妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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一番強い人 (ソシリア視点)

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「ど、どうしましょうソシリア様! このままじゃサーシャリア様が!」

 半泣きのマリアが私にすがりついてきたのは、アルフォードが去った直後だった。
 そんな彼女を抱きしめながら、私は呆然と呟く。

「……本当にどうすれば」

 アルフォードが手紙の件で心に傷を負っていることを私は知っていた。
 けれど、ここまで重傷だとは思っても居なかった。

 そうまさか、サーシャリアが自分のことをいっさい意識していないと思いこむなんて。
 呆然と佇みながら、私は思う。
 ……一体度の口で、サーシャリアを鈍感と言っているのかと。

 実のところ、サーシャリア本人が隠し通している気になってるだけで、アルフォード除いた生徒会メンバーは、その気持ちを知っていた。

 呆然としている私に、マリアが泣きながら訴えてくる。

「今以上アルフォード様がアピールを激しく知ったら、見るからにうぶなサーシャリア様の心臓が持つとは思えません……!」

「分かっているわ……。サーシャリアの心臓が、このままだと危ないことは……。でも、ここまで暴走したアルフォードをどうやって止めたら……」

 そう呟いた私の言葉に、マリアは無言で滝のような涙を流す。
 罪悪感でどうにかなってしまいそうなのだと私は察するが、なにも言うことができなかった。
 ああ見えて、決してアルフォードのスペックは低くない。

 ……そんなアルフォードが暴走を始めた今、決定的な対策など存在しなかった。

 手紙の件を知るからこそ、今回の暴走が容易く収まらないだろうことは、容易に想像できた。
 しかし、サーシャリアが危機的状況な今、できないではすまない。
 だとしたら、残された手段は一つだけだった。

「……マリア、全力をかけてサーシャリアを守るわよ」

「私だけで、あの人を止められるでしょうか?」

「大丈夫、普段は私が見張っているわ。ただ、私が居ないときだけは、サーシャリアを守って欲しいの」

「……っ! 分かりました!」

 決意を顔にみなぎらせたマリアを見て、私は頷く。
 とりあえずこれで、アルフォートが一方的にサーシャリアに迫る事態は避けることができるだろう。
 そう判断し、私は次の手を打つことを決める。

「それじゃ、もう一人に私は頼み込んでくるわ」

「……もう一人、ですか?」

 怪訝そうに首をひねるマリアに、私は満面の笑みを浮かべる。
 そして、まるで自慢するように告げた。

「ええ。──私の知っている限り、一番強い人にね」
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