妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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最後の情け (アルフォード視点)

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 茫然と立ち尽くす、伯爵家当主。
 その姿に俺は、笑いそうになる。
 ようやく、伯爵家当主も現状を理解したと分かって。

 しかし、その内心を隠し俺はさぞ無念そうに言葉を告げる。

「……確かに、俺は知っていた。伯爵家が辺境貿易を続けられる状態ではないとな。それでも俺は、自分の目で見てから判断を下すと決めてた」

 徐々に、血の気が引いていく伯爵家当主の表情。
 それを真っ正面から見返し、俺は告げる。

「その最後の情けを、このような思いもよらぬ形で返されるとは思わなかったよ」

「……っ!」

 そう告げると、伯爵家当主は固まる。
 自分がやったことが全て裏目に出ていたと、気づいて。
 何せ、伯爵家のやったことは最後の情けに対して泥をかけたようなものなのだから。
 実際のところ、それが俺の狙いではあったが、そんなこと表には出さず俺は告げる。

「サーシャリアの名前に僅かでも傷を付けたくなかったのだが、もうそうも言ってられないか」

 もはや断れないだけの建前を盾に、俺は宣言する。

「伯爵家から、辺境貿易に関する全ての権限を剥奪する」

「……そんな!」

 しかし、ここまでの建前がありながらも伯爵家当主が黙って引き下がることはなかった。
 なりふり構わず、俺の方へとすがりついてくる。

「お待ちください! どうか……」

「その懇願の段階にはもうないんだよ。お前自身が私の慈悲を袖にしてその機会を潰したんだろう? ……今さら、何か頼める立場だと思っているのか?」

「……っ!」

 その言葉に、伯爵家当主は押し黙る。
 苦悶に歪むその表情が、必死に打開策を導きだそうとしているのが伝わってくるが、その口から言葉がでることはない。
 そして俯いた伯爵家当主に、俺は問いかける。

「もう、何も言うことはないな?」

「どうかお慈悲を」

「……まだそんなことをいうのか」

 呆れと嫌悪感から、俺は思わずそう吐き捨てる。
 この場でまで、言い張れるその面の皮の厚さはさすがだが、そろそろ私もうんざりしていた。

「そろそろ諦めて……っ!」

 けれど、頭を上げた伯爵家当主を見て俺は一瞬気圧されることとなった。

「その様なことを言わず、どうか……。私もアルフォード様と同じ被害者なのです」

 私にすり寄ってきた伯爵家当主は醜悪な表情で笑って、告げる。

「──この一連の流れを引き起こした元凶は、サーシャリアなのですから」


◇◇◇


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