159 / 169
焦燥の日々
しおりを挟む
ソシリアとアルフォードの婚約が偽装だと告げられてから数日。
私は自身の部屋の中、必死に書類を読み込んでいた。
「……早く、もっと今の状況についてしらないと」
無意識のうちに、私の口からは呟きがもれる。
それは、私の心にある焦燥を何より雄弁に物語っていた。
本来私は、まだ休んでいるようにと言われている。
けれども、私は数日前のあの日からこうして書類を読み込むようになってきていた。
そのおかげもあり、徐々に私は様々知識を蓄えてきている。
そのことで、私は少しだけ自分が余裕を取り戻してもいた。
昔の知識も徐々に思い出しいてきており、知識を入れることが単純におもしろいということもあるのだろう。
それでも、私の中から焦燥が消えることだけはなかった。
自分が本領を発揮するには、もっと知識がいることを私は知っていた。
特にパフォーマンスが明らかに落ちているとわかる今は。
さらに何より、タイムリミットが私の焦燥をさらに煽っていた。
──皆が私に失望するまでのタイムリミットが。
「……っ!」
そのことを想像した私の手が止まる。
自分でもわかっているのだ。
そんなすぐに皆が自分に失望したりしないとは。
けれど、皆が失望するという想像だけで私の心臓は締め上げられるのだ。
……そして、そのタイムリミットはいずれやってくる。
「もっと、もっと……!」
その想像に、書類をめくる私の手がどんどんと加速する。
気づけば、その書類は最後の一ページとなっていた。
「……次のものをとってこないと」
そのことに気づいた私はゆっくりと立ち上がる。
そして部屋の外にだれもいないことを確認すると、書類のおいてある部屋へと歩き出した。
誰もいない廊下に私の足音が響く。
最悪見つかっても、使用人であれば頼み込んで黙っていてもらうこともできるが、あまり見つかりたくない私は人気のあまりない遠回りの道を通っていた。
この道を通ると私は、学生時代を思い出していた。
辺境貿易を始める前はアルフォードの立場も弱く、辺境貿易の計画は秘密裏に行われていた。
その際、資料を取りにくる時、私たちはこの場所を使っていたのだ。
「……私があのときみたいに動けるようになれば、皆頼りにしてくれるかな」
そう考えて、私はマルクから聞いた魔物除けのおじいさんのことを思い出す。
あのおじいさんみたいに、アルフォードが私を必要としてくれるようになれば、私ももっと自分のことを信じれるようになるだろうか。
「未練がましいな、私」
自身の想像に思わず笑い、しかし心なしか弾んだ足取りで私は資料室に入る。
そして新しい資料を手に取り……外から足音が響いてきたのはそのときだった。
私は自身の部屋の中、必死に書類を読み込んでいた。
「……早く、もっと今の状況についてしらないと」
無意識のうちに、私の口からは呟きがもれる。
それは、私の心にある焦燥を何より雄弁に物語っていた。
本来私は、まだ休んでいるようにと言われている。
けれども、私は数日前のあの日からこうして書類を読み込むようになってきていた。
そのおかげもあり、徐々に私は様々知識を蓄えてきている。
そのことで、私は少しだけ自分が余裕を取り戻してもいた。
昔の知識も徐々に思い出しいてきており、知識を入れることが単純におもしろいということもあるのだろう。
それでも、私の中から焦燥が消えることだけはなかった。
自分が本領を発揮するには、もっと知識がいることを私は知っていた。
特にパフォーマンスが明らかに落ちているとわかる今は。
さらに何より、タイムリミットが私の焦燥をさらに煽っていた。
──皆が私に失望するまでのタイムリミットが。
「……っ!」
そのことを想像した私の手が止まる。
自分でもわかっているのだ。
そんなすぐに皆が自分に失望したりしないとは。
けれど、皆が失望するという想像だけで私の心臓は締め上げられるのだ。
……そして、そのタイムリミットはいずれやってくる。
「もっと、もっと……!」
その想像に、書類をめくる私の手がどんどんと加速する。
気づけば、その書類は最後の一ページとなっていた。
「……次のものをとってこないと」
そのことに気づいた私はゆっくりと立ち上がる。
そして部屋の外にだれもいないことを確認すると、書類のおいてある部屋へと歩き出した。
誰もいない廊下に私の足音が響く。
最悪見つかっても、使用人であれば頼み込んで黙っていてもらうこともできるが、あまり見つかりたくない私は人気のあまりない遠回りの道を通っていた。
この道を通ると私は、学生時代を思い出していた。
辺境貿易を始める前はアルフォードの立場も弱く、辺境貿易の計画は秘密裏に行われていた。
その際、資料を取りにくる時、私たちはこの場所を使っていたのだ。
「……私があのときみたいに動けるようになれば、皆頼りにしてくれるかな」
そう考えて、私はマルクから聞いた魔物除けのおじいさんのことを思い出す。
あのおじいさんみたいに、アルフォードが私を必要としてくれるようになれば、私ももっと自分のことを信じれるようになるだろうか。
「未練がましいな、私」
自身の想像に思わず笑い、しかし心なしか弾んだ足取りで私は資料室に入る。
そして新しい資料を手に取り……外から足音が響いてきたのはそのときだった。
0
お気に入りに追加
7,690
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

【完結】わたしの欲しい言葉
彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。
双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。
はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。
わたしは・・・。
数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。
*ドロッとしています。
念のためティッシュをご用意ください。

妹の嘘の病により、私の人生は大きく狂わされましたが…漸く、幸せを掴む事が出来ました
coco
恋愛
病弱な妹の願いを叶える為、私の婚約者は私に別れを告げた。
そして彼は、妹の傍に寄り添う事にしたが…?

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。

お妃様に魔力を奪われ城から追い出された魔法使いですが…愚か者達と縁が切れて幸せです。
coco
恋愛
妃に逆恨みされ、魔力を奪われ城から追い出された魔法使いの私。
でも…それによって愚か者達と縁が切れ、私は清々してます─!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる