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 「嘘……」

 私の返答にたいし、男爵令嬢は少しの間動揺を隠せなかった。
 だが、その男爵令嬢の反応に、私は動揺を隠せなかった。

 確かに以前までは、マークは顔もよくかなり裕福な伯爵家跡取りだった。
 だが今や評判は最悪で、没落する未来も見えている。
 さらに自分をはめようとしてきた相手に対して、好意を抱けるわけがない。

 「いえ、これは私をはめようとする罠に違いないわ!もうマーク様を狙うきがないなら、直ぐに侯爵領に帰って見せて!」

 ……しかしどうやら、男爵令嬢の頭の中では私がマークを狙っていると思い込んでいるらしい。
 いや、その摩訶不思議な思考回路、それを一億歩譲って許すとしても、何故私が今から領地に変えるのを知らないのか。
 普通、私の部屋に来る前に誰かから教えてもらうと思うが。

 「見てわかりません?近日中に私は実家に戻りますわ」

 「そんな嘘で……あれ?」

 私の言葉でようやく男爵令嬢は私が今何をしているかに気づき、驚きの声をあげた。

 「嘘、本当にこの女マーク様にすり寄るつもりがないの……」

 「はあ……」

 その反応に、最早私は呆れを隠すことができない。
 本当にこの令嬢は何がしたいのだろうか。
 ただ、これでようやく彼女の勘違いも解けただろうと、マーレイアに彼女を追い出してもらおうと考える。

 「そんなことはあるわけない!この女は私を引き立てるための悪役令嬢なんでしょ!すべては私を騙すための演技よ!」

 「………………は?」

 だが、男爵令嬢は何故か意味の分からない言葉を重ね、私を睨み付けてきた。
 ……なぜそうなるのか。

 もう私には目の前の男爵令嬢の思考回路を理解することは不可能だった。
 だが、私はそんな状況である確信を抱く。
 目お前の少女に何を言おうが伝わることは無いことを。

 「速やかにここから去りなさい」

 マーレイアも同様の判断をしたらしく、冷ややかな目付きで男爵令嬢を部屋から追い出そうとする。

 「なっ!何であんたが私を追い出そうとするのよ!」

 そのマーレイアにたいし男爵令嬢が驚き、抵抗しようとするがそれは無駄でしかない。
 そう判断した私は、ようやく騒ぎの元凶が去ると荷物を整えようとして。

 「っ!」

 ……突然背後から地響きがしたのは、その瞬間だった。
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