妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

文字の大きさ
上 下
80 / 169

突然の訪問 

しおりを挟む
 ……一体なにが起きているんだろうか。
 呆然とする意識の中、私は目の前にたつ人物を何度も確認する。

「いい朝だな、サーシャリア」

 ──執事服を身にまとった彼アルフォードを。

 現在の時刻は早朝。
 マリアさえ、まだ来ていない。
 そんな状況でこんな事態に陥った私は、呆然とベッドに座りながら、今までの経緯を思い出す。

 突然のアルフォードの訪問があったのは、先ほど。
 私が目覚めたその時だった。
 想像もしないことに驚きつつ、最低限の身だしなみを整えて扉を開けると……そこにはすでに執事服を身につけたアルフォードがたっていたのだ。

 駄目だ。思い返しても、なんでこういう状況になったのか、意味が分からない。
 とりあえず、一旦整理する時間が欲しい。
 そう考えた私は、困惑を笑顔に押し込めて口を開く。

「えっと、何のようか聞きたいのは山々何だけど、その前に何か食べてきていい?」

 もちろんそれは口実だ。
 お腹がすいていない訳ではないが、まだ朝食まで時間がある。
 ……とりあえず私は、頭を整理するために、一人になりたかったのだ。
 しかし、その私の思惑が上手く行くことはなかった。

「ああ、大丈夫。作ってきた」

「……え?」

 そういうと、アルフォードは一度扉の外に出て行く。
 次にアルフォードが姿を見せたとき、その手にはお盆がもたれていた。
 上にかぶされた覆いを取ると、そのしたからは美味しそうなクロワッサンが現れる。
 その香ばしいにおいをかぎながら、私は思い出す。

 ……そういえば、アルフォードはこういうのが得意なタイプだった、と。

 時々アルフォードはお菓子を作ってくれたりしていた。
 そんなアルフォードなら、こんなクロワッサンを作れても不思議じゃない。

「いや違う、そうじゃない」

 今考えるべきは、何故アルフォードがかなんな時間にやってきたかだ。
 と、私は一瞬飛びかけた思考を元に戻す。

 ……しかし、その思考に対し、身体は正直だった。

 ぐぅ、と空気を読まずになった音。
 静かな部屋では、やけにその音は大きく響いた。
 そしてその発生源が、自身の腹部だと認識した瞬間、私の顔に一瞬で熱が集まってくる。

「……っ!」

 一瞬、沈黙が部屋を支配する。
 しかし、その沈黙を取っ払うように、アルフォードが口を開いた。

「ああ、すまない。俺もまだ何も食ってないせいで、空腹だったんだ。少し多めに作ってきたから、ご相伴させてもらっていいか?」

 お盆の上に置かれたバターを持ち上げながら、そう問いかけてくるアルフォードに、私は頷く。

「……はい」

 とりあえず、話はお腹を満たしてからだ。
 羞恥に悶えながら、私はそう硬く決意した……。


 ◇◇◇


 ソシリアについて、紛らわしく書いてしまい申し訳ありません。
 近々、偽装婚約について時系列を書いたものを、更新させて頂きます。
しおりを挟む
感想 333

あなたにおすすめの小説

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。

木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。 「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」 シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。 妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。 でも、それなら側妃でいいのではありませんか? どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...