妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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辺境伯の申し出 (アルフォード視点)

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 瞬間、伯爵家当主の顔がはっきりと歪む。
 それは今までの馬鹿にされたことに対する怒りではなく、つかれたくないことを暴かれたと言いたげな表情だった。
 しかし、それでも伯爵家当主がそのことを認めることはなかった。

「……サーシャリアが私より優秀? そんなことがあるわけないでしょう!」

 精一杯、声を張り上げ伯爵家当主はそう叫ぶ。
 それでも、その声に含まれた震えを隠すことはできなかった。
 とはいえ、そんなことを今の俺には、突っ込む気はなかった。

 自覚しようがしなかろうが、今の俺にはどうだっていいのだから。

「そうか。まあ、そんなことどうだっていい。一つ確かなのは、この先どれだけ言い訳しようが、辺境貿易を伯爵家から取り上げる未来は変わらないだけなのだしな」

「お、お待ちください、アルフォード様」

 瞬間、伯爵家当主の顔に苦渋の表情が浮かぶ。
 その目に浮かぶ縋るような目に、俺は伯爵家の状況を理解する。
 おそらく、辺境貿易がなくなれば立ちゆかなくなるほど、現状は危険なのだと。

 ──そして、その瞬間俺は自身の計画の成功を確信した。

「……悪いが私も代表とはいえ、辺境貿易に関して一番の決定力を持っているのは辺境泊だ。私に辺境泊の決定を左右することはできない」

「そんな!」

 瞬間、絶望的な表情を伯爵家当主は浮かべる。
 おそらく、伯爵家当主にも分かっているのだろう、今の現状で辺境泊を説得することはできないと。
 その気持ちをよく理解した上で、俺は一枚の手紙を取り出した。

「ただ、辺境泊から伯爵家に一つ提案があるらしい」

「……っ!」

 その言葉を聞いた瞬間、伯爵家当主は私の手にあった手紙を半ば奪い取る勢いで取り上げた。
 それは無礼と言ってもいい行いだったが、あえて私は見逃す。
 そして、信じられないものをみたという顔で伯爵家当主が顔をあげたのはそのときだった。

「……これは本当でしょうか、アルフォード様」

「ああ、紛れもない辺境泊本人からの提案だよ」

 そこで俺はにっこりと笑って告げた。

「──サーシャリアを養女として迎え入れることを条件に、辺境貿易の責任者として伯爵家を認めるとね」
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