妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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後悔と想像 (マリア視点)

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 ……しまった。

 必死にサーシャリア様の部屋を目指しながら、私の胸にあるのは後悔だった。
 思い出すのはすぐ前。
 サーシャリア様の朝食を取りに、厨房に向かった時、告げられた言葉。

 ──ああ、アルフォード様から、サーシャリア様の食事は任せろと言っていたぞ。

 それを思い出しながら、私は強く唇を噛み締める。
 今さらながら、自分の甘さに腹が立つ。
 そうだ、あの人はやる人だ。
 危機感を持って、もっと早く起きておくべきだったんだ。

 しかし、そう気づいた時には全てが遅かった。
 サーシャリア様の部屋に向かいながら、私は泣きそうになる。
 今頃、サーシャリア様は部屋でどんな状態だろうか。
 私のいない状態で、もしアルフォード様が襲いかかってでもしていたら……。

 その自身の想像に、私は自分の顔をさらに蒼白なものとする。
 本来ならば、私はそんなことを心配などしなかっただろう。
 それだけの自制心をアルフォード様が持っていることを私は知っている。

 ……けれど、アルフォード様が暴走している現在に限っては、私はそう信じきることができなかった。

 暴走したアルフォード様は、本当に何をするのかまるで想像できないのだから。
 それ故に、サーシャリア様の部屋に向かいながらも、私は生きた心地がしなかった。
 どうしようもない後悔と共に、私はサーシャリア様の部屋に向かう。

 ……そして、聞こえてきた音に、私は足を止めることになった。

「……どういうこと?」

 それを耳にしながら、私は思わずそう呟く。
 サーシャリア様の部屋から聞こえてきた音は、それほどに想像してないものだった。
 それに自分の耳を疑いながらも、私はゆっくりとサーシャリア様の扉を叩く。

「……入っていいわよ」

 すると、そのノックに答えて響いてきたのは、どこかゆったりとしたサーシャリア様の声だった。
 それに答えて、その部屋を開くと、そこに広がっていたのは想像もしない光景。

 ……管楽器を演奏するアルフォード様と、それを聴きながら書類を読むサーシャリア様の姿だった。

「は?」
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