6 / 6
第1章 勇者覚醒
6.奴隷紋章
しおりを挟む
「っ!貴様何をした!」
奴隷紋が発動しない、その異常から立ち直ったユースは俺に向かってそう殺意を込めた声で怒鳴った。
奴隷紋が発動しない、そんなことをまずはあり得ない異常だ。
そしてそのことをわかっているのか、俺を見るユースの目には警戒の色が浮かんでいた。
「なぁ、知ってるか?魔族がどうしてあんなに厄介だったか」
だが、俺はあっさりとユースの質問を無視した。
「えっ?」
まさか無視されるとは思っていなかったのか、ユースは呆然とした声を漏らす。
「その理由は簡単。魔族が魔術さえも凌駕する力を持っていたからだ」
だが俺は混乱するユースに気付きながら、それでも気にせず言葉を重ねる。
「貴様、侮辱する気か!」
そしてその俺の態度に一周回ってようやく平静を取り戻したのか、ユースは幾分か落ち着いた状態で俺に声をかける。
まぁ、もちろんその状態でも声に込められた怒りまでは隠しきれていなかったが。
「なぁ、その技術見てみたくはないか?」
「っ!貴様ぁ!」
ーーー だが、それでも俺は一切ユースの質問に答えない。
ただ、言葉を重ね続ける。
「その力によって人間達は魔族に刃向かうことが出来なくなったことさえあったらしい。いやぁ、本当に興味深い力だよな」
「……どうやら私の質問に答える気は無いということか。だったら、自ら答えさせてくださいと懇願するまで痛めつけてやろう」
そしてその俺の態度にユースは完全に激昂した。
自分の腰につけた剣を抜き、俺へと向ける。
その目は怒りに覆われていて、勇者を殺してはならないということさえ今は分かっていないだろう。
そのまま、ユースは剣を大きく頭上に振りかぶる。
「なぁ、その力あんたに見せてやるよ」
「っ!」
ーーー そしてその時初めて俺はユースの方へと振り返った。
俺のその突然の動きに一瞬ユースの動きが鈍る。
おそらく、何か嫌な予感でもしたのだろうが、手遅れだった。
剣は俺の肩辺りへと鋭い軌跡を残しながら吸い込まれるように落ちてくる。
「奴隷紋章、発動」
そしてその瞬間俺は凄絶な笑みを唇に浮かべた………
◇◆◇
「ぎゃぁぁぁあ!」
剣が降り下ろされ、そして1人の人間が痛みに耐えきれずに地面に転がり回る。
それは当然の結果だろう。
ユースの剣戟はこの歳でこの立場にまで成り上がってきたのに相応しいものがある。
それを防御をせずに受けてタダで済むわけがない。
だから、目の前の光景は当然のものとなるはずだった。
ーーー 転げ回っているのがユース、そしてそれを嘲笑っているのが俺であるという逆転さえなければ。
「どうだ?痛いだろう?」
目の前のユース、攻撃をしたはずの彼女が転がりまわっている理由、それは俺の中に芽生えた魔術、奴隷紋章だった。
その効果は相手が攻撃を仕掛けてきたのに対し発動する魔法。
その効果は今まで相手に与えられてきた苦痛の量に応じ苦痛を与えるというもの。
つまりユースは今、俺に今まで奴隷紋で与えていた痛みを食らっているのだ。
「はぁ、はぁ」
そしてたった数秒痛みを感じただけで過呼吸になっているユースを見て俺は嘲笑を浮かべる。
「本当にクソだな」
ーーー だが、内心にあったのはどうしようもない苛立ちだった。
奴隷紋が発動しない、その異常から立ち直ったユースは俺に向かってそう殺意を込めた声で怒鳴った。
奴隷紋が発動しない、そんなことをまずはあり得ない異常だ。
そしてそのことをわかっているのか、俺を見るユースの目には警戒の色が浮かんでいた。
「なぁ、知ってるか?魔族がどうしてあんなに厄介だったか」
だが、俺はあっさりとユースの質問を無視した。
「えっ?」
まさか無視されるとは思っていなかったのか、ユースは呆然とした声を漏らす。
「その理由は簡単。魔族が魔術さえも凌駕する力を持っていたからだ」
だが俺は混乱するユースに気付きながら、それでも気にせず言葉を重ねる。
「貴様、侮辱する気か!」
そしてその俺の態度に一周回ってようやく平静を取り戻したのか、ユースは幾分か落ち着いた状態で俺に声をかける。
まぁ、もちろんその状態でも声に込められた怒りまでは隠しきれていなかったが。
「なぁ、その技術見てみたくはないか?」
「っ!貴様ぁ!」
ーーー だが、それでも俺は一切ユースの質問に答えない。
ただ、言葉を重ね続ける。
「その力によって人間達は魔族に刃向かうことが出来なくなったことさえあったらしい。いやぁ、本当に興味深い力だよな」
