129 / 169
彼の存在 (マルク視点)
しおりを挟む
俺の言葉に、リーリアの顔に隠しきれない疑問が浮かぶ。
けれど、俺が歩き出すとそれ以上リーリアが口を開くことはなかった。
疑問がないわけではないだろうが、俺がやることを終わらすまで黙っていてくれると言うことだろう。
その気遣いに感謝しつつ、サーシャリアの部屋の前にたどり着いた俺はその扉を軽くたたいた。
「……えっと、どちら様かしら?」
サーシャリアの焦ったような声が日々いいてきたのは、その直後だった。
その声に、俺はできる限りいつも通りを装いながら、口を開いた。
「疲れている所悪い、マルクだ。言い忘れていたことを思い出してな」
「……分かった。すこし散らかっているから待って」
その言葉の後、何か紙がこすれあう音が響き、再度サーシャリアの声が響く。
「どうぞ」
「……失礼する」
その言葉に応え、俺は扉を開き、そして耐えきれず思わず顔を僅かに歪めた。
……ベッドで休む今のサーシャリアは、明らかに以前と違って疲れを隠せていなかった。
前に話してから、まだ一時間もたっていない。
にもかかわらずのサーシャリアの変貌に、俺は何とか平静を保つ。
今更ながら、俺も理解せずにはいられない。
……サーシャリアは明らかに通常の状態でないと。
その内心を隠し俺は口を開く。
「度々きてしまってすまないな」
「いえ、私はきてくれて嬉しいわよ」
そういいながらも、サーシャリアの顔には色濃い疲労が浮かんでいた。
それを見て、俺は改めてアルフォードの存在の大きさを理解する。
明らかに限界なサーシャリアが先ほどまでの取り繕える状態にあった理由。
それは間違いなく、アルフォードの存在があったからだろう。
……そして、今のサーシャリアを癒すことができるのも、アルフォード以外あり得ない。
どうして、こんな簡単なことにアルフォードは気付かないのか。
その考えに、俺は唇をかみしめる。
「……ふぅ」
しかし、一息ついて俺はすぐに自分を切り替えた。
今はアルフォードの勘違いを正せるとは思えない。
だからこそ、俺はここに来たのだ。
なら、とにかく今は自分のできることをしないとと。
「さっき、伝え忘れていたことだが……」
そうして俺は、そうサーシャリアに話し出した。
◇◇◇
更新遅れてしまい申し訳ありません!
けれど、俺が歩き出すとそれ以上リーリアが口を開くことはなかった。
疑問がないわけではないだろうが、俺がやることを終わらすまで黙っていてくれると言うことだろう。
その気遣いに感謝しつつ、サーシャリアの部屋の前にたどり着いた俺はその扉を軽くたたいた。
「……えっと、どちら様かしら?」
サーシャリアの焦ったような声が日々いいてきたのは、その直後だった。
その声に、俺はできる限りいつも通りを装いながら、口を開いた。
「疲れている所悪い、マルクだ。言い忘れていたことを思い出してな」
「……分かった。すこし散らかっているから待って」
その言葉の後、何か紙がこすれあう音が響き、再度サーシャリアの声が響く。
「どうぞ」
「……失礼する」
その言葉に応え、俺は扉を開き、そして耐えきれず思わず顔を僅かに歪めた。
……ベッドで休む今のサーシャリアは、明らかに以前と違って疲れを隠せていなかった。
前に話してから、まだ一時間もたっていない。
にもかかわらずのサーシャリアの変貌に、俺は何とか平静を保つ。
今更ながら、俺も理解せずにはいられない。
……サーシャリアは明らかに通常の状態でないと。
その内心を隠し俺は口を開く。
「度々きてしまってすまないな」
「いえ、私はきてくれて嬉しいわよ」
そういいながらも、サーシャリアの顔には色濃い疲労が浮かんでいた。
それを見て、俺は改めてアルフォードの存在の大きさを理解する。
明らかに限界なサーシャリアが先ほどまでの取り繕える状態にあった理由。
それは間違いなく、アルフォードの存在があったからだろう。
……そして、今のサーシャリアを癒すことができるのも、アルフォード以外あり得ない。
どうして、こんな簡単なことにアルフォードは気付かないのか。
その考えに、俺は唇をかみしめる。
「……ふぅ」
しかし、一息ついて俺はすぐに自分を切り替えた。
今はアルフォードの勘違いを正せるとは思えない。
だからこそ、俺はここに来たのだ。
なら、とにかく今は自分のできることをしないとと。
「さっき、伝え忘れていたことだが……」
そうして俺は、そうサーシャリアに話し出した。
◇◇◇
更新遅れてしまい申し訳ありません!
0
お気に入りに追加
7,690
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

【完結】わたしの欲しい言葉
彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。
双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。
はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。
わたしは・・・。
数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。
*ドロッとしています。
念のためティッシュをご用意ください。

妹の嘘の病により、私の人生は大きく狂わされましたが…漸く、幸せを掴む事が出来ました
coco
恋愛
病弱な妹の願いを叶える為、私の婚約者は私に別れを告げた。
そして彼は、妹の傍に寄り添う事にしたが…?

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる