105 / 169
裏付け (ソシリア)
しおりを挟む
やはり、私の睨んでいた通りだったらしい。
そう理解して、私は思う。
……もし、婚約がこのままであれば、サーシャリアはもっと危険な状態になっていたかもしれないと。
そんなことを考えているうちにも、感情的になったマルクが私を睨んでくる。
「いいから、早く教え……」
「少し落ち着きなさい」
「つぅ!」
冷静さを欠いたマルクの額をはたき、冷静さを取り戻させた私は、腰に手を当ていい放つ。
「私に聞く前に、もう少し考えなさい。私が何でこの名前を口にしたかくらい、発言からわかるでしょ?」
そういい放つと、マルクは押し黙り、代わりと言うようにリーリアが口を開く。
「……侯爵家と餓狼商がつながっているということ?」
「ええ、そういうことよ」
そう、それこそが私が餓狼商の名前を知ったきっかけだった。
カインというサーシャリアの元婚約者の家を調べるに当たって、私はその商会と侯爵家のつながりを知ることになったのだ。
そして、その商会が扱う品を見て、私は辺境と餓狼商が関わりを持っているかもしれないと思い当たったのだ。
……その商会が扱う品こそ、辺境の魔獣の素材だったのだから。
「侯爵家が、餓狼商と……!」
その関わりは決してよいものではなかったことを、私はマルクの反応から悟る。
だとしたら、やはり。
「私が知っているのは、侯爵家とつながっていることだけ。どんな存在だったか、教えてくれない?」
「……それに何の意味がある?」
「その話次第では、私がアルフォードを説得する話の確証を得られるわ」
そういうと、マルクは少し悩んだ後口を開く。
「餓狼商てのは、その商会の名前じゃない。あまりにも汚いやり口から、そう呼ばれていただけだ」
話す度に、わき上がってくる怒り。
それから、その餓狼商の卑劣さが伝わってくる。
「あいつ等は、俺が前に言った辺境貿易前の辺境を食い物にしていた悪徳商会の一つで……その中でもえげつない商会だ」
「……今考えれば、侯爵家レベルの貴族が後ろにいたからこその傲慢な態度だったのね」
その言葉に、私はふとかつてマルクから聞いた話を思い出す。
辺境貿易前、辺境は様々な貴重品を買いたたかれていたと。
……その価値を偽られた状態で。
そして、それらの商会は辺境が開拓していくうちに消えていったという。
そのことを思い出し、私は確信する。
「……いやなことを言わせてしまってごめんなさい。でも、もう大丈夫」
これで、私の予想の裏付けがとれたと。
「──アルフォードを説得する材料は集まったから」
そう理解して、私は思う。
……もし、婚約がこのままであれば、サーシャリアはもっと危険な状態になっていたかもしれないと。
そんなことを考えているうちにも、感情的になったマルクが私を睨んでくる。
「いいから、早く教え……」
「少し落ち着きなさい」
「つぅ!」
冷静さを欠いたマルクの額をはたき、冷静さを取り戻させた私は、腰に手を当ていい放つ。
「私に聞く前に、もう少し考えなさい。私が何でこの名前を口にしたかくらい、発言からわかるでしょ?」
そういい放つと、マルクは押し黙り、代わりと言うようにリーリアが口を開く。
「……侯爵家と餓狼商がつながっているということ?」
「ええ、そういうことよ」
そう、それこそが私が餓狼商の名前を知ったきっかけだった。
カインというサーシャリアの元婚約者の家を調べるに当たって、私はその商会と侯爵家のつながりを知ることになったのだ。
そして、その商会が扱う品を見て、私は辺境と餓狼商が関わりを持っているかもしれないと思い当たったのだ。
……その商会が扱う品こそ、辺境の魔獣の素材だったのだから。
「侯爵家が、餓狼商と……!」
その関わりは決してよいものではなかったことを、私はマルクの反応から悟る。
だとしたら、やはり。
「私が知っているのは、侯爵家とつながっていることだけ。どんな存在だったか、教えてくれない?」
「……それに何の意味がある?」
「その話次第では、私がアルフォードを説得する話の確証を得られるわ」
そういうと、マルクは少し悩んだ後口を開く。
「餓狼商てのは、その商会の名前じゃない。あまりにも汚いやり口から、そう呼ばれていただけだ」
話す度に、わき上がってくる怒り。
それから、その餓狼商の卑劣さが伝わってくる。
「あいつ等は、俺が前に言った辺境貿易前の辺境を食い物にしていた悪徳商会の一つで……その中でもえげつない商会だ」
「……今考えれば、侯爵家レベルの貴族が後ろにいたからこその傲慢な態度だったのね」
その言葉に、私はふとかつてマルクから聞いた話を思い出す。
辺境貿易前、辺境は様々な貴重品を買いたたかれていたと。
……その価値を偽られた状態で。
そして、それらの商会は辺境が開拓していくうちに消えていったという。
そのことを思い出し、私は確信する。
「……いやなことを言わせてしまってごめんなさい。でも、もう大丈夫」
これで、私の予想の裏付けがとれたと。
「──アルフォードを説得する材料は集まったから」
0
お気に入りに追加
7,699
あなたにおすすめの小説
比べないでください
わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」
「ビクトリアならそんなことは言わない」
前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。
もう、うんざりです。
そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……
あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
お願いされて王太子と婚約しましたが、公爵令嬢と結婚するから側室になれと言われました
如月ぐるぐる
ファンタジー
シオンは伯爵令嬢として学園を首席で卒業し、華々しく社交界デビューを果たしました。
その時に王太子に一目惚れされ、一方的に言い寄られてしまいましたが、王太子の言う事を伯爵家が断る事も出来ず、あれよあれよと婚約となりました。
「シオン、君は僕に相応しくないから婚約は破棄する。ザビーネ公爵令嬢と結婚する事にしたから、側室としてなら王宮に残る事を許そう」
今まで王宮で王太子妃としての教育を受け、イヤイヤながらも頑張ってこれたのはひとえに家族のためだったのです。
言い寄ってきた相手から破棄をするというのなら、それに付き合う必要などありません。
「婚約破棄……ですか。今まで努力をしてきましたが、心変わりをされたのなら仕方がありません。私は素直に身を引こうと思います」
「「え?」」
「それではフランツ王太子、ザビーネ様、どうぞお幸せに」
晴れ晴れとした気持ちで王宮を出るシオン。
婚約だけだったため身は清いまま、しかも王宮で王太子妃の仕事を勉強したため、どこへ行っても恥ずかしくない振る舞いも出来るようになっていました。
しかし王太子と公爵令嬢は困惑していました。
能力に優れたシオンに全ての仕事を押し付けて、王太子と公爵令嬢は遊び惚けるつもりだったのですから。
その頃、婚約破棄はシオンの知らない所で大騒ぎになっていました。
優れた能力を持つシオンを、王宮ならばと諦めていた人たちがこぞって獲得に動いたのです。
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
婚約者にざまぁしない話(ざまぁ有り)
しぎ
恋愛
「ガブリエーレ・グラオ!前に出てこい!」
卒業パーティーでの王子の突然の暴挙。
集められる三人の令嬢と婚約破棄。
「えぇ、喜んで婚約破棄いたしますわ。」
「ずっとこの日を待っていました。」
そして、最後に一人の令嬢は・・・
基本隔日更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる