妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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突然の訪問 

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 ……一体なにが起きているんだろうか。
 呆然とする意識の中、私は目の前にたつ人物を何度も確認する。

「いい朝だな、サーシャリア」

 ──執事服を身にまとった彼アルフォードを。

 現在の時刻は早朝。
 マリアさえ、まだ来ていない。
 そんな状況でこんな事態に陥った私は、呆然とベッドに座りながら、今までの経緯を思い出す。

 突然のアルフォードの訪問があったのは、先ほど。
 私が目覚めたその時だった。
 想像もしないことに驚きつつ、最低限の身だしなみを整えて扉を開けると……そこにはすでに執事服を身につけたアルフォードがたっていたのだ。

 駄目だ。思い返しても、なんでこういう状況になったのか、意味が分からない。
 とりあえず、一旦整理する時間が欲しい。
 そう考えた私は、困惑を笑顔に押し込めて口を開く。

「えっと、何のようか聞きたいのは山々何だけど、その前に何か食べてきていい?」

 もちろんそれは口実だ。
 お腹がすいていない訳ではないが、まだ朝食まで時間がある。
 ……とりあえず私は、頭を整理するために、一人になりたかったのだ。
 しかし、その私の思惑が上手く行くことはなかった。

「ああ、大丈夫。作ってきた」

「……え?」

 そういうと、アルフォードは一度扉の外に出て行く。
 次にアルフォードが姿を見せたとき、その手にはお盆がもたれていた。
 上にかぶされた覆いを取ると、そのしたからは美味しそうなクロワッサンが現れる。
 その香ばしいにおいをかぎながら、私は思い出す。

 ……そういえば、アルフォードはこういうのが得意なタイプだった、と。

 時々アルフォードはお菓子を作ってくれたりしていた。
 そんなアルフォードなら、こんなクロワッサンを作れても不思議じゃない。

「いや違う、そうじゃない」

 今考えるべきは、何故アルフォードがかなんな時間にやってきたかだ。
 と、私は一瞬飛びかけた思考を元に戻す。

 ……しかし、その思考に対し、身体は正直だった。

 ぐぅ、と空気を読まずになった音。
 静かな部屋では、やけにその音は大きく響いた。
 そしてその発生源が、自身の腹部だと認識した瞬間、私の顔に一瞬で熱が集まってくる。

「……っ!」

 一瞬、沈黙が部屋を支配する。
 しかし、その沈黙を取っ払うように、アルフォードが口を開いた。

「ああ、すまない。俺もまだ何も食ってないせいで、空腹だったんだ。少し多めに作ってきたから、ご相伴させてもらっていいか?」

 お盆の上に置かれたバターを持ち上げながら、そう問いかけてくるアルフォードに、私は頷く。

「……はい」

 とりあえず、話はお腹を満たしてからだ。
 羞恥に悶えながら、私はそう硬く決意した……。


 ◇◇◇


 ソシリアについて、紛らわしく書いてしまい申し訳ありません。
 近々、偽装婚約について時系列を書いたものを、更新させて頂きます。
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