妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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気づいたこと (アルフォード視点)

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 思いもしていなかった言葉に、俺は一瞬言葉を失ってしまう。
 そんな俺をかまうことなく、伯爵家当主は一気にまくし立て始めた。

「よく考えてみてください、アルフォード様。今回の事態の元凶は一体なんでしょうか? そう、サーシャリアが逃げ出したことなのです」

「……本気で言っているのか?」

「本気も何も事実ではないですか!」

 そういって、さらに伯爵家当主はまくし立て始める。

「サーシャリアさえ逃げ出さなければ、辺境貿易がここまで滞ることもなかったのです! それを考えれば……アルフォード様?」

 しかし、その伯爵家当主の勢いは俺の様子を見た瞬間、失速することとなった。
 そんな伯爵家当主へと、俺は呆れを隠せない様子で告げる。

「……そんなことを言われても、私はどうすればいい?」

「……は?」

「はあ、まだ分かってないのか?」

 どうしようもなく鈍い伯爵家当主に、私はため息をもらす。

「この事態の責任が、失踪したサーシャリアのものだと言う意味を少しでも考えて見ろ。サーシャリアは一ヶ月も失踪してないんだぞ」

「……何がいいたいのですか?」

「──自分の無能さをカミングアウトされたって、私はどうしようもできないということだよ」

「なっ!」

 俺の言葉に、伯爵家当主の顔が朱に染まる。
 その怒りの表情を見ながら、俺は内心嘆息を漏らしていた。
 正直、俺はここで伯爵家当主への恨みを露わにするつもりはなかった。
 あくまで、俺は中立の人間だと伯爵家当主に思わせるために。
 けれど、このことだけは指摘せずにはいられなかった。

「……一ヶ月いなかった人間と、一ヶ月で事業を傾けた人間。どっちが無能に見える?」

「……っ!」

 そして、ようやく自分の発言の意味を理解したのか、伯爵家当主は言葉を失う。
 しかし、直ぐにわめきたて始めた。

「これだけの侮辱。たとえアルフォード様とはいえ、許せませんぞ!」

 そんなどうしようもない伯爵家当主の姿に、俺は思わず頭を抑えそうになる。
 ……ただ、もう一つだけ指摘せずにはいられないことがあった。

「言っておくが、私はあくまで意味を要約しただけだ。それに、ここでその名前を出したということは、お前も理解しているんだろう?」

「……なんのことですか?」

 そういって、怪訝そうな伯爵家当主の顔を真っ正面から見返し、俺は告げた。

「サーシャリアは自分なんて比にならない優秀な人間だった、そのことにそろそろ気づいたんだろ、そう言ってるんだよ」


 ◇◇◇

 更新遅れてしまい申し訳ありません!
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