妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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気付かぬ問題 (ソシリア視点)

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 サーシャリアの部屋を後にし、マリアと少し会話をして分かれた後、私はリーリアとマルクと合流していた。
 会議室へと、向かいながらマルクが私に告げる。

「時間がないと言っていたのに、どこで寄り道していたんだ?」

「ごめんなさい、少しマリアと話すことがあってね」

 あの場所で、セインとサーシャリアを二人きりにするためには、マリアを引っ張り出す必要があったのだ。
 さすがに、そのことを全て言うわけにはいかずに濁した私に、マルクは怪訝そうな目を向ける。

「……わがままだとわかっているけど、私はもう少しサーシャリアと話したかったわ」

 ぽつりとリーリアが呟いたのは、そのときだった。
 その言葉に、神妙そうな表情でマルクが同意する。

「ああ。明らかにサーシャリアは調子が悪そうだったしな……」

 その言葉を皮切りに、私たちの間で言葉が途絶える。
 それほどに、サーシャリアの様子はおかしかった。
 それこそ、マリアが悩み事があると判断してもおかしくないほどに。

 だが、私たちはサーシャリアの調子の悪さが精神的なものでないと判断していた。

「でも、サーシャリアからはまだなにも相談されてないんでしょう?」

「ええ、セインもアルフォードからもそう聞いているし、私もなにも言われていないからわ」

 リーリアの質問にそう答えながら、私は改めて自身の判断は正しいと判断する。
 その理由こそ、サーシャリアからなにも言われていないことだった。

「……確かに、誰にもサーシャリアが相談していない以上、深刻な悩みを抱えているとは思えないな。サーシャリアが約束を破るとは思えないし」

 そのマルクの言葉にうなずきながら、私はサーシャリアと生徒会メンバーで作った約束を思い出す。

 ……即ち、大きな悩みがあれば、生徒会メンバーの中。いえる人間だけでいいから相談するという、約束を。

 それは、生徒会を作って初期の頃に結んだ約束だった。
 その時のサーシャリアは、一時のアルフォードよりも人を寄せ付けない性格で……見ていて切なくなるほどに孤独だった。
 そんなサーシャリアを私とアルフォードが見て入れなくて、生徒会メンバーを集ってその約束を作ったのだ。
 少しでも、サーシャリアの心が落ち着くようにと。
 それから、徐々にサーシャリアが心を許してくれたことを思いだしながら、私は思う。

 ……当時の私に、そのその約束がきっかけでこんなことになると言って信じるだろうか、そう考えて小さく私は笑う。

 その約束を作ってから、サーシャリアはきちんと生徒会メンバーに相談してくれていた。
 今では、その悩みによって相談する人間がある程度固定されているほど。
 セインに偽装婚約について明かすように頼んだのも、セインが恋愛的な相談をサーシャリアによくされるからだ。

「……ソシリア、アルフォードにも相談していないのなら、やっぱり体調が悪いのかしら」

「伯爵家では、かなり激務とも聞いていたし、疲れがたまっているのかもしれないな」

 その経緯から、私達はそう判断する。
 しかし、私達は例外を想定しておくべきだった。
 その取り決めに大きな穴があることに。

 ──即ち、悩みを打ち明けられる人間が、生徒会メンバーにいない場合を想定していないことを。
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