153 / 169
慰謝料の請求 (伯爵家当主視点)
しおりを挟む
言われるがまま、ほぼ強制的に案内しながら、私の胸にあったのは焦燥に押しつぶされる寸前だった。
辺境泊次期当主、その想像もしない来訪は私の平静を奪うのに十分な出来事だった。
どうして、こんな時にこの男が……そう考えてすぐに答えはでた。
それこそ、辺境貿易以外あり得ないのだから。
その私の想像は正解だった。
「俺は話をじらす趣味などないから率直にいう。今回俺が来たのは、辺境貿易についてだ」
案内された部屋に訪れた瞬間、許可も得ずに椅子にすわって、次期辺境泊はそう告げた。
その態度に、私の胸に苛立ちが浮かぶ。
……今思えば、どれだけ第三王子が礼を守っていたのかわかる。
それに対して、次期辺境泊の態度は腹立たしいことこの上なかった。
けれど、その気持ちを押し殺し、私は笑顔で口を開く。
「わざわざご足労いただきありがとうございます! 私もいつかその件に関してお話しに行かせて頂こうと考えていたのですが、まさかマルク様から直接きていただけますとは!」
「おお、そうか。なら話は早いか」
その私の言葉に笑顔を浮かべ、マルクは口を開く。
「で、いくら払える?」
「は?」
……その瞬間、私は言葉を失うことになった。
一瞬、これが冗談ではないかという考えが私の脳裏によぎる。
しかし、そんな私の考えを否定するように次期辺境泊は続けた。
「なにを信じられないといいたげな反応をしている? 自分がなにをしたのかも理解していないのか? ──辺境含めたどれだけ多くの人間に損害を与えたかを?」
「……っ!」
瞬間、私が思い出したのはかつて第三王子から見せられた手紙……賠償金を請求するものだった。
嫌な汗が、私の背に滲むのが分かる。
私は焦燥に背を押されたまま、必死に口を開く。
「お、お待ちください。今の当家にはそんな金額など……」
「ああ、そうか。サーシャリア捜索に金をつぎ込んでいるからか」
「は、はい。そうです。せめてサーシャリアを見つけることが」
「あー、なんか勘違いさせたみたいだな」
私の言葉を乱雑に頭を掻きなが停止させた次期辺境泊当主は、めんどくさそうに吐き捨てた。
「お前等の都合なんてどうだっていいんだよ。いいから金を用意しろ、て言ってるんだこっちは。──爵位でも何でもいい、売って早急に金を用意しろ」
◇◇◇
少しワクチンなどごたごたがあり、更新遅れてしまい、申し訳ありません!
辺境泊次期当主、その想像もしない来訪は私の平静を奪うのに十分な出来事だった。
どうして、こんな時にこの男が……そう考えてすぐに答えはでた。
それこそ、辺境貿易以外あり得ないのだから。
その私の想像は正解だった。
「俺は話をじらす趣味などないから率直にいう。今回俺が来たのは、辺境貿易についてだ」
案内された部屋に訪れた瞬間、許可も得ずに椅子にすわって、次期辺境泊はそう告げた。
その態度に、私の胸に苛立ちが浮かぶ。
……今思えば、どれだけ第三王子が礼を守っていたのかわかる。
それに対して、次期辺境泊の態度は腹立たしいことこの上なかった。
けれど、その気持ちを押し殺し、私は笑顔で口を開く。
「わざわざご足労いただきありがとうございます! 私もいつかその件に関してお話しに行かせて頂こうと考えていたのですが、まさかマルク様から直接きていただけますとは!」
「おお、そうか。なら話は早いか」
その私の言葉に笑顔を浮かべ、マルクは口を開く。
「で、いくら払える?」
「は?」
……その瞬間、私は言葉を失うことになった。
一瞬、これが冗談ではないかという考えが私の脳裏によぎる。
しかし、そんな私の考えを否定するように次期辺境泊は続けた。
「なにを信じられないといいたげな反応をしている? 自分がなにをしたのかも理解していないのか? ──辺境含めたどれだけ多くの人間に損害を与えたかを?」
「……っ!」
瞬間、私が思い出したのはかつて第三王子から見せられた手紙……賠償金を請求するものだった。
嫌な汗が、私の背に滲むのが分かる。
私は焦燥に背を押されたまま、必死に口を開く。
「お、お待ちください。今の当家にはそんな金額など……」
「ああ、そうか。サーシャリア捜索に金をつぎ込んでいるからか」
「は、はい。そうです。せめてサーシャリアを見つけることが」
「あー、なんか勘違いさせたみたいだな」
私の言葉を乱雑に頭を掻きなが停止させた次期辺境泊当主は、めんどくさそうに吐き捨てた。
「お前等の都合なんてどうだっていいんだよ。いいから金を用意しろ、て言ってるんだこっちは。──爵位でも何でもいい、売って早急に金を用意しろ」
◇◇◇
少しワクチンなどごたごたがあり、更新遅れてしまい、申し訳ありません!
0
お気に入りに追加
7,692
あなたにおすすめの小説

私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています


姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる