妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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後のこと (マルク視点)

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「どういうつもり、マルク」

 そう怒りを押し隠せない様子でリーリアが口を開いたのは、部屋を出た直後だった。

「……なんであんなことをいったの?」

「それは伝言のことか」

「それ以外にないじゃない!」

 必死に潜めながら、それでも隠しきれない怒りに声を震わせつつ、リーリアは告げる。

「……あれじゃ、サーシャリアが逃げだしてもおかしくないじゃない!」

「そうだ」

「……え?」

 呆然としたリーリアを俺は見返し、はっきりと告げた。

「俺があえて教えた理由は、サーシャリアがじいさんのところに逃げるよう誘導するためだ」

「なっ! どうして!」

「最悪の事態を防ぐためだ」

「最悪の事態? ……っ!」

 リーリアの表情が何かに気付いたように変化したのは、その瞬間だった。

「すぐに俺が逃げる先を誘導しているのに気付いたってことは、リーリアも分かっているんだろう? ──今のリーリアは突発的に逃げ出してもおかしくないと」

 俺の言葉に、リーリアは返事を返さない。
 しかし、それで理解するには十分だった。
 俺はゆっくりとリーリアに話しかける。

「常時のサーシャリアならともかく、今のサーシャリアは精神的に不安すぎる。誰も知らない場所では何が起きるか分からない」

「……だから、あのお爺さんの場所に逃げ込むようにしたの?」

「ああ。リーリアも、強面の癖してあのじいさんがどれだけサーシャリアに甘いか知ってるだろう?」

「……うん」

「あそこなら大丈夫だ。それに場所を知っていれば、時間がたてばまたあえるようになるさ」

 俺の言葉に、僅かに顔を上げてリーリアは頷く。
 その顔には僅かながら元気が戻っていて……しかし、その表情が完全に晴れるとこはなかった。

「……やっぱり、私達にはサーシャリアを慰めることはできないんだね」

「まあ、な。でも気にするな」

「どうして?」

「俺達のできることは全てやった。なら、そういうのは分かる奴に任せていればいい」

 そう俺が言い続けてる中、どんどんとリーリアの表情に困惑が生まれていく。

「……どういうこと? だれに任せていればいいの?」

「いや、俺はずっと言っていただろう?」

 本気で困惑した様子のリーリアに少し呆れを顔に浮かびながら、俺は今頃動き出しているだろうその名前を告げる。

「ソシリアだよ。後はあいつに任せておけばいい」


 ◇◇◇

 次回からソシリア視点、アルフォード視点になる予定です。
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