74 / 169
暴走開始 (アルフォード視点)
しおりを挟む
更新予定が一日ずれていました……。すいません……。
◇◇◇
二人の態度の変わりように、内心俺は衝撃を受ける。
……そんなに、俺の表情は情けないことになっていたかと。
恐る恐る、といった様子でマリアが俺に告げる。
「そ、その、おつらいことを聞いてしまって……」
その表情は蒼白で、先ほどまでの激怒していた様子はいっさい見受けられなかった。
「まさか、そんな正常に物事が読みとれないほどに……」
一方のソシリアも、滅多に見ないくらい呆然としていて、逆に俺は怖くなる。
それだけ態度が急変するくらい、俺は酷かったのだろうか?
そう思いつつも、俺は何とか笑顔を浮かべて告げる。
「そう気にしなくて大丈夫だ。今はもう、そこまで気にはしていないからな」
実際のところそれが俺の今の気持ちだった。
もちろん、胸の傷が癒えたわけではない。
ただ、そんなことを気にしている状況でないのは、俺も理解していた。
──そんなことに落ち込む暇があるなら、サーシャアリアに意識してもらえるよう動いた方が、何倍も有益だと。
なぜなら、今はもう以前と違って、そばにサーシャリアがいるのだから。
それも、婚約がなくなった状態で。
だとしたら、俺がやるべきことは決まっている。
「何とかして、サーシャリアに意識してもらえるまで、押し続ける」
「あっ……」
誰かが、何か最悪の事態を悟ったような声を上げたが、俺の耳には入らない。
今までにないくらいのすがすがしい表情で、俺は続ける。
「悪いがソシリア、今日だけ俺外していいか? 少し、サーシャリアへのアピールを考えたい」
「え、ええ?」
ソシリアはどこか困惑したようにも聞こえる声を上げる。
しかし、すぐにそれを肯定の言葉だと判断した俺は、すぐに動き出す。
「助かる。やはり、今以上に押さないと。相手は鈍感なサーシャリアだからな」
……しかし、やる気にあふれる俺は気づかない。
俺のやる気に比例して、ソシリアとマリアの顔から血の気が引いていることを。
「申し訳ありません、サーシャリア様。私はなんという……」
俺が部屋から出る直前、どこか懺悔にも聞こえる声が聞こえた気がする。
しかし、すでに意識がサーシャリアへと向いた俺の耳に、その言葉が入ることはなかった。
「よし、とりあえず一日サーシャリアの世話ができるように、仕事を片付けよう」
……俺が去った部屋に残されたのは、最悪の予感に震えるソシリアとマリアだった。
◇◇◇
二人の態度の変わりように、内心俺は衝撃を受ける。
……そんなに、俺の表情は情けないことになっていたかと。
恐る恐る、といった様子でマリアが俺に告げる。
「そ、その、おつらいことを聞いてしまって……」
その表情は蒼白で、先ほどまでの激怒していた様子はいっさい見受けられなかった。
「まさか、そんな正常に物事が読みとれないほどに……」
一方のソシリアも、滅多に見ないくらい呆然としていて、逆に俺は怖くなる。
それだけ態度が急変するくらい、俺は酷かったのだろうか?
そう思いつつも、俺は何とか笑顔を浮かべて告げる。
「そう気にしなくて大丈夫だ。今はもう、そこまで気にはしていないからな」
実際のところそれが俺の今の気持ちだった。
もちろん、胸の傷が癒えたわけではない。
ただ、そんなことを気にしている状況でないのは、俺も理解していた。
──そんなことに落ち込む暇があるなら、サーシャアリアに意識してもらえるよう動いた方が、何倍も有益だと。
なぜなら、今はもう以前と違って、そばにサーシャリアがいるのだから。
それも、婚約がなくなった状態で。
だとしたら、俺がやるべきことは決まっている。
「何とかして、サーシャリアに意識してもらえるまで、押し続ける」
「あっ……」
誰かが、何か最悪の事態を悟ったような声を上げたが、俺の耳には入らない。
今までにないくらいのすがすがしい表情で、俺は続ける。
「悪いがソシリア、今日だけ俺外していいか? 少し、サーシャリアへのアピールを考えたい」
「え、ええ?」
ソシリアはどこか困惑したようにも聞こえる声を上げる。
しかし、すぐにそれを肯定の言葉だと判断した俺は、すぐに動き出す。
「助かる。やはり、今以上に押さないと。相手は鈍感なサーシャリアだからな」
……しかし、やる気にあふれる俺は気づかない。
俺のやる気に比例して、ソシリアとマリアの顔から血の気が引いていることを。
「申し訳ありません、サーシャリア様。私はなんという……」
俺が部屋から出る直前、どこか懺悔にも聞こえる声が聞こえた気がする。
しかし、すでに意識がサーシャリアへと向いた俺の耳に、その言葉が入ることはなかった。
「よし、とりあえず一日サーシャリアの世話ができるように、仕事を片付けよう」
……俺が去った部屋に残されたのは、最悪の予感に震えるソシリアとマリアだった。
0
お気に入りに追加
7,690
あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

【完結】わたしの欲しい言葉
彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。
双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。
はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。
わたしは・・・。
数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。
*ドロッとしています。
念のためティッシュをご用意ください。

妹の嘘の病により、私の人生は大きく狂わされましたが…漸く、幸せを掴む事が出来ました
coco
恋愛
病弱な妹の願いを叶える為、私の婚約者は私に別れを告げた。
そして彼は、妹の傍に寄り添う事にしたが…?

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。

お妃様に魔力を奪われ城から追い出された魔法使いですが…愚か者達と縁が切れて幸せです。
coco
恋愛
妃に逆恨みされ、魔力を奪われ城から追い出された魔法使いの私。
でも…それによって愚か者達と縁が切れ、私は清々してます─!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる