妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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気づいたのは (ソシリア視点)

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「ありがとう、マリア。そっか、そういうことだったのね」

「ソシリア様……?」

「私は思ったより馬鹿だったみたい。こんな簡単なことにも気付かなかったなんて」

 そう思って、私は思わず笑う。
 突然感情を感情が移り変わった私に対し、マリアが不安げに見ているが、それも気にせず私は呟く。

「──できる限りそばにいる。それだけでよかったのに」

 そういいながら私が思い出すのは、かつて人が信じられなくなったときの記憶だった。
 あのとき、サーシャリアはなにも言わずにずっとそばにいてくれた。
 忙しかっただろうに、書類を持ち込んで私のそばから離れなかった。
 そしてずっと待っていていてくれたのだ、私がまた人を信じれるようになるまで。
 それが、どれほど私にとって救いだったか、今でも覚えている。

「複雑になんて考えず、ただ同じことをすればよかっただけだったのに」

 ……それなのに、どうして私は今の今まで忘れていたのだろうか。
 そのことに気づいてさえいれば、こんなことにはならなかったのに。
 そんな後悔が、私の胸に浮かぶ。

「ソシリア様……」

「いいえ、大丈夫よマリア。今は落ち込んでいる場合でもないしね」

 そう、マリアにいいながら、私は素早く自分を切り替えた。
 今は必要なのは後悔じゃなく、行動だと私は理解していた。
 一体今からなにをするのが、サーシャリアにとって一番いいのか。
 その簡単な答えを見つけるのに、少しの時間も必要なかった。

「……そうよね。悔しくはあるけど、あの男が最適よね」

 途中まで最適回を走っていたのに、途中から暴走し始めたその男を思い描き、私は苦笑する。
 そして、その時にはもうすでに私はやることを決めていた。

「ねえ、マリア。今後の予定を持ってきてくれない?」

「え? さすがに今日は……」

「うん、分かっている。今日は無理しないわ。でも、少しやりたいことがあるの」

「やりたいことですか?」

「ええ、少し忙しくなると思うから、確認だけでもしときたくて」

「でも……」

 それでも表情から不安が消えないマリアに、私はとどめの言葉を告げる。

「サーシャリアの為なの、お願い」

「え!?」

 瞬間、分かりやすくマリアの顔に迷いが浮かぶ。
 そして、少しの逡巡のあとマリアは口を開いた。

「……少しだけですからね」

「ありがとう」

 分かりやすく迷いを顔に浮かべながら部屋から出ていくマリアを見つめながら、私は思う。
 今から、伯爵家のごたごたが終わるまでの間。
 それまでに、自分の目的を果たしてみせると。

 ──そう考える私の目に、先ほどまでの葛藤は存在しなかった。


 ◇◇◇

 次回アルフォード視点一話から、伯爵家視点へと移行する予定です。
 散々お待たせしてしまい申し訳ありません……。
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