妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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隠し続けた理由 (マルク視点)

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 思わず言葉を失う俺とリーリア。

「一人の独断と言うことにすれば、ほかの人間が責められるのはましになるだろう。そうすれば、間違いなく被害はましになる」

 ……そのことに気付いていない訳がない訳がないのに、アルフォードはなにもないように話を続ける。
 そんなアルフォードに、俺は我ながらかすれた声をあげる。

「待てよ、アルフォード」

「そうすれば、生徒会メンバー全員……どうした、マルク?」

「……どうした、じゃないに決まっているだろう」

 俺はアルフォードをまっすぐと見返し告げる。

「もしかして、お前がその独断を行った体でいくつもりなのか?」

「……なにを言ってる?」

 その質問に、アルフォードは首を傾げて聞いてくる。

「俺以外の誰に、その役をやれる人がいるわけないだろう?」

「っ!」

 その言葉に、リーリアが言葉を失う。
 ……何かを察したように。
 しかし、俺はアルフォードを睨むつけて告げる。

「うるせぇ。そんなの誰が認めるか。やるなら、俺がやる」

「王宮にやっときたマルクが、断行したなんて説得力がかけるだけだ」

 ……しかし、その俺の言葉をばっさりとアルフォードはたたききる。

「それとも、ソシリアに独断を装わせた方がいいとでも?」

「……っ!」

 脳裏に、倒れたソシリアの姿が浮かぶ。
 ……それに、俺はなにもいえなくなる。
 同時に俺は気付いてしまう。

 ──偽装婚約を必死に隠そうとしていたことも、この独断と無関係ではないだろうと。

 自身が全ての責任を負うために、アルフォードは一体どれだけのことを……それもどれだけ前から考えていたのか。
 その考えに、思わず唇をかみしめる。
 そんな俺たちに、アルフォードは笑いかけてくる。

 ……サーシャリアのそばにいたとき目にした笑みとは比べものにならないぎこちない笑みで。

「マルクとリーリアには、俺の独断を糾弾してほしい。正直、そうでなくとも、サーシャリアは俺を恨むだろう。だが、それが生徒会メンバーに降りかかることはなんとしてでも避けたい」

 なにもいえない俺達に、了承してもらえたと思ったのか、さらにアルフォードは続ける。

「サーシャリアが立ち直っても、信頼できる仲間が必要なのは変わらない。そのためにも、何とか協力してほしい」

「……いい、のかよ」

 その言葉に、俺は思わず口を開いていた。

「なにが?」

 表情を変えることのないアルフォードへと、俺は尋ねる。

「お前は、本当にそれで満足なのかよ?」

 ……本当に、思い人に嫌われる覚悟はあるのかと。
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