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元令嬢、最強にて
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「サリート。最初に貴方は私欲で私の両親を手にかけました」
淡々と告げられるラミスの声。
それには一切力が込められていない。
「っ!」
だが、代わりにサリートは自分にに向けられるかつて無い殺気がラミスの怒りを物語っていることを悟っていた。
そしてそのことを悟ったサリートのその顔に浮かぶのは隠しきれない恐怖の色。
ラミスの剣を纏われている光、それは明らかに魔獣の角に覆われているのと同種のものだった。
つまり、ラミスはサリートが今までの人生をかけてなんとか見つけ出した技術を身につけているのだ。
それも魔獣が命と対価に発動する程度の完成度でしか実現出来なかった自分とは違って。
「嘘だ!あり得るわけがない!」
そしてその事実をサリートには認めることができなかった。
一度きりしか使えない最強の魔獣、それは本来ラミスには要らない敵だった。
相手は確かに化け物のような強さを持つ人間ではあるが、それでも魔法保有者では無いのだ。
そんな相手にはあの黒い魔獣だけで充分なはずだった。
だが、それでもサリートはこの最強の魔獣を連れてくることを決めた。
ラミスが、この数年で自分でさえ信じられない成長を遂げてくることを確信して。
そして自分の想像通り、ラミスは明らかにおかしなほどの力を手にしていた。
それは誰であれ、想像がつかない方法で手にした力で。
だが、それでもサリートはその成長も計算していたのだ。
ーーー なのに、目の前の女はそれをさらに超えている力を見せつけてきたのだ。
「あり得るわけがない!」
そんなことをサリートは認めるわけにはいかなかった。
血走った眼で、唾を飛ばし、今までの余裕をかなぐりすてサリートはそう叫ぶ。
今まで自分が忘れることができなかった唯一の敗北。
それを注ぐために自分は来たのに、なんでこんな目にあっている?
いや、違う。何かの間違いだ。
ラミスの剣に宿っているあの光はただの魔法の初歩の技術に過ぎない!とサリートはそう思い込もうとして……
「SYA!?」
「はっ?」
ーーー 逃げ出した最強の魔獣の姿に呆然と声を漏らした。
恐怖を顔に貼り付け、逃げ出しているその魔獣がサリートの指示なく動くことはあり得ないはずだった。
そうなるようにサリートはその魔獣を作っていた。
だが、その魔獣はラミスに背を向けて逃げ出した?
「あ、あぁぁあ!」
そしてようやくその時になってサリートは事態は自分の想定など遥かに上回っていたことを悟る。
ラミスは決して魔獣より強いのではない。
「そして今度は逆恨みで私の大切な人を殺めようとした。私は貴方を許さない」
ーーー ラミスは自分が最強だと思い作り出した魔獣より、圧倒的に強いのだと。
「あぁぁぁぁあ!」
そのことを悟ったその瞬間サリートは後ろを向き、魔獣を追いかけて走り出した。
その時サリートの頭を支配していたのはごく単純な感情、つまり恐怖だった。
何故こんなことになったのか、何が悪かったのかそんなことなどもう頭から飛び、恐怖に追いやられるまま必死に足を動かす。
「サリート、冥土の土産にももう一つ上の魔法を教えてあげますわ」
そしてその背に、死刑宣告のようにラミスの言葉が掛かった。
ラミスの顔は満面の笑みを浮かべているのに、その目だけは一切笑っていないままさらに告げる。
「魔法を一箇所に凝縮し、解放させる一撃必殺の技……」
そのラミスの言葉に反応するように、ラミス握る剣の刃先が眩い光を辺りに撒き散らす。
「嫌だっ!たす、助けてくれっ!」
そしてその光景を直接見ないでも、サリートは急激に威圧感が増した背と後ろから自分の前を照らす強大な光の存在から、破壊の前兆を悟って惨めに叫ぶ。
「これで、本望ですわね」
だが、その願いは誰の耳に入ることなくぽつりと心底どうでも良さそうに告げられたラミスの言葉がサリートの耳に入った。
「ーーーーーー!」
