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第1章 勇者覚醒

6.奴隷紋章

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 「っ!貴様何をした!」

 奴隷紋が発動しない、その異常から立ち直ったユースは俺に向かってそう殺意を込めた声で怒鳴った。
 奴隷紋が発動しない、そんなことをまずはあり得ない異常だ。
 そしてそのことをわかっているのか、俺を見るユースの目には警戒の色が浮かんでいた。
 
 「なぁ、知ってるか?魔族がどうしてあんなに厄介だったか」

 だが、俺はあっさりとユースの質問を無視した。
 
 「えっ?」

 まさか無視されるとは思っていなかったのか、ユースは呆然とした声を漏らす。
 
 「その理由は簡単。魔族が魔術さえも凌駕する力を持っていたからだ」

 だが俺は混乱するユースに気付きながら、それでも気にせず言葉を重ねる。

 「貴様、侮辱する気か!」

 そしてその俺の態度に一周回ってようやく平静を取り戻したのか、ユースは幾分か落ち着いた状態で俺に声をかける。
 まぁ、もちろんその状態でも声に込められた怒りまでは隠しきれていなかったが。
 
 「なぁ、その技術見てみたくはないか?」

 「っ!貴様ぁ!」

 ーーー だが、それでも俺は一切ユースの質問に答えない。

 ただ、言葉を重ね続ける。
 
 「その力によって人間達は魔族に刃向かうことが出来なくなったことさえあったらしい。いやぁ、本当に興味深い力だよな」

 「……どうやら私の質問に答える気は無いということか。だったら、自ら答えさせてくださいと懇願するまで痛めつけてやろう」

 そしてその俺の態度にユースは完全に激昂した。
 自分の腰につけた剣を抜き、俺へと向ける。
 その目は怒りに覆われていて、勇者を殺してはならないということさえ今は分かっていないだろう。
 そのまま、ユースは剣を大きく頭上に振りかぶる。

 「なぁ、その力あんたに見せてやるよ」

 「っ!」

 ーーー そしてその時初めて俺はユースの方へと振り返った。

 俺のその突然の動きに一瞬ユースの動きが鈍る。
 おそらく、何か嫌な予感でもしたのだろうが、手遅れだった。
 剣は俺の肩辺りへと鋭い軌跡を残しながら吸い込まれるように落ちてくる。

 「奴隷紋章、発動」

 そしてその瞬間俺は凄絶な笑みを唇に浮かべた………



 
 ◇◆◇




 「ぎゃぁぁぁあ!」

 剣が降り下ろされ、そして1人の人間が痛みに耐えきれずに地面に転がり回る。
 それは当然の結果だろう。
 ユースの剣戟はこの歳でこの立場にまで成り上がってきたのに相応しいものがある。
 それを防御をせずに受けてタダで済むわけがない。
 だから、目の前の光景は当然のものとなるはずだった。

 ーーー 転げ回っているのがユース、そしてそれを嘲笑っているのが俺であるという逆転さえなければ。

 「どうだ?痛いだろう?」

 目の前のユース、攻撃をしたはずの彼女が転がりまわっている理由、それは俺の中に芽生えた魔術、奴隷紋章だった。
 その効果は相手が攻撃を仕掛けてきたのに対し発動する魔法。
 その効果は今まで相手に与えられてきた苦痛の量に応じ苦痛を与えるというもの。
 つまりユースは今、俺に今まで奴隷紋で与えていた痛みを食らっているのだ。
 
 「はぁ、はぁ」

 そしてたった数秒痛みを感じただけで過呼吸になっているユースを見て俺は嘲笑を浮かべる。

 「本当にクソだな」

 ーーー だが、内心にあったのはどうしようもない苛立ちだった。
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みんなの感想(2件)

佐伯 希
2018.08.23 佐伯 希

早く続きをください!
待ってます!!

解除
テンペスト
2017.08.18 テンペスト

まだ?

解除

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