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真夜中の守護者 (ソシリア視点)
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更新遅れてしまい申し訳ありません!
◇◇◇
マリアと居た部屋を後にした私は、王宮でも滅多に人の通らない場所に合る部屋へと向かっていた。
夜であることもあり、薄暗い廊下は非常に不穏だ。
いつもならば、こんな場所を歩いていると、私は多少の不安を覚える。
しかし、今の私の足取りは軽やかだった。
なぜなら、私は知っているのだ。
──今は、彼がそばにいると。
待ち合わせの部屋にたどり着いた私は、迷わずにその部屋を開け放つ。
その瞬間、真っ暗で無人の部屋が露わになり……背後から声が響いたのはその瞬間だった。
「おや、これはこれは第三王子の婚約者、ソシリア様ではありませんか」
声に反応して後ろを向くと、そこにいたのは薄ら笑いを顔に浮かべた一人の青年だった。
その青年は、ゆっくりと私に近づいてくる。
「誰もつけず、こんな場所に来るとは不用心なことですね。知らないのですか? お父上を無視して動く貴方は、多くの人間に反感を買われているのですよ」
皮肉げな微笑を浮かべ、煽るような言葉を投げかけてくる青年。
その身体は、一見細く見えつつも、鍛えられていることが分かる。
歴戦の戦死であれば、彼がただ者でないことも、その足取りから悟れたかも知れない。
明らかに戦い慣れした男と、暗い廊下で二人きり。
それは、私のみに危機が襲いかかっているようにも見える光景だった。
実際、この青年に襲いかかられれば、私には抵抗することもできない。
それを理解しながら、私の顔に不安も緊張も存在しなかった。
そして私は叫ばず、代わりに一言青年に告げた。
「セイン、私の騎士に戻りなさい」
彼と決めた合い言葉を。
セインの纏う雰囲気が変化したのは、その瞬間だった。
薄ら笑いを浮かべていた表情は不機嫌そうな者に変わり、ぶつぶつと文句を言い始める。
「くそ。相も変わらず、突然合図を起こしやがって。せめて夜は誰かつけてこい、と何度言えば」
「あら? 貴方が居るから一人じゃないわよ」
「だから、もし俺が気づかなかったらだな……」
不機嫌そうなセインの目を見返し、私は笑ってみせる。
「セインなら見逃さないでしょう。──好きな人からの挨拶は」
「……っ!」
そういうと、セインは押し黙る。
普段は皮肉げで、口が減らないのに、こういう責め方をするとセインは弱い。
それが可愛く思えて、私は小さく笑う。
そう、この彼こそが生徒会メンバーの一人。
近衛かつ、影とであり──私の恋人である、セイン・クリスフォルテだった。
◇◇◇
マリアと居た部屋を後にした私は、王宮でも滅多に人の通らない場所に合る部屋へと向かっていた。
夜であることもあり、薄暗い廊下は非常に不穏だ。
いつもならば、こんな場所を歩いていると、私は多少の不安を覚える。
しかし、今の私の足取りは軽やかだった。
なぜなら、私は知っているのだ。
──今は、彼がそばにいると。
待ち合わせの部屋にたどり着いた私は、迷わずにその部屋を開け放つ。
その瞬間、真っ暗で無人の部屋が露わになり……背後から声が響いたのはその瞬間だった。
「おや、これはこれは第三王子の婚約者、ソシリア様ではありませんか」
声に反応して後ろを向くと、そこにいたのは薄ら笑いを顔に浮かべた一人の青年だった。
その青年は、ゆっくりと私に近づいてくる。
「誰もつけず、こんな場所に来るとは不用心なことですね。知らないのですか? お父上を無視して動く貴方は、多くの人間に反感を買われているのですよ」
皮肉げな微笑を浮かべ、煽るような言葉を投げかけてくる青年。
その身体は、一見細く見えつつも、鍛えられていることが分かる。
歴戦の戦死であれば、彼がただ者でないことも、その足取りから悟れたかも知れない。
明らかに戦い慣れした男と、暗い廊下で二人きり。
それは、私のみに危機が襲いかかっているようにも見える光景だった。
実際、この青年に襲いかかられれば、私には抵抗することもできない。
それを理解しながら、私の顔に不安も緊張も存在しなかった。
そして私は叫ばず、代わりに一言青年に告げた。
「セイン、私の騎士に戻りなさい」
彼と決めた合い言葉を。
セインの纏う雰囲気が変化したのは、その瞬間だった。
薄ら笑いを浮かべていた表情は不機嫌そうな者に変わり、ぶつぶつと文句を言い始める。
「くそ。相も変わらず、突然合図を起こしやがって。せめて夜は誰かつけてこい、と何度言えば」
「あら? 貴方が居るから一人じゃないわよ」
「だから、もし俺が気づかなかったらだな……」
不機嫌そうなセインの目を見返し、私は笑ってみせる。
「セインなら見逃さないでしょう。──好きな人からの挨拶は」
「……っ!」
そういうと、セインは押し黙る。
普段は皮肉げで、口が減らないのに、こういう責め方をするとセインは弱い。
それが可愛く思えて、私は小さく笑う。
そう、この彼こそが生徒会メンバーの一人。
近衛かつ、影とであり──私の恋人である、セイン・クリスフォルテだった。
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