妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

文字の大きさ
上 下
102 / 169

巻き込む二人 (ソシリア視点)

しおりを挟む
「あれ?」

 マルクとリーリア会話の最中、私はふと違和感を感じる。
 ……なにかを見逃しているような、感覚を。
 だが、その違和感は原因がわかる前に薄れてなくなってしまう。

「どいうした、ソシリア?」

「なにかあったの?」

「……いいえ、大丈夫よ」

 少し思案した後、違和感を友人が心配で過敏になっているだけだと判断した私は口を開く。

「ただ、大きな悩みでなくとも、サーシャリアは精神的に疲れているだろうと思ってね」

「……確かに、サーシャリアは家族に婚約者までに裏切られた訳だものね」

「本当に好き勝手やってくれたものだな」

 怒りが滲む、リーリアとマルクの言葉を聞いて、私の中にも怒りがわき出てくる。
 伯爵家に、カイン。
 サーシャリアを虐げたその存在を一体どうしてやろうかと考え、私は小さく息を吐く。
 確かにそれらの存在は許せないが、今意識すべきはどうやってサーシャリアを安静にさせるかだ。
 それ以外は後にした方がいい。
 そう考えて、ある問題を思いだした私は深々とため息をついた。

「だからこそ、アルフォードにはとっとと覚悟を決めてほしいんだけどね」

「ああ……」

 瞬間、手紙でおおよそのことを知るマルク、リーリアの顔にあきれた表情が浮かぶ。 
 そして、二人は悩ましげな表情で話し始める。

「一度決めると、アルフォードは頑なだからな」

「それでも、サーシャリアのことを考えると、私もアルフォードがそばにいてくれた方がいい気がするんだけど」

「……なにか、手を回すか?」

 ふと、私の頭にある考えが浮かんできたのはそのときだった。
 ……即ち、二人を共犯にできるのではないか、という。

 今回のセインの件は、私の独断でアルフォードに怒られる覚悟を私は決めている。
 ただ、二人を巻きこむことができれば、アルフォードを説得して有耶無耶にすることができるかもしれない。

 それに何より、だまし討ちではなくアルフォードが乗り気になっていた方が、サーシャリアにも安心できるはずだ。
 そう判断した私は、にんまりと笑ってマルクとリーリアへと口を開いた。

「実はね、もう打っているの」

「は?」

 そう告げた瞬間、マルクが呆然とした表情を浮かべる。
 ……一方のリーリアはあきれたような、予想していたような表情で口を開く。

「はあ、やっぱりね。で、どれだけ手を回しているの?」

 その言葉に、私はさらににっこりと笑う。
 やはり、リーリアは話が早いと。

 気づけば、私達の足は止まっていた。
 私は周囲に人がいないのを確認し、声を潜めて口を開く。

「実はね……」

 そうして私は、今まで自分が裏で動いてきたことも全て、話し始めた……。
しおりを挟む
感想 333

あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

妹の嘘の病により、私の人生は大きく狂わされましたが…漸く、幸せを掴む事が出来ました

coco
恋愛
病弱な妹の願いを叶える為、私の婚約者は私に別れを告げた。 そして彼は、妹の傍に寄り添う事にしたが…?

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

処理中です...