妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

文字の大きさ
上 下
139 / 169

これまでの日々 (マールス視点)

しおりを挟む
「今日も飯抜きらしいわよ。いい気味だわね」

 ……空腹で虚ろな意識に、姉アメリアの言葉が聞こえる。
 重い瞼を何とかこじ開けると、彼女は勝ち誇ったようにこちらを見ていた。
 そんな彼女の視線に逃げるように目をそらしながら、俺は虚ろな頭を働かせる。
 一体、この仕打ちが始まってから、今で何日がたっただろうかと。

 あの日、サーシャリアを擁護するような発言をしてから、伯爵家での俺の扱いは急変した。
 伯爵家がうまくいかない不満を伯爵家当主はぶつけるようになり、それに全員が従うようになったのだ。
 もはや、今の俺の状態は虐待といっても過言ではない状態だろう。

 何せ、現在の俺の扱いは閉じこめられているようなものなのだから。

 この伯爵家の人間は、少しでも気にいらなければこういう手段を躊躇なくとる。
 この状況下である限り、伯爵家の俺に対する嫌がらせが終わることはないだろう。

 ──それこそ、俺の望んでいる状況だとも気付かずに。

 本当に簡単に、思い道理の状況を作ってくれたものだ。
 そう俺は、思わず笑ってしまいそうになる。
 一体俺が何を狙っているのかのにも気付かず、こんな状況を作ってくれた伯爵家の面々に俺は、感謝せずにはいられなかった。

 無事、伯爵家諸共滅ぶ状況から抜け出させてくれてありがとう、と。

 とにかく、これでもう準備は完了している。
 後は、身体が限界を迎える前に転機さえくれば……。

 ……急激に部屋の外が騒がしくなったのは、ちょうどその時だった。

「何よ、騒がしい」

 突然のことに、アメリアも顔を歪め外へと顔を出す。
 そして、次の瞬間アメリアの顔から血の気が引いた。

「……そんな、嘘? どうして屋敷にアルフォード様が!?」

 そのアメリアの言葉を聞いた瞬間、俺は思わず笑い出していた。
 反射的にその顔を隠そうとして、すぐにやめる。
 もう、その必要はないことに気付いて。

 ──何せ、俺の待っていた転機がようやくやってきたのだから。

「……っ! 何よ、あんた。何で笑っているのよ!」

 俺の変化に気付いたアメリアがヒステリックな叫び声をあげる。
 だが、俺はそれを無視して立ちあがった。
 身体には、空腹であるのが信じられないほどに力が溢れていた。
 その力を使い、俺はアメリアを突き飛ばす。

「きゃっ!」

「邪魔だ、どけ」

 そう吐き捨てる俺を、アメリアは茫然と見ている。
 今まで、一切抵抗しなかった俺が突然犯行してきたことが信じられないのだろう。
 俺が抵抗しないと思いこんでいたからこそ、最低限の見張りだけで拘束さえしてこなかったのだから。

 そして、俺は悠々と自身が閉じこめられてきた部屋を出る。
 その目指す先は、アルフォードがいるだろう屋敷の玄関だった。


 ◇◇◇


 更新遅れてしまい申し訳ありません。
しおりを挟む
感想 333

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。 双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。 はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。 わたしは・・・。 数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。 *ドロッとしています。 念のためティッシュをご用意ください。

妹の嘘の病により、私の人生は大きく狂わされましたが…漸く、幸せを掴む事が出来ました

coco
恋愛
病弱な妹の願いを叶える為、私の婚約者は私に別れを告げた。 そして彼は、妹の傍に寄り添う事にしたが…?

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

お妃様に魔力を奪われ城から追い出された魔法使いですが…愚か者達と縁が切れて幸せです。

coco
恋愛
妃に逆恨みされ、魔力を奪われ城から追い出された魔法使いの私。 でも…それによって愚か者達と縁が切れ、私は清々してます─!

お前のせいで不幸になったと姉が乗り込んできました、ご自分から彼を奪っておいて何なの?

coco
恋愛
お前のせいで不幸になった、責任取りなさいと、姉が押しかけてきました。 ご自分から彼を奪っておいて、一体何なの─?

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

処理中です...