妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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彼への未練

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 アルフォードの姿を目にした瞬間、私は思わず固まってしまう。
 しかし、一方のマリアはあくどい笑みを浮かべて告げた。

「いえいえ、そんな。むしろ、サーシャリア様はお喜びですよ」

 ……なんで勝手にそんなことを、そう叫びたくなる。

「では、お邪魔にならないように、私はすぐに去りますね」

 しかし、私が叫ぶ前にそそくさと、マリアは部屋から出ていってしまった。
 喉元まで、何を言っているの、という怒声が込み上げてくる。

 ……だが、そんな怒声をアルフォードの前であげられるはずもなく、私はぐっと唇を噛み締める。
 そんな私を見て、アルフォードは申し訳なさそうな表情を浮かべる。

「……すまない。悪いタイミングで来てしまったな」

「いいえ、そんなことはないわ」

 私はそう告げるアルフォードに、慌ててそう告げた。

「何時もこうして来てくれて、ありがたいくらいだしね」

 そう、実際に嬉しくない訳じゃないのだ。
 ……気持ちを顕にする訳には行かない、生殺しが辛すぎるだけで。
 複雑な内心を隠しながら、私は告げる。

「ほら、私も暇だしね。でも、毎日来てくれなくていいのよ。ほら、アルフォードも仕事が忙しいでしょうし」

 そう、実の所アルフォードが私の部屋にやってくるのはこれが初めてではなかった。
 それどころか、ほとんど毎日アルフォードは私のところにやってきてくれていた。

 だけど、できれば私は毎日やってくるのは、勘弁して欲しかった。

「……いや、気にしないでくれ。これは詫びなのだからな。むしろ、これくらいしか時間を取れなくてすまない」

「いいえ、言ったでしょ? 来てくれるだけで、ありがたいって」

 申し訳なさそうなアルフォードに、そう告げながら、私は曖昧に笑う。

 ……こうして来てくれることに、勘違いしてしまいそうな自分に気づいて。

 アルフォードは優しい人だ。
 困っている人がいれば、見捨てることができない程に。
 そもそも、辺境貿易だって考案したのはアルフォードだ。
 その理由も、マルク達を助けるためだけに、だ。

 ……だから、こうして私の元にやってきてくれているのも、情だと私は分かっている。

 アルフォードは、本当に真面目に私に責任を感じてくれているだけなのだ。
 なのに、未練がましく彼を慕う自分がいることに、私は気づいていた……。
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