妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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無視された手紙 (アルフォード視点)

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「えっと、その、アルフォード?」

 ……今の俺の表情がよほど情けなかったのか、そうソシリアが声をかけてくる。
 それに大丈夫だと手で示すが……その俺の内心はぼろぼろだった。

 今でも、少し意識するだけであのときの絶望を思い出すことができる。
 ソシリアに説得されて、ようやく書いた手紙。
 わざわざ持って行き、伯爵家の侍女に渡した俺は、緊張と期待のあまり、その日は眠れなかった。
 いつ、返信が来るのか、それから数日は常にそわそわしていた気がする。

 ……しかし、それから手紙が帰ってくることはなかった。

 サーシャリアに手紙を返すつもりなどない、そのことに俺が気づいたのは数ヶ月後のことだった。
 そして、俺はようやく理解した。
 これこそが、サーシャリアの返答。

 ──婚約を見なかったことにしたい、そう言うことなのだと。

 そのことに気づいてから、俺は人が変わったように無気力に過ごすことになった。
 ソシリアからは、一度本人に確かめて来なさい。
 そう言われたが、俺は首を振って拒否し、ソシリアにも余計なことを言わないで欲しいと頼み込んだ。

 ……これ以上醜くあらがって、さらにソシリアに嫌われることだけはなんとしても避けたかったから。

 その時のことを思いだし、俺は苦笑する。
 それは、未だ忘れられない苦さを含んだ笑み。

 あのときは、こんな断られかたをされるとは思わず、呆然と佇むことしかできなかった。
 次の絶望が待っていることなんて、知りもせずに。

 ……そう、サーシャリアの婚約という。

 それらの経験は全て後悔の連続だ。
 手紙ではなく、本人に告白していれば。
 ソシリアの言うとおりにサーシャリアのところに行っていれば。

 しかし、そんな経験のお陰で分かることもあった。

「これだけは言える。サーシャリアは間違いなく、俺を意識もしていないってことはな」

 辛く苦しい状況ではあったが、あの経験は俺の中からうぬぼれを消え去った。
 俺は絶対に、もう生半可な期待に目を眩ませることはない。
 そこで、俺は笑いながら告げる。

「というか、そもそもあの鈍感なサーシャリアじゃ、まだ俺がアピールしていることにも気づいてないんじゃないか」

 そう言って俺は二人に笑いかけ。

「……え?」

 ……なぜか蒼白な顔をした二人に、言葉を失うことになった。
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