妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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理由 (ソシリア視点)

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 真っ白になった頭の中、セインの言葉が繰り返される。
 サーシャリアの様子がおかしくなったというその言葉が。
 しかし、どれだけ繰り返してもその理由が私にはわからなかった。
 セインにお願いして、私が伝えさせた契約婚約のことは、サーシャリアに決して嬉しい話のはずだ。
 そして、そのことに伝える人間に関しても、受け入れやすいようにセインに頼んだ。

 ……なのになぜ、サーシャリアの様子がおかしくなる?

 私にはどうしてもそのことがわからない。
 ただ、それでもサーシャリアの様子がおかしくなったという事実は変わらない。
 それが事実であることを、セインのあわてようが何より雄弁に物語っているのだ。
 だから私は、何とか動揺を押し込み、セインに詳しい話を聞こうとして……その前にアルフォードが動き出していた。

「どこまで話した……!」

 セインに対し、アルフォードはつかみかからんばかりの剣幕で詰め寄る。
 その姿は、いつものアルフォードからは考えられないほど感情的で、問いつめられたセインさえ、一瞬言葉を失う。
 しかし、その惚ける時間さえ惜しいというように、アルフォードはさらに問いつめる。

「なにを話したのか? どこまで話した?」

「……偽造婚約についてサーシャリアに明かした」

「伯爵家に対する計画は?」

「……いってない」

「……本当だな」

 そこまで一息に問いつめ、アルフォードは安堵した様子でセインから離れた。
 そして、私の方に目を向ける。

「……ソシリアが発案か」

 いつもと違い、一切感情の読めないアルフォードの言葉に、私は言葉に詰まる。
 私が口を開く前に、リーリアが私の前にでる。

「ソシリアだけじゃなく、私達が話し合っての結論よ」

「……そうか。別になにか言いたいわけじゃない。ここまで説明していなかった俺の責任だ。ただ、これ以上サーシャリアには俺たちが動いていることを明かさない方がいい」

 そう告げるアルフォードからは、色濃い苦悩が滲んでいた。
 そのときになって、ようやく私は言葉を発す。

「……どうして?」

「今なにしても逆効果でしかないからだ」

「だから、何でそんなこといえる……」

 その私の問いに、アルフォードはただ笑った。
 それだけで、私はなにもいえなくなってしまう。

 ……そんな複雑な感情が、その笑みには込められていた。

「簡単な話さ」

 私達が黙り込んでから、ようやくアルフォードは口を開く。

「……サーシャリアは今、俺たちを信じられていない、それだけのな」
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