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たった一つの対処法 (マリア視点)
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瞬間、私が覚えたのは大きな危機感だった。
「な、何を言っているの二人とも! 私はこうしてきてくれるだけで十分うれしいから!」
そう言葉を重ねるサーシャリア様は必死に、平静を装おうとしていた。
けれど、そのことが私には手に取るように分かってしまう。
明らかに、サーシャリア様は追いつめられていた。
もう、なりふり構っている状況じゃない。
コンコン、と扉をノックする音が響いたのはその瞬間だった。
「マルク、リーリア、いいかしら?」
それから響いてきたソシリア様の言葉に、マルク様とリーリア様は顔を見合わせる。
「……もう時間か」
「ごめんなさいね、サーシャリア。私たち、ソシリア達と話さないといけないことがあって」
名残惜しそうな表情で、お二人がそう告げた瞬間。
私は、サーシャリア様の表情に、残念さと安堵が混じり合う複雑な表情が浮かぶのに気付いていた。
その表情を巧みに笑みの下に隠し、サーシャリア様は告げる。
「気にしないで。またゆっくり、お話しましょう」
「ええ、またね」
「お大事にな」
そして、マルク様とリーリア様は部屋を後にし、入れ替わるようにソシリア様が顔を覗かせた。
「サーシャリア、少しマリアを借りていいかしら?」
「え? 大丈夫だけど」
「それなら、マリアこちらに来て」
「わ、分かりました。少し外します」
サーシャリア様に頭を下げ、私も部屋を後にする。
しかし、ソシリア様に続きながらも、私の頭の中はサーシャリア様のことで一杯だった。
……そもそもの話、どうして私だけがこんなことに気づけたのか、そのことが私には分からなかった。
なぜ、つきあいの長いマルク様やリーリア様でも気付いていない異常に私が気づけたのか。
それらは明らかに不審で……それでも私は自分の勘違いでないことだけは理解していた。
あのときみたサーシャリア様の表情が、私に勘違いでないと囁く。
しかし、その一方でどうしてここまでサーシャリア様が追いつめられているのか、私には一切分からなかった。
サーシャリア様は、間違いなくマルク様とリーリア様の来訪を喜んでいたことが、私を混乱させる。
明らかに、サーシャリア様はお二人を嫌っていない、だったら何故あんなにも傷ついていたのか。
知っている限りの、サーシャリア様の様子を私は思い返す。
けれど、その問い答えが見つかることはない。
欠片さえ、その原因が私には分からない。
そして、そんな状況で私が思いつけた対処法は一つだけだった。
「アルフォード様との思いが結ばれさえすれば……!」
「な、何を言っているの二人とも! 私はこうしてきてくれるだけで十分うれしいから!」
そう言葉を重ねるサーシャリア様は必死に、平静を装おうとしていた。
けれど、そのことが私には手に取るように分かってしまう。
明らかに、サーシャリア様は追いつめられていた。
もう、なりふり構っている状況じゃない。
コンコン、と扉をノックする音が響いたのはその瞬間だった。
「マルク、リーリア、いいかしら?」
それから響いてきたソシリア様の言葉に、マルク様とリーリア様は顔を見合わせる。
「……もう時間か」
「ごめんなさいね、サーシャリア。私たち、ソシリア達と話さないといけないことがあって」
名残惜しそうな表情で、お二人がそう告げた瞬間。
私は、サーシャリア様の表情に、残念さと安堵が混じり合う複雑な表情が浮かぶのに気付いていた。
その表情を巧みに笑みの下に隠し、サーシャリア様は告げる。
「気にしないで。またゆっくり、お話しましょう」
「ええ、またね」
「お大事にな」
そして、マルク様とリーリア様は部屋を後にし、入れ替わるようにソシリア様が顔を覗かせた。
「サーシャリア、少しマリアを借りていいかしら?」
「え? 大丈夫だけど」
「それなら、マリアこちらに来て」
「わ、分かりました。少し外します」
サーシャリア様に頭を下げ、私も部屋を後にする。
しかし、ソシリア様に続きながらも、私の頭の中はサーシャリア様のことで一杯だった。
……そもそもの話、どうして私だけがこんなことに気づけたのか、そのことが私には分からなかった。
なぜ、つきあいの長いマルク様やリーリア様でも気付いていない異常に私が気づけたのか。
それらは明らかに不審で……それでも私は自分の勘違いでないことだけは理解していた。
あのときみたサーシャリア様の表情が、私に勘違いでないと囁く。
しかし、その一方でどうしてここまでサーシャリア様が追いつめられているのか、私には一切分からなかった。
サーシャリア様は、間違いなくマルク様とリーリア様の来訪を喜んでいたことが、私を混乱させる。
明らかに、サーシャリア様はお二人を嫌っていない、だったら何故あんなにも傷ついていたのか。
知っている限りの、サーシャリア様の様子を私は思い返す。
けれど、その問い答えが見つかることはない。
欠片さえ、その原因が私には分からない。
そして、そんな状況で私が思いつけた対処法は一つだけだった。
「アルフォード様との思いが結ばれさえすれば……!」
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