ああ、もういい!あんたみたいな馬鹿な女なんかにはもう頼らない!」
振り返った私の目に入ったのは、うずくまるマーレイアと喚き声を上げる男爵令嬢の姿だった。
壁には大きな傷があり、それを見てようやく私は今の事態を理解する。
……男爵令嬢がマーレイアに向けて魔法を放ったのだと。
「誰が無礼よ!貴族である私に文句を言ってくるあんたの方が無礼でしょうが!本当にイライラする!」
そう苛立たしげに言葉を重ねる男爵令嬢の手には球体が赤い光を放っていた。
どうやら男爵令嬢は、魔術師だったらしい。
それも、私のような少しの魔術を使える程度の人間ではなく、かなりの才能がある。
「ふぅ」
だが、そんな男爵令嬢の魔法を受けたにもかかわらず、マーレイアは腕に軽傷しか負っていなかった。
しかもマーレイアは何故か満足げな笑みを浮かべていて、それに私は彼女の思惑に気づく。
男爵令嬢は気づいていないようだが、マーレイアは侯爵家の侍女だけあり、伯爵家の人間だ。
つまり、自身よりも身分の高い人間に対して男爵令嬢は魔法を放ったことになる。
その上、これだけの騒ぎを起こしているのだ。
彼女の実家である男爵家は、娘が起こした不祥事を償うために、謹慎か最悪修道院にでも送るはずだ。
どうやら、男爵令嬢が自身と同じ魔術師であることに気づいたマーレイアは、それを利用して男爵令嬢をこの場から排除しようと考えているらしい。
騒ぎを起こした男爵令嬢に対する仕返しの意味も込めて。
あとは人を呼びさえすれば、男爵令嬢はこの場から引き取られていくだろう。
「ここは私が知らないだけで、乙女ゲーの世界なんでしょ!魔法使いの選ばれた私がチヤホヤされる世界なんでしょ!だったら、素直に言うこと聞きなさいよ!」
そう判断したらしいマーレイアは、男爵令嬢が何事か意味のわからないことを叫ぶのを無視し、口を開こうとする。
「そんなに私が信用できないのなら、魔法契約でも交わしましょうか?」
「っ!」
── だが、そのマーレイアを私は制した。
その瞬間、マーレイアが動揺を顔に浮かべ、こちらに咎めるような目を向ける。
このままで全て終わっていたと言うのに、とそう言いたげな。
だが、残念ながらそれを目にしても最早私には止まる気は無かった。
先ほどの魔法、それはおそらくマーレイアが意図的に食らったものだろう。
それでも、男爵令嬢が死ぬ可能性がある攻撃をマーレイアに行ったという事実は消えない。
「へえ、それ魔法の契約書?」
私は怒りを押し隠し、こちらへと興味を向けた男爵令嬢へと笑いかける。
マーレイアを傷つけようとしたことに対する報い、それを修道院行きや、謹慎だけで終わらはしない。
振り返った私の目に入ったのは、うずくまるマーレイアと喚き声を上げる男爵令嬢の姿だった。
壁には大きな傷があり、それを見てようやく私は今の事態を理解する。
……男爵令嬢がマーレイアに向けて魔法を放ったのだと。
「誰が無礼よ!貴族である私に文句を言ってくるあんたの方が無礼でしょうが!本当にイライラする!」
そう苛立たしげに言葉を重ねる男爵令嬢の手には球体が赤い光を放っていた。
どうやら男爵令嬢は、魔術師だったらしい。
それも、私のような少しの魔術を使える程度の人間ではなく、かなりの才能がある。
「ふぅ」
だが、そんな男爵令嬢の魔法を受けたにもかかわらず、マーレイアは腕に軽傷しか負っていなかった。
しかもマーレイアは何故か満足げな笑みを浮かべていて、それに私は彼女の思惑に気づく。
男爵令嬢は気づいていないようだが、マーレイアは侯爵家の侍女だけあり、伯爵家の人間だ。
つまり、自身よりも身分の高い人間に対して男爵令嬢は魔法を放ったことになる。
その上、これだけの騒ぎを起こしているのだ。
彼女の実家である男爵家は、娘が起こした不祥事を償うために、謹慎か最悪修道院にでも送るはずだ。
どうやら、男爵令嬢が自身と同じ魔術師であることに気づいたマーレイアは、それを利用して男爵令嬢をこの場から排除しようと考えているらしい。
騒ぎを起こした男爵令嬢に対する仕返しの意味も込めて。
あとは人を呼びさえすれば、男爵令嬢はこの場から引き取られていくだろう。
「ここは私が知らないだけで、乙女ゲーの世界なんでしょ!魔法使いの選ばれた私がチヤホヤされる世界なんでしょ!だったら、素直に言うこと聞きなさいよ!」
そう判断したらしいマーレイアは、男爵令嬢が何事か意味のわからないことを叫ぶのを無視し、口を開こうとする。
「そんなに私が信用できないのなら、魔法契約でも交わしましょうか?」
「っ!」
── だが、そのマーレイアを私は制した。
その瞬間、マーレイアが動揺を顔に浮かべ、こちらに咎めるような目を向ける。
このままで全て終わっていたと言うのに、とそう言いたげな。
だが、残念ながらそれを目にしても最早私には止まる気は無かった。
先ほどの魔法、それはおそらくマーレイアが意図的に食らったものだろう。
それでも、男爵令嬢が死ぬ可能性がある攻撃をマーレイアに行ったという事実は消えない。
「へえ、それ魔法の契約書?」
私は怒りを押し隠し、こちらへと興味を向けた男爵令嬢へと笑いかける。
マーレイアを傷つけようとしたことに対する報い、それを修道院行きや、謹慎だけで終わらはしない。
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