60 / 169
辺境貿易は (アメリア視点)
しおりを挟む
「……っ! そんな!」
思わず声を上げた私を、マールスはせせら笑う。
「当たり前でしょ? サーシャリア姉様の失
踪を明かした上、あんなに有能なカイン様をはめたんだから。伯爵家にもう未来なんてないよ」
その言葉に、私は唇をかみしめる。
私は反対した、本当ならそう言いたかった。
けれど、そんなことを言っても自己満足にしかならないことを私は理解していた。
……なぜなら、もうカイン様は廃嫡されて、侯爵家から追われる身となっているのだから。
「それに、辺境貿易に関してもいつまで持つの? 次回の貿易は三ヶ月後。そろそろ準備に入らないと間に合わないけど、無理だよね?」
「……だから、それをあんたに」
「嫌だよ。今の伯爵家を継ぐ価値を感じないし。それなら、潔くつぶれてもらった方が、僕も動きやすい。最悪、今話題の第三王子の元に駆け込むさ」
……マールスは本気で伯爵家から去ろうとしている。
それを理解して、私は唇をかみしめる。
一体どうすれば引き留められる、そう考えて私は咄嗟に、隠れて聞いた侯爵家の使者の言葉を使った。
「……第三王子は、伯爵家の手先の無能よ」
「はは、いいじゃないか。そちらの方が騙しやすい」
そう言ったマールスは口元を歪める。
「それに、辺境泊の下につけるなら願ったり叶ったりじゃないか。今や、辺境拍は侯爵家より強いよ。お父様は侯爵家の力があればごり押せると考えているらしいけど、馬鹿だねえ」
そう言って笑うマールスに、私は咄嗟に叫ぶ。
「……それは侮辱よ! お父様に言いつけられるわ! それが嫌なら……」
「いいよ、どうぞお好きに」
「……っ!」
そう言うと、マールスは笑いながら去っていく。
その背中に、私は叫ぶ。
「本当に私は言いつけるわよ!」
その言葉が聞こえていないわけがないのに、マールスが振り返ることはなかった。
そのまま、廊下へと歩き去ってしまう。
……そして、その背中にもう私は何もいうことができなかった。
マールスが去ってから、私は唇をかみしめて、呆然と呟く。
「……どうして、こうなったのよ!」
思わず声を上げた私を、マールスはせせら笑う。
「当たり前でしょ? サーシャリア姉様の失
踪を明かした上、あんなに有能なカイン様をはめたんだから。伯爵家にもう未来なんてないよ」
その言葉に、私は唇をかみしめる。
私は反対した、本当ならそう言いたかった。
けれど、そんなことを言っても自己満足にしかならないことを私は理解していた。
……なぜなら、もうカイン様は廃嫡されて、侯爵家から追われる身となっているのだから。
「それに、辺境貿易に関してもいつまで持つの? 次回の貿易は三ヶ月後。そろそろ準備に入らないと間に合わないけど、無理だよね?」
「……だから、それをあんたに」
「嫌だよ。今の伯爵家を継ぐ価値を感じないし。それなら、潔くつぶれてもらった方が、僕も動きやすい。最悪、今話題の第三王子の元に駆け込むさ」
……マールスは本気で伯爵家から去ろうとしている。
それを理解して、私は唇をかみしめる。
一体どうすれば引き留められる、そう考えて私は咄嗟に、隠れて聞いた侯爵家の使者の言葉を使った。
「……第三王子は、伯爵家の手先の無能よ」
「はは、いいじゃないか。そちらの方が騙しやすい」
そう言ったマールスは口元を歪める。
「それに、辺境泊の下につけるなら願ったり叶ったりじゃないか。今や、辺境拍は侯爵家より強いよ。お父様は侯爵家の力があればごり押せると考えているらしいけど、馬鹿だねえ」
そう言って笑うマールスに、私は咄嗟に叫ぶ。
「……それは侮辱よ! お父様に言いつけられるわ! それが嫌なら……」
「いいよ、どうぞお好きに」
「……っ!」
そう言うと、マールスは笑いながら去っていく。
その背中に、私は叫ぶ。
「本当に私は言いつけるわよ!」
その言葉が聞こえていないわけがないのに、マールスが振り返ることはなかった。
そのまま、廊下へと歩き去ってしまう。
……そして、その背中にもう私は何もいうことができなかった。
マールスが去ってから、私は唇をかみしめて、呆然と呟く。
「……どうして、こうなったのよ!」
0
お気に入りに追加
7,690
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています
高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。
そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。
最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。
何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。
優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

妹の嘘の病により、私の人生は大きく狂わされましたが…漸く、幸せを掴む事が出来ました
coco
恋愛
病弱な妹の願いを叶える為、私の婚約者は私に別れを告げた。
そして彼は、妹の傍に寄り添う事にしたが…?

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。

お前のせいで不幸になったと姉が乗り込んできました、ご自分から彼を奪っておいて何なの?
coco
恋愛
お前のせいで不幸になった、責任取りなさいと、姉が押しかけてきました。
ご自分から彼を奪っておいて、一体何なの─?

お妃様に魔力を奪われ城から追い出された魔法使いですが…愚か者達と縁が切れて幸せです。
coco
恋愛
妃に逆恨みされ、魔力を奪われ城から追い出された魔法使いの私。
でも…それによって愚か者達と縁が切れ、私は清々してます─!

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる