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説得の結果 (ソシリア視点)
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「……なにを言っている?」
私の言葉に、アルフォードの顔に疑問が浮かぶ。
「俺はきちんと伯爵家の侍女に手紙を……」
「アルフォード、冷静に考えなさい」
困惑を隠せない様子のアルフォードの目をまっすぐと見返し、私は告げる。
「カインの浮き名に関しては貴方も知っているでしょう? で、その侍女は信頼できるきちんとした侍女だった?」
「いや、確かにお世辞にも優秀とはいえなかったが」
「だったら、条件は出そろっているじゃない」
そのこまで私が立て続けに指摘すると、混乱を隠せない様子でアルフォードは手で顔を覆う。
「……待ってくれ。なにがいいたい?」
その瞬間、いつもよりも遙かに冊子の悪いアルフォードに、私はため息をつきそうになる。
確かに、アルフォードが今回の件で相当悩んでいることに関しては、私は知っていた。
しかし、そうだとしてもあまりに察しが悪すぎないだろうか。
「……相変わらず、この件に関しては全く頭が働かないわね。私のいっているのは単純な話でしょう?」
そう、内心に鈍すぎるアルフォードにあきれつつも、私ははっきりと告げることを決める。
「──侯爵家が手紙をサーシャリアに見られる前に隠蔽した可能性があるっていているのよ」
「……っ!」
その瞬間、ようやく頭が動き出したのか、アルフォードの顔に同様が浮かぶ。
そして、今まで黙っていてくれたリーリアが口を開く。
「なるほど、そういうことね。確かにそれならば考えられなくはないわね」
「ええ、証拠はないわ。……でも、侯爵家ならできる状況にあって、それを行う動機もある」
そう、侯爵家がサーシャリアをはめようとしたならば、アルフォードの手紙は邪魔にしかならないのだから。
それを隠蔽しようとしても、なんらおかしなことはない。
……そう思いながら私はふと、もう一つ手紙が消えた可能性について考えていたことを思い出す。
しかし、一瞬で私はそのことを頭から追いやった。
確かに、考えられなくはない可能性だが、圧倒的に可能性が高いのは侯爵家のほうなのだ。
今はアルフォードを説得させることが最優先なことを考えれば、別に今更ながら調べることもあるまい。
「……そうか、手紙が届いていなかったのか」
そして、私の思惑通りアルフォードは、小さく呟く。
その表情には、隠しきれない安堵が浮かんでいた。
それがアルフォードのトラウマの根深さを物語っている気がして、私の胸に痛みが走る。
しかし、これでもうアルフォードのトラウマの解消されたはずだ。
サーシャリアとの関係も、うまくいくに違いない。
そう考えて、私は安堵した笑みを浮かべる。
後は、セインにいって明かしにいったことを言うだけだ。
「……だが、悪いがソシリアの提案は受け入れられない」
「え?」
……けれどその私の想定は、アルフォードの言葉に崩れ去ることになった。
呆然とする私に対し、アルフォードは申し訳なさそうに、だがはっきりと告げる。
「俺は何よりも真っ先に伯爵家を潰す」
私の言葉に、アルフォードの顔に疑問が浮かぶ。
「俺はきちんと伯爵家の侍女に手紙を……」
「アルフォード、冷静に考えなさい」
困惑を隠せない様子のアルフォードの目をまっすぐと見返し、私は告げる。
「カインの浮き名に関しては貴方も知っているでしょう? で、その侍女は信頼できるきちんとした侍女だった?」
「いや、確かにお世辞にも優秀とはいえなかったが」
「だったら、条件は出そろっているじゃない」
そのこまで私が立て続けに指摘すると、混乱を隠せない様子でアルフォードは手で顔を覆う。
「……待ってくれ。なにがいいたい?」
その瞬間、いつもよりも遙かに冊子の悪いアルフォードに、私はため息をつきそうになる。
確かに、アルフォードが今回の件で相当悩んでいることに関しては、私は知っていた。
しかし、そうだとしてもあまりに察しが悪すぎないだろうか。
「……相変わらず、この件に関しては全く頭が働かないわね。私のいっているのは単純な話でしょう?」
そう、内心に鈍すぎるアルフォードにあきれつつも、私ははっきりと告げることを決める。
「──侯爵家が手紙をサーシャリアに見られる前に隠蔽した可能性があるっていているのよ」
「……っ!」
その瞬間、ようやく頭が動き出したのか、アルフォードの顔に同様が浮かぶ。
そして、今まで黙っていてくれたリーリアが口を開く。
「なるほど、そういうことね。確かにそれならば考えられなくはないわね」
「ええ、証拠はないわ。……でも、侯爵家ならできる状況にあって、それを行う動機もある」
そう、侯爵家がサーシャリアをはめようとしたならば、アルフォードの手紙は邪魔にしかならないのだから。
それを隠蔽しようとしても、なんらおかしなことはない。
……そう思いながら私はふと、もう一つ手紙が消えた可能性について考えていたことを思い出す。
しかし、一瞬で私はそのことを頭から追いやった。
確かに、考えられなくはない可能性だが、圧倒的に可能性が高いのは侯爵家のほうなのだ。
今はアルフォードを説得させることが最優先なことを考えれば、別に今更ながら調べることもあるまい。
「……そうか、手紙が届いていなかったのか」
そして、私の思惑通りアルフォードは、小さく呟く。
その表情には、隠しきれない安堵が浮かんでいた。
それがアルフォードのトラウマの根深さを物語っている気がして、私の胸に痛みが走る。
しかし、これでもうアルフォードのトラウマの解消されたはずだ。
サーシャリアとの関係も、うまくいくに違いない。
そう考えて、私は安堵した笑みを浮かべる。
後は、セインにいって明かしにいったことを言うだけだ。
「……だが、悪いがソシリアの提案は受け入れられない」
「え?」
……けれどその私の想定は、アルフォードの言葉に崩れ去ることになった。
呆然とする私に対し、アルフォードは申し訳なさそうに、だがはっきりと告げる。
「俺は何よりも真っ先に伯爵家を潰す」
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