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思いも寄らぬ事態 (伯爵家当主視点)
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「……それではここからは、私が客室に案内させていただきます」
「ああ」
途中現れた侍女に案内されるまま、大人しく客室に向かう第三王子。
そも後ろからついて行きながら、私はひとまず安堵を覚えていた。
少なくとも、第三王子は強引に調べようとはしていないのだろうと。
この様子なら、見られたくない部屋に押しはいられることはないだろう。
……とはいえ、ここからが本番だと私は理解していた。
第三王子は辺境貿易の責任者で、辺境貿易を伯爵家から取り上げられる権限を持っている。
つまり第三王子から、伯爵家の異常を隠し通さねばならないのだ。
部屋を見られなかったことによって、最初の難関は突破した。
しかし、サーシャリア失踪を知られている今、これからの追求を逃れる方が難しいだろう。
何せ、辺境貿易はサーシャリアに許されたものなのだから。
この状況を何とかして突破する方法は一つだけしかない。
サーシャリアについてのことを、親子の話だとして第三王子に関わらせず、誤魔化すしかないと。
あくまでサーシャリアがわがままで家出しただけ。
私はサーシャリアが家でしている間、辺境貿易を管理しているにすぎない。
その体で説得すれば、さすがの第三王子も伯爵家から辺境貿易を奪うとは考えないだろう。
何せ、そうだとすれば辺境貿易を奪われて、一番困るのは戻ってきたサーシャリアなのだから。
サーシャリアに甘い第三王子が、サーシャリアを傷つけるようなことはするはずがない。
……誘拐などの可能性を匂わせば、サーシャリアの捜索に関して手を貸して貰えるかもしれない。
そんなことを考えている間にも、私達は客室へとたどり着く。
私の許可をまつこともなく、椅子へと座った第三王子が口を開いた。
「今回私がきた用件だが、もちろん心当たりはあるだろうな」
「……っ! はい、もちろん分かっております」
思った通りの言葉、それに私は改めて覚悟を決めて告げる。
「サーシャリアのことですね」
「……ほう」
そう告げると、第三王子の顔が意外そうなものに変わる。
まるで、私が自分からそのことをいうと思っていなかったと言いたげな表情に。
それを好機とと感じた私はさらに言葉を重ねる。
「サーシャリアに、アルフォード様が格別のご慈悲を頂いていることは私も理解しております。我が娘のことを心配して来てくださったのだと」
「……ふむ」
「しかし、これは私とサーシャリア親子の問題です。いくらアルフォード様とはいえ……」
「親子、だと?」
「ひっ!」
……しかし、自分の勘違いに気付くこととなった。
冷ややかな目でこちらを睨む第三王子。
その姿から、私は何か言ってはならないことを口にしてしまったことに気付く。
だが、今更方針を変えられる訳がなかった。
「じ、事実です! いくら家出しても私とサーシャリアの関係が変わるわけが……」
「ほう、娘を死の寸前に追いやってよって、よくそんなことがいえるな」
「……え?」
まるで想像もしていなかったアルフォードの言葉に、私は茫然としかできない。
どうしてその話をアルフォードが知っているのか。
そう困惑する私を、呆れたようにアルフォードは見つめていた。
「……この話が本当なのか、鎌を掛ける程度のつもりだったのだが。ここまで簡単に教えて貰えるとは」
「一体、なぜそのことを……」
「まさか知らないのか? これは、商人達と一部の貴族の間でまことしやかに流れている噂なのに?」
「……は?」
その瞬間、私の思考はまるで想像もしていなかった事態に停止することになった。
◇◇◇
かなり前に言って少し時間が空いておりましたが、少しタイトルを変更させて頂きます。
あくまで整理程度の目的でそこまで変わらない予定ですが、一応の為旧タイトルをタイトルに書かせて頂きます。
「ああ」
途中現れた侍女に案内されるまま、大人しく客室に向かう第三王子。
そも後ろからついて行きながら、私はひとまず安堵を覚えていた。
少なくとも、第三王子は強引に調べようとはしていないのだろうと。
この様子なら、見られたくない部屋に押しはいられることはないだろう。
……とはいえ、ここからが本番だと私は理解していた。
第三王子は辺境貿易の責任者で、辺境貿易を伯爵家から取り上げられる権限を持っている。
つまり第三王子から、伯爵家の異常を隠し通さねばならないのだ。
部屋を見られなかったことによって、最初の難関は突破した。
しかし、サーシャリア失踪を知られている今、これからの追求を逃れる方が難しいだろう。
何せ、辺境貿易はサーシャリアに許されたものなのだから。
この状況を何とかして突破する方法は一つだけしかない。
サーシャリアについてのことを、親子の話だとして第三王子に関わらせず、誤魔化すしかないと。
あくまでサーシャリアがわがままで家出しただけ。
私はサーシャリアが家でしている間、辺境貿易を管理しているにすぎない。
その体で説得すれば、さすがの第三王子も伯爵家から辺境貿易を奪うとは考えないだろう。
何せ、そうだとすれば辺境貿易を奪われて、一番困るのは戻ってきたサーシャリアなのだから。
サーシャリアに甘い第三王子が、サーシャリアを傷つけるようなことはするはずがない。
……誘拐などの可能性を匂わせば、サーシャリアの捜索に関して手を貸して貰えるかもしれない。
そんなことを考えている間にも、私達は客室へとたどり着く。
私の許可をまつこともなく、椅子へと座った第三王子が口を開いた。
「今回私がきた用件だが、もちろん心当たりはあるだろうな」
「……っ! はい、もちろん分かっております」
思った通りの言葉、それに私は改めて覚悟を決めて告げる。
「サーシャリアのことですね」
「……ほう」
そう告げると、第三王子の顔が意外そうなものに変わる。
まるで、私が自分からそのことをいうと思っていなかったと言いたげな表情に。
それを好機とと感じた私はさらに言葉を重ねる。
「サーシャリアに、アルフォード様が格別のご慈悲を頂いていることは私も理解しております。我が娘のことを心配して来てくださったのだと」
「……ふむ」
「しかし、これは私とサーシャリア親子の問題です。いくらアルフォード様とはいえ……」
「親子、だと?」
「ひっ!」
……しかし、自分の勘違いに気付くこととなった。
冷ややかな目でこちらを睨む第三王子。
その姿から、私は何か言ってはならないことを口にしてしまったことに気付く。
だが、今更方針を変えられる訳がなかった。
「じ、事実です! いくら家出しても私とサーシャリアの関係が変わるわけが……」
「ほう、娘を死の寸前に追いやってよって、よくそんなことがいえるな」
「……え?」
まるで想像もしていなかったアルフォードの言葉に、私は茫然としかできない。
どうしてその話をアルフォードが知っているのか。
そう困惑する私を、呆れたようにアルフォードは見つめていた。
「……この話が本当なのか、鎌を掛ける程度のつもりだったのだが。ここまで簡単に教えて貰えるとは」
「一体、なぜそのことを……」
「まさか知らないのか? これは、商人達と一部の貴族の間でまことしやかに流れている噂なのに?」
「……は?」
その瞬間、私の思考はまるで想像もしていなかった事態に停止することになった。
◇◇◇
かなり前に言って少し時間が空いておりましたが、少しタイトルを変更させて頂きます。
あくまで整理程度の目的でそこまで変わらない予定ですが、一応の為旧タイトルをタイトルに書かせて頂きます。
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