ラミスの言葉を聞いた瞬間胸に走った後悔、そしてその感情を最後にサリートは真っ白な何かにその存在そのものを刈り取られていった………
淡々と告げられるラミスの声。
それには一切力が込められていない。
「っ!」
だが、代わりにサリートは自分にに向けられるかつて無い殺気がラミスの怒りを物語っていることを悟っていた。
そしてそのことを悟ったサリートのその顔に浮かぶのは隠しきれない恐怖の色。
ラミスの剣を纏われている光、それは明らかに魔獣の角に覆われているのと同種のものだった。
つまり、ラミスはサリートが今までの人生をかけてなんとか見つけ出した技術を身につけているのだ。
それも魔獣が命と対価に発動する程度の完成度でしか実現出来なかった自分とは違って。
「嘘だ!あり得るわけがない!」
そしてその事実をサリートには認めることができなかった。
一度きりしか使えない最強の魔獣、それは本来ラミスには要らない敵だった。
相手は確かに化け物のような強さを持つ人間ではあるが、それでも魔法保有者では無いのだ。
そんな相手にはあの黒い魔獣だけで充分なはずだった。
だが、それでもサリートはこの最強の魔獣を連れてくることを決めた。
ラミスが、この数年で自分でさえ信じられない成長を遂げてくることを確信して。
そして自分の想像通り、ラミスは明らかにおかしなほどの力を手にしていた。
それは誰であれ、想像がつかない方法で手にした力で。
だが、それでもサリートはその成長も計算していたのだ。
ーーー なのに、目の前の女はそれをさらに超えている力を見せつけてきたのだ。
「あり得るわけがない!」
そんなことをサリートは認めるわけにはいかなかった。
血走った眼で、唾を飛ばし、今までの余裕をかなぐりすてサリートはそう叫ぶ。
今まで自分が忘れることができなかった唯一の敗北。
それを注ぐために自分は来たのに、なんでこんな目にあっている?
いや、違う。何かの間違いだ。
ラミスの剣に宿っているあの光はただの魔法の初歩の技術に過ぎない!とサリートはそう思い込もうとして……
「SYA!?」
「はっ?」
ーーー 逃げ出した最強の魔獣の姿に呆然と声を漏らした。
恐怖を顔に貼り付け、逃げ出しているその魔獣がサリートの指示なく動くことはあり得ないはずだった。
そうなるようにサリートはその魔獣を作っていた。
だが、その魔獣はラミスに背を向けて逃げ出した?
「あ、あぁぁあ!」
そしてようやくその時になってサリートは事態は自分の想定など遥かに上回っていたことを悟る。
ラミスは決して魔獣より強いのではない。
「そして今度は逆恨みで私の大切な人を殺めようとした。私は貴方を許さない」
ーーー ラミスは自分が最強だと思い作り出した魔獣より、圧倒的に強いのだと。
「あぁぁぁぁあ!」
そのことを悟ったその瞬間サリートは後ろを向き、魔獣を追いかけて走り出した。
その時サリートの頭を支配していたのはごく単純な感情、つまり恐怖だった。
何故こんなことになったのか、何が悪かったのかそんなことなどもう頭から飛び、恐怖に追いやられるまま必死に足を動かす。
「サリート、冥土の土産にももう一つ上の魔法を教えてあげますわ」
そしてその背に、死刑宣告のようにラミスの言葉が掛かった。
ラミスの顔は満面の笑みを浮かべているのに、その目だけは一切笑っていないままさらに告げる。
「魔法を一箇所に凝縮し、解放させる一撃必殺の技……」
そのラミスの言葉に反応するように、ラミス握る剣の刃先が眩い光を辺りに撒き散らす。
「嫌だっ!たす、助けてくれっ!」
そしてその光景を直接見ないでも、サリートは急激に威圧感が増した背と後ろから自分の前を照らす強大な光の存在から、破壊の前兆を悟って惨めに叫ぶ。
「これで、本望ですわね」
だが、その願いは誰の耳に入ることなくぽつりと心底どうでも良さそうに告げられたラミスの言葉がサリートの耳に入った。
「ーーーーーー!」
ラミスの言葉を聞いた瞬間胸に走った後悔、そしてその感情を最後にサリートは真っ白な何かにその存在そのものを刈り取られていった………
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