妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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隠した本性 (マリア視点)

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「珍しく感情的だったな」

 呆然としていた私の意識を取り戻させたのは、マルク様の声だった。
 向き直ると、マルク様はアルフォード様が消えた方向を見つめていた。

「いつもは、もっと上手く隠し通すんだがな」

 そのマルク様の言葉を聞いて、少し悩んだ後私は口を開く。

「アルフォード様ってあんな表情もされるんですね」

「やっぱりああいうアルフォードをみたのは初めてか」

「はい。……私、もっと穏やかな方だと思っていました」

「穏やか、アルフォードが?」

 そう耐えきれないといった様子で口を開いたのは、今まで黙っていたソシリア様だった。
 おかしさが隠せないといった様子で、ソシリア様は続ける。

「アルフォードは表向きとは言え私たち中立派の代表よ。普段は抜けていることはあるけど、怒らすとなかなか手が着けられないわよ。悪すのは上手いけどね」

「同じく隠すのが上手い人間は語る、か」

 からかうような笑みを浮かべ、茶々を入れたマルク様をソシリア様は睨む。

「……何よ」

「いや、俺からすれば二人とも大概だと思ってな」

「あら、マリアに何か暴露して欲しいていいたいの? 貴女がマリアに告白したときとか、青春して学園から飛び出したときとか、ネタならいくらでもあるわよ」

「てめっ、止めろ! そう言うところが大概だって言ってんだよ!」

「私は聞いてみたいかも」

「リーリア!?」

 親しげに会話を続ける生徒メンバーの姿は、普通の人間のように見える。
 しかし、それを見ながらも私は思う。

 それでもやはりこの人達は偉業を成した人たちで……やはり私とは違う何かを持っているのだと。

「もういい、とりあえず時間がないんだろう? サーシャリアに挨拶してくるぞ」

 強引に話を終わら来たマルク様に、ソシリア様は呆れたように嘆息する。

「一言多いのよ。何もしなければ、私も余計なことなんてしないのに」

「……ちょっとした軽口で、とんでもないことを暴露しようとしているやつが何を。相変わらず怖い女だな、ソシリア」

「マルク? 何を暴露して欲しいの?」

「……悪かった」

 素直に謝罪したマルク様に嘆息した後、ソシリア様は告げる。

「それじゃ、私は準備してくるわ。またくるときまでに挨拶は終わらせておいてね」

「久々だから、私もう少し話したいんだけどな」

「ごめんなさいね、リーリア。後でまた時間は作るから。……もうほとんど、準備は終わっているから」

「……そうなの、分かったわ」

「ありがとね、リーリア」

「俺とリーリアで態度が違いすぎないか……?」

 ぶつぶつと文句をいうマルク様を無視し、ソシリア様は私の方へと向き直る。

「それじゃ、案内に関してはマリアにお願いするわね」

「わ、私ですか?」

「ええ、貴女が一番適任よ。サーシャリアも心を許しているし、マルクやリーリアとも面識があるし」

 そう言われて、私は確かにと納得する。
 辺境伯関係者である私が案内した方が、一番問題は起きないと。
 ……二人の仲が良好だと知りつつも、侍女が売り込みにくるほどに、辺境の名前は大きいのだ。

「分かりました。それでは私が」

「ありがとう。それじゃよろしくね」

 そう私に告げると、ソシリア様は足早に去っていく。
 それを見送った後、私はマルク様とリーリア様に向き直り一礼する。

「それでは、私が案内させていただきますね」

「ああ、頼む」

「お願いね、リーリア」

 そのお二人の返事を確認して、私はサーシャリア様の部屋の扉をノックした。
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