「……どうやら私の質問に答える気は無いということか。だったら、自ら答えさせてくださいと懇願するまで痛めつけてやろう」
そしてその俺の態度にユースは完全に激昂した。
自分の腰につけた剣を抜き、俺へと向ける。
その目は怒りに覆われていて、勇者を殺してはならないということさえ今は分かっていないだろう。
そのまま、ユースは剣を大きく頭上に振りかぶる。
「なぁ、その力あんたに見せてやるよ」
「っ!」
ーーー そしてその時初めて俺はユースの方へと振り返った。
俺のその突然の動きに一瞬ユースの動きが鈍る。
おそらく、何か嫌な予感でもしたのだろうが、手遅れだった。
剣は俺の肩辺りへと鋭い軌跡を残しながら吸い込まれるように落ちてくる。
「奴隷紋章、発動」
そしてその瞬間俺は凄絶な笑みを唇に浮かべた………
◇◆◇
「ぎゃぁぁぁあ!」
剣が降り下ろされ、そして1人の人間が痛みに耐えきれずに地面に転がり回る。
それは当然の結果だろう。
ユースの剣戟はこの歳でこの立場にまで成り上がってきたのに相応しいものがある。
それを防御をせずに受けてタダで済むわけがない。
だから、目の前の光景は当然のものとなるはずだった。
ーーー 転げ回っているのがユース、そしてそれを嘲笑っているのが俺であるという逆転さえなければ。
「どうだ?痛いだろう?」
目の前のユース、攻撃をしたはずの彼女が転がりまわっている理由、それは俺の中に芽生えた魔術、奴隷紋章だった。
その効果は相手が攻撃を仕掛けてきたのに対し発動する魔法。
その効果は今まで相手に与えられてきた苦痛の量に応じ苦痛を与えるというもの。
つまりユースは今、俺に今まで奴隷紋で与えていた痛みを食らっているのだ。
「はぁ、はぁ」
そしてたった数秒痛みを感じただけで過呼吸になっているユースを見て俺は嘲笑を浮かべる。
「本当にクソだな」
ーーー だが、内心にあったのはどうしようもない苛立ちだった。
0
お気に入りに追加
131
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
貞操逆転世界の温泉で、三助やることに成りました
峯松めだか(旧かぐつち)
ファンタジー
貞操逆転で1/100な異世界に迷い込みました
不意に迷い込んだ貞操逆転世界、男女比は1/100、色々違うけど、それなりに楽しくやらせていただきます。
カクヨムで11万文字ほど書けたので、こちらにも置かせていただきます。
ストック切れるまでは毎日投稿予定です
ジャンルは割と謎、現実では無いから異世界だけど、剣と魔法では無いし、現代と言うにも若干微妙、恋愛と言うには雑音多め? デストピア文学ぽくも見えるしと言う感じに、ラブコメっぽいという事で良いですか?
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……
猫缶@睦月
ファンタジー
大学入試試験中の僕、「黒江 一(くろえ はじめ)」は、試験最後の一問を解き、過去最高の出来になるであろう試験結果に満足して、タイムアップの時を待ち軽く目をつぶった……はずだった。
真っ黒な空間で、三年前に死んだ幼馴染『斎藤 一葉(さいとう かずは)』の姿をしたそいつは、遅刻するからと、そのまま僕を引き連れてどこかへと移動していく。
そいつは女神候補生の『アリアンロッド』と名乗り、『アイオライト』という世界に僕を連れて行く。『アイオライト』は、女神への昇級試験なのだそうだ。『アリアンロッド』が管理し、うまく発展させられれば、試験は合格らしい。
そして、僕は遅刻しそうになって近道を通ろうとした『アリアンロッド』に引っ掛けられ、地球から消滅してしまったようだが、こいつ僕のことを蟻とかと一緒だと言い切り、『試験会場への移動中のトラブルマニュアル』に従って、僕を異世界『アイオライト』に転生させやがった。こちらの要望を何一つ聞かず、あいつ自身の都合によって。
大学に合格し、ノンビリするはずの僕は、この世界でどうなるんだろう……
※ 表紙画像は『プリ画像 yami』さん掲載の画像を使用させていただいております。
* エロはありません。グロもほとんど無いはず……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
早く続きをください!
待ってます!!
まだ?