妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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傷ついたサーシャリア (ソシリア視点)

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 アルフォードの宣言に、私は少しの間呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
 その言葉に対する否定の言葉は、私の胸の中あふれている。
 ……しかし、もう私は気付かずにはいられなかった。
 その否定の言葉は全て、こうであってほしいという思いが、必死に生み出しているにすぎないことを。

 実際のところ、サーシャリアは大きく傷ついていて──それに私はかけらも気付いていなかったことを。

「ちが、私は……」

 反射的に私はなにかを言おうとして、けれど口からなにか言葉が出てくることはなかった。
 ……もはや、全てが言い訳でしかないことに気付いていたが故に。
 そして、呆然としていたのは私だけではなかった。

「……それは本当なのか?」

「確かに、サーシャリアは調子が悪そうだってけども、そんな……」

 マルクとリーリアも、衝撃を隠せない様子でたたずんでいる。
 そんな私達に対して、アルフォードは気を使うように告げる。

「まあ、実際のところを言えば、誰も信じられなくなっているといった方が正確だろうな」

 その言葉に私は無言でうつむく。
 アルフォードが気を使ってくれているのはわかる。
 ……けれど、なにも意味は変わらないことに私は気付いていた。

 サーシャリアが私達を信じられないという事実は変わらないままなのだ。

 この部屋にいる全員が、そのことに気付かずにはいられなかった。
 それ故に部屋の中を重苦しい空気が支配する。
 そんな中、アルフォードはさらに口を開く。

「……そして、その元凶は間違いなく伯爵家だ。……伯爵家での日々が、サーシャリアをあそこまで追いつめた」

 そう話すアルフォードの口調に、徐々に怒りが宿り出す。
 同時に、私はようやく理解する。

「だから俺は、なんとしても伯爵家を反抗できない状況に追い込む。もう二度と、サーシャリアによけいな手出しができなにように」

 ──アルフォードが伯爵家を徹底的に潰そうとしていたのは、ここまで理解していたからだと。

 そう理解できて、それ故に私はふと疑問を覚えた。
 ……どうして、頑なにサーシャリアに伯爵家のことを教えるのが逆効果になるのか、と。

「なら、なおさらサーシャリアに伯爵家のことは言っておくべきじゃないの? サーシャリアが伯爵家でもう悩まないように」

「……いや、それは絶対にやめた方がいい」

「どうしてだ、アルフォード?」

 マルクにそう問いかけられて、アルフォードは迷うように口ごもる。
 しかし、諦めたように口を開いた。

「……なあ、俺が本当にサーシャリアに思いを伝えようとしなかったと思うか?」
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