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突然の乱入者 (ソシリア視点)
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瞬間、私は自分の頭に血が上っていくのが自覚できた。
視界の端、リーリアがあわてて私のところにくるのがわかる。
しかし、それでも自分を抑えることができず、私はアルフォードにつかみかかっていた。
「ヘタレにもほどがあるでしょうが!」
アルフォードが無抵抗なのをいいことに、私はその身体をがくがくと揺らしながら叫ぶ。
「婚約を隠し、伯爵家のことを隠し、恋心についても言う気はない? なにをふざけたこといっているのよ! 男なら、こんな時くらいきちんと覚悟を決めなさ……」
「……もう決めている」
「え?」
ふと、私がアルフォードの様子がおかしいことに気付いたのは、そのときだった。
アルフォードは変わらず無抵抗のまま……なのにその目には言いようのないすごみがあった。
自身の首をつかんだ私の手をゆっくりとはがしながら、アルフォードは告げる。
「とっくの前に、覚悟なんて決めている」
……それが一体何のことを示すのか、私には理解できなかった。
「はい、ソシリア少し落ち着いて」
「……リーリア」
その隙をつくようにリーリアが私を引き離す。
それを確認し、アルフォードを見据えてマルクが口を開いた。
「相も変わらず、全部自分の中にとどめやがって。ここまできたら隠し事はなしだ。お前がどうして、そんなにサーシャリアに物事を明かすのを避けるのか、洗いざらいぶちまけてもらうぞ」
逃がさない、そう言外に告げるマルクの視線を向けられ、アルフォードが困ったように周囲をみる。
だが、見方などいるはずもなく、アルフォードはあきらめたように口を開く。
「実は……」
会議室の扉の外、こちらに向かって走ってくる何者かの足音が響いてきたのは、その瞬間だった。
想像もしていない突然のことに、会議室の中全員の目が、扉に向けられる。
次の瞬間、その扉を突き破る勢いで入ってきたのは、セインだった。
まるで、想像のしていない人物の乱入に、私は呆然と立ち尽くす。
しかし、そんな私に気付かずセインは告げる。
「ソシリア、失敗した」
「なっ!」
次の瞬間、そのセインの言葉に私は動揺の声を上げた。
セインがなにを言おうとしているのかはわからない。
ただ、サーシャリアについていっているのだけはわかり、それ故に私は焦燥を抱く。
まだアルフォードは、サーシャリアに言うことを避けようとしたままだ。
ここでアルフォードに知られるわけには、そんな焦りが私の胸を支配する。
「……サーシャリアの様子が、おかしくなった」
──しかし、次の瞬間セインが告げた言葉に、そんな思考の全てが私の頭から消え去った。
視界の端、リーリアがあわてて私のところにくるのがわかる。
しかし、それでも自分を抑えることができず、私はアルフォードにつかみかかっていた。
「ヘタレにもほどがあるでしょうが!」
アルフォードが無抵抗なのをいいことに、私はその身体をがくがくと揺らしながら叫ぶ。
「婚約を隠し、伯爵家のことを隠し、恋心についても言う気はない? なにをふざけたこといっているのよ! 男なら、こんな時くらいきちんと覚悟を決めなさ……」
「……もう決めている」
「え?」
ふと、私がアルフォードの様子がおかしいことに気付いたのは、そのときだった。
アルフォードは変わらず無抵抗のまま……なのにその目には言いようのないすごみがあった。
自身の首をつかんだ私の手をゆっくりとはがしながら、アルフォードは告げる。
「とっくの前に、覚悟なんて決めている」
……それが一体何のことを示すのか、私には理解できなかった。
「はい、ソシリア少し落ち着いて」
「……リーリア」
その隙をつくようにリーリアが私を引き離す。
それを確認し、アルフォードを見据えてマルクが口を開いた。
「相も変わらず、全部自分の中にとどめやがって。ここまできたら隠し事はなしだ。お前がどうして、そんなにサーシャリアに物事を明かすのを避けるのか、洗いざらいぶちまけてもらうぞ」
逃がさない、そう言外に告げるマルクの視線を向けられ、アルフォードが困ったように周囲をみる。
だが、見方などいるはずもなく、アルフォードはあきらめたように口を開く。
「実は……」
会議室の扉の外、こちらに向かって走ってくる何者かの足音が響いてきたのは、その瞬間だった。
想像もしていない突然のことに、会議室の中全員の目が、扉に向けられる。
次の瞬間、その扉を突き破る勢いで入ってきたのは、セインだった。
まるで、想像のしていない人物の乱入に、私は呆然と立ち尽くす。
しかし、そんな私に気付かずセインは告げる。
「ソシリア、失敗した」
「なっ!」
次の瞬間、そのセインの言葉に私は動揺の声を上げた。
セインがなにを言おうとしているのかはわからない。
ただ、サーシャリアについていっているのだけはわかり、それ故に私は焦燥を抱く。
まだアルフォードは、サーシャリアに言うことを避けようとしたままだ。
ここでアルフォードに知られるわけには、そんな焦りが私の胸を支配する。
「……サーシャリアの様子が、おかしくなった」
──しかし、次の瞬間セインが告げた言葉に、そんな思考の全てが私の頭から消え去った。
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