妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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辺境貿易は (アメリア視点)

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「……っ! そんな!」

 思わず声を上げた私を、マールスはせせら笑う。

「当たり前でしょ? サーシャリア姉様の失
踪を明かした上、あんなに有能なカイン様をはめたんだから。伯爵家にもう未来なんてないよ」

 その言葉に、私は唇をかみしめる。
 私は反対した、本当ならそう言いたかった。
 けれど、そんなことを言っても自己満足にしかならないことを私は理解していた。

 ……なぜなら、もうカイン様は廃嫡されて、侯爵家から追われる身となっているのだから。

「それに、辺境貿易に関してもいつまで持つの? 次回の貿易は三ヶ月後。そろそろ準備に入らないと間に合わないけど、無理だよね?」

「……だから、それをあんたに」

「嫌だよ。今の伯爵家を継ぐ価値を感じないし。それなら、潔くつぶれてもらった方が、僕も動きやすい。最悪、今話題の第三王子の元に駆け込むさ」

 ……マールスは本気で伯爵家から去ろうとしている。
 それを理解して、私は唇をかみしめる。
 一体どうすれば引き留められる、そう考えて私は咄嗟に、隠れて聞いた侯爵家の使者の言葉を使った。

「……第三王子は、伯爵家の手先の無能よ」

「はは、いいじゃないか。そちらの方が騙しやすい」

 そう言ったマールスは口元を歪める。

「それに、辺境泊の下につけるなら願ったり叶ったりじゃないか。今や、辺境拍は侯爵家より強いよ。お父様は侯爵家の力があればごり押せると考えているらしいけど、馬鹿だねえ」

 そう言って笑うマールスに、私は咄嗟に叫ぶ。

「……それは侮辱よ! お父様に言いつけられるわ! それが嫌なら……」

「いいよ、どうぞお好きに」

「……っ!」

 そう言うと、マールスは笑いながら去っていく。
 その背中に、私は叫ぶ。

「本当に私は言いつけるわよ!」

 その言葉が聞こえていないわけがないのに、マールスが振り返ることはなかった。
 そのまま、廊下へと歩き去ってしまう。

 ……そして、その背中にもう私は何もいうことができなかった。

 マールスが去ってから、私は唇をかみしめて、呆然と呟く。

「……どうして、こうなったのよ!」
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