妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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自分の行為の意味 (伯爵家当主視点)

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 マルクの怒気を感じた私は、頬の痛みさえ忘れ固まることになった。
 ……自分は殺されてもおかしくないではないか、そう感じるほどの迫力をマルクはまとっていた。
 その恐怖に、声も出せない私を睨みつけながら、マルクは口を開く。

「親の恩? お前は何を言ってる? お前等は一切、サーシャリアに恩と呼べるような行為をしていないだろうが。お前等が逆にサーシャリアに養われていただけだろうが」

「……っ!」

 けれど、マルクのあまりの言い様に、私に中に怒りが生まれ、それが恐怖を一瞬吹き飛ばす。

「ふざけるな! 誰があんなかわいげのない娘を育ててやったと思ってる!」

「……お前は本当に救いようがないな」

 けれど、その私の怒声を受けてもマルクの表情には呆れが浮かぶだけだった。

「子供の時養っていた、そういう意味が分かるか? ーーお前はそれしか主張できないんだよ」

「ちがっ……」

「だったら、お前は他にサーシャリアに何を与えた? お前等がサーシャリアを養っていた以上に伯爵家で貢献していたことは理解できてるんだろう?」

「……っ!」

 そう問いかけてくるマルクに、私は何も言えなかった。
 ない訳がない、そう思うものの肝心の言葉が私の口から出てこない。
 それでも必死に考える私を、マルクはあざ笑った。

「その沈黙が何よりの答えだろうが。そのとおおりだよ、覚えておけ。お前はただの寄生虫だ。娘であることを良いことに、寄生するだけしか脳のない存在だ」

「そんな訳ない!」

「あるんだよ、現実を視ろ屑。目の前の光景が全部教えてくれてるだろうが」

 そういって私の姿……かつてからは考えられない解れた礼服を身にまとう私をマルクはあざ笑う。

「サーシャリアがさってから、一体どれだけの家がお前のことを尊重した? その存在に価値を認めた? それが何より雄弁に物語っているだろうが。お前はサーシャリアの慈悲にすがって生きていた寄生虫に過ぎないことを」

 私をサーシャリアの寄生虫、そう吐き捨てたマルクに対し、私は茫然とうなだれることしかできなくなっていた。
 最早、私の心に怒りがわくこともなく、それに私は悟らざるを得ない。
 ……自身でも、マルクの言葉を否定できなくなっていることを。
 その事実が、何より私の心をむしばんでいく。
 そんな状態となってもまだ、マルクに言葉を止める気は存在しなかった。

「ということで、もう一度選ぶチャンスを与えてやろう。俺はサーシャリアのいない伯爵家に一切の価値を感じない。サーシャリアに見捨てられた伯爵家に辺境貿易の権限を与えるなら、もう一度作り直した方がましだと思っている」

 そういいながら、私の胸ぐらをつかみ、顔を間近まで寄せたマルクは告げる。

「爵位を売って借金を払うか。それともサーシャリアの身柄を辺境泊に渡すか今、決めろ」

 ……自分の行動がどれだけおろかだったのか、私はようやく理解した。
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