妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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常識な考え (マリア視点)

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「どういうことですか?」

 アルフォード様が外に出てきた瞬間、私は間髪入れずにそう口を開いた。
 部屋の中にサーシャリア様が居ることもあり、あまり大きな声ではない。
 だが、その言葉に込められた怒りが十分に理解できたのか、アルフォード様の額に汗が伝う。
 それでも、心外と言いたげな表情がアルフォード様の顔から消えることはなかった。

「……いや、どうもこうも昨日言っただろう? 意識してもらうために動くと」

「どうしてあれで、意識してもらうために動いていたなんて言えるんですか!?」

 そういいつつ、私の脳裏に蘇るのは、音楽を聴きながら書類を読んでいたサーシャリア様の姿。
 ……どう考えても、あれで恋愛アピールになっているようには、私には思えなかった。
 けれど私がどれだけ言おうが、アルフォード様の表情から困惑が消えることはなかった。

「いや、あれが適切な行動もないだろう?」

「……どういうことですか」

「どういうこともなにも、あれだけ音楽の腕と料理をアピールしたんだぞ。友人として傍に置いておくといいという、何よりのアピールになっているだろうが」

「……え?」

 ようやく私があることに気づいたのは、その瞬間だった。
 ……そう、私とアルフォード様の間に、何か致命的な食い違いがあることに。

「……アルフォード様は、サーシャリア様に意識して欲しいんですよね?」

「ん? ああ、当たり前だろう」

 私の言葉に頷き、、アルフォード様は続ける。

「だから、必死に頑張っているんだろうが。─サーシャリアにもっとかけがえのない友人として意識してもらうために」

「……え? 友人?」

「ああ。だから音楽や料理でアピールしているんだろう? 俺が友人だとこれだけメリットがあると」

 ……そういえば、実家に押し掛けてきた料理人とか、芸団の人たちも、こんな風に強引に押し売りしてきたなあ。
 一瞬、そんな風に思考が飛ぶ。

 しかし、何とか平静を持ち直した私は、震える声で尋ねる。

「……アルフォード様は、サーシャリア様に異性として意識して欲しいのではないのですか?」

 心底不思議そうな表情を浮かべ、アルフォード様は告げる。

「常識的に考えて、サーシャリアの調子がおかしいこんな時に、そんなアピールをする訳ないだろうが」

「はぁっ?」

 瞬間、私の苛立ちが限界を迎えた。


 ◇◇◇

 久々の更新でしたが、多くの感想ありがとうございます!本当に励みになります!
 そしてソシリアについては、もう少しお待ちください……。
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