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これまでの日々 (マールス視点)
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「今日も飯抜きらしいわよ。いい気味だわね」
……空腹で虚ろな意識に、姉アメリアの言葉が聞こえる。
重い瞼を何とかこじ開けると、彼女は勝ち誇ったようにこちらを見ていた。
そんな彼女の視線に逃げるように目をそらしながら、俺は虚ろな頭を働かせる。
一体、この仕打ちが始まってから、今で何日がたっただろうかと。
あの日、サーシャリアを擁護するような発言をしてから、伯爵家での俺の扱いは急変した。
伯爵家がうまくいかない不満を伯爵家当主はぶつけるようになり、それに全員が従うようになったのだ。
もはや、今の俺の状態は虐待といっても過言ではない状態だろう。
何せ、現在の俺の扱いは閉じこめられているようなものなのだから。
この伯爵家の人間は、少しでも気にいらなければこういう手段を躊躇なくとる。
この状況下である限り、伯爵家の俺に対する嫌がらせが終わることはないだろう。
──それこそ、俺の望んでいる状況だとも気付かずに。
本当に簡単に、思い道理の状況を作ってくれたものだ。
そう俺は、思わず笑ってしまいそうになる。
一体俺が何を狙っているのかのにも気付かず、こんな状況を作ってくれた伯爵家の面々に俺は、感謝せずにはいられなかった。
無事、伯爵家諸共滅ぶ状況から抜け出させてくれてありがとう、と。
とにかく、これでもう準備は完了している。
後は、身体が限界を迎える前に転機さえくれば……。
……急激に部屋の外が騒がしくなったのは、ちょうどその時だった。
「何よ、騒がしい」
突然のことに、アメリアも顔を歪め外へと顔を出す。
そして、次の瞬間アメリアの顔から血の気が引いた。
「……そんな、嘘? どうして屋敷にアルフォード様が!?」
そのアメリアの言葉を聞いた瞬間、俺は思わず笑い出していた。
反射的にその顔を隠そうとして、すぐにやめる。
もう、その必要はないことに気付いて。
──何せ、俺の待っていた転機がようやくやってきたのだから。
「……っ! 何よ、あんた。何で笑っているのよ!」
俺の変化に気付いたアメリアがヒステリックな叫び声をあげる。
だが、俺はそれを無視して立ちあがった。
身体には、空腹であるのが信じられないほどに力が溢れていた。
その力を使い、俺はアメリアを突き飛ばす。
「きゃっ!」
「邪魔だ、どけ」
そう吐き捨てる俺を、アメリアは茫然と見ている。
今まで、一切抵抗しなかった俺が突然犯行してきたことが信じられないのだろう。
俺が抵抗しないと思いこんでいたからこそ、最低限の見張りだけで拘束さえしてこなかったのだから。
そして、俺は悠々と自身が閉じこめられてきた部屋を出る。
その目指す先は、アルフォードがいるだろう屋敷の玄関だった。
◇◇◇
更新遅れてしまい申し訳ありません。
……空腹で虚ろな意識に、姉アメリアの言葉が聞こえる。
重い瞼を何とかこじ開けると、彼女は勝ち誇ったようにこちらを見ていた。
そんな彼女の視線に逃げるように目をそらしながら、俺は虚ろな頭を働かせる。
一体、この仕打ちが始まってから、今で何日がたっただろうかと。
あの日、サーシャリアを擁護するような発言をしてから、伯爵家での俺の扱いは急変した。
伯爵家がうまくいかない不満を伯爵家当主はぶつけるようになり、それに全員が従うようになったのだ。
もはや、今の俺の状態は虐待といっても過言ではない状態だろう。
何せ、現在の俺の扱いは閉じこめられているようなものなのだから。
この伯爵家の人間は、少しでも気にいらなければこういう手段を躊躇なくとる。
この状況下である限り、伯爵家の俺に対する嫌がらせが終わることはないだろう。
──それこそ、俺の望んでいる状況だとも気付かずに。
本当に簡単に、思い道理の状況を作ってくれたものだ。
そう俺は、思わず笑ってしまいそうになる。
一体俺が何を狙っているのかのにも気付かず、こんな状況を作ってくれた伯爵家の面々に俺は、感謝せずにはいられなかった。
無事、伯爵家諸共滅ぶ状況から抜け出させてくれてありがとう、と。
とにかく、これでもう準備は完了している。
後は、身体が限界を迎える前に転機さえくれば……。
……急激に部屋の外が騒がしくなったのは、ちょうどその時だった。
「何よ、騒がしい」
突然のことに、アメリアも顔を歪め外へと顔を出す。
そして、次の瞬間アメリアの顔から血の気が引いた。
「……そんな、嘘? どうして屋敷にアルフォード様が!?」
そのアメリアの言葉を聞いた瞬間、俺は思わず笑い出していた。
反射的にその顔を隠そうとして、すぐにやめる。
もう、その必要はないことに気付いて。
──何せ、俺の待っていた転機がようやくやってきたのだから。
「……っ! 何よ、あんた。何で笑っているのよ!」
俺の変化に気付いたアメリアがヒステリックな叫び声をあげる。
だが、俺はそれを無視して立ちあがった。
身体には、空腹であるのが信じられないほどに力が溢れていた。
その力を使い、俺はアメリアを突き飛ばす。
「きゃっ!」
「邪魔だ、どけ」
そう吐き捨てる俺を、アメリアは茫然と見ている。
今まで、一切抵抗しなかった俺が突然犯行してきたことが信じられないのだろう。
俺が抵抗しないと思いこんでいたからこそ、最低限の見張りだけで拘束さえしてこなかったのだから。
そして、俺は悠々と自身が閉じこめられてきた部屋を出る。
その目指す先は、アルフォードがいるだろう屋敷の玄関だった。
◇◇◇
更新遅れてしまい申し訳ありません。
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