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醜い言い争い (伯爵家当主視点)
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急激に態度を変えた侍女に、私はしばしの間何も言うことができなかった。
そんな私を、侍女は睨みつける。
「どうして、分からないのですか! ここで、最低限の取引相手さえいなくなれば、何が起きるか……」
その言い様に、あっけに取られていた私の胸に苛立ちが生まれる。
「侍女風情が口を挟むな! 金さえ集まれば、すぐにこんな状況……」
「そんな場合ではないどうして分からないのですか!」
その私の言葉を打ち消す声で、侍女は叫ぶ。
「もし、ここで最低限の商会にさえ見放されたら、辺境貿易さえ立ちゆかなくなるんですよ!」
「……っ!」
頭から抜けていた辺境貿易のことを私が思い出したのは、そのときだった。
今までずっと、何とか自分の名前を広めようとそこばかりを考えていたが、もう三ヶ月先に辺境貿易は迫っていた。
……ここで、辺境貿易まで致命的になってしまう訳にはいかない。
そう考えた私は、渋々告げる。
「……分かった、金を借りる手紙はすぐに訂正」
「は?」
しかし、その私に対する侍女の反応は信じられないようなものをみる目だった。
「まだ、その程度の認識なのですか? まだ、取り返しがつくと思っているのですか?」
「……何を言っている? すぐにでも訂正の手紙を送れば」
「間に合うわけがないでしょう!?」
侍女はさらにヒステリックにわめき立てる。
「ああ、やはりサーシャリアお嬢様を追い出すんじゃなかった……!」
「……それは私に対する当てつけか!」
瞬間、私は怒りのままにそう叫んでいた。
けれど、いつも無言で下がる侍女が、今回だけは食いついてきた。
「当てつけも何も事実でしょう! サーシャリア様を虐めたこんな場所の古株というせいで、私を受け入れてくれる家もないのよ! 歴とした伯爵家令嬢である私がよ!」
「うるさい! 今さらいったいどの口で文句をいっておる! そもそもお前も……」
こんこん、と控えめなノックが響いたのはその時だった。
その瞬間、猛烈にいやな予感を覚えた私と侍女はののしり合うのも中断し、扉の方へと目をやる。
「……入れ」
「あ、貴方」
何とか絞り出した言葉に反応し、部屋に入ってきたのは蒼白な顔をした妻の姿だった。
「あ、アルフォード様が屋敷に……」
そして、妻が告げた言葉に私の頭は真っ白になることになった。
◇◇◇
更新遅れてしまい、申し訳ありません。
そんな私を、侍女は睨みつける。
「どうして、分からないのですか! ここで、最低限の取引相手さえいなくなれば、何が起きるか……」
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「そんな場合ではないどうして分からないのですか!」
その私の言葉を打ち消す声で、侍女は叫ぶ。
「もし、ここで最低限の商会にさえ見放されたら、辺境貿易さえ立ちゆかなくなるんですよ!」
「……っ!」
頭から抜けていた辺境貿易のことを私が思い出したのは、そのときだった。
今までずっと、何とか自分の名前を広めようとそこばかりを考えていたが、もう三ヶ月先に辺境貿易は迫っていた。
……ここで、辺境貿易まで致命的になってしまう訳にはいかない。
そう考えた私は、渋々告げる。
「……分かった、金を借りる手紙はすぐに訂正」
「は?」
しかし、その私に対する侍女の反応は信じられないようなものをみる目だった。
「まだ、その程度の認識なのですか? まだ、取り返しがつくと思っているのですか?」
「……何を言っている? すぐにでも訂正の手紙を送れば」
「間に合うわけがないでしょう!?」
侍女はさらにヒステリックにわめき立てる。
「ああ、やはりサーシャリアお嬢様を追い出すんじゃなかった……!」
「……それは私に対する当てつけか!」
瞬間、私は怒りのままにそう叫んでいた。
けれど、いつも無言で下がる侍女が、今回だけは食いついてきた。
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「うるさい! 今さらいったいどの口で文句をいっておる! そもそもお前も……」
こんこん、と控えめなノックが響いたのはその時だった。
その瞬間、猛烈にいやな予感を覚えた私と侍女はののしり合うのも中断し、扉の方へと目をやる。
「……入れ」
「あ、貴方」
何とか絞り出した言葉に反応し、部屋に入ってきたのは蒼白な顔をした妻の姿だった。
「あ、アルフォード様が屋敷に……」
そして、妻が告げた言葉に私の頭は真っ白になることになった。
◇◇◇
更新遅れてしまい、申し訳ありません。